クサアジサイ Cardiandra alternifolia  Siebold et Zucc.
  山地・林床・岩上の植物 ユキノシタ科 クサアジサイ属
Fig.1 (兵庫県養父市・渓谷の岩上 2015.8/2)

Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/14)

やや湿った林床や岩上に生育する多年草。
地下茎は木質で、毎年1年生の地上茎を数個だす。
地上茎は直立し、ふつう分枝せず、高さ20〜80cmになり、全体に白色の粗い毛を散生する。
葉はふつう互生し、有柄、草質で、披針形または楕円形、まれに卵形で、長さ10〜20cm、幅3〜6cmになる。
葉先はやや尾状の鋭尖頭、基部は鋭尖形で葉柄に続く。鋸歯は鋭形で、先端は多少点状となる。
茎の下部には5〜7個の鱗片状に退化した葉がある。
花序は頂生し、白色または淡紅色の花を多数つける。花軸には白色の粗い毛を生じる。
苞は狭楕円形〜狭披針形、長さ2cm以下で、果期まで残る。中性花は少数、3個の卵形で長さ7〜18mmの花弁状の萼片からなる。
両性花の小花柄は無毛または白色の毛を散生し、長さ3〜6mm。両性花は径6〜7mm。萼筒は長さ1.5〜2mm、外側に粗い毛を散生する。
萼裂片は広卵形または3角状卵形で、長さ0.5〜0.6mm、先端は円形で、花期には平開する。
花弁は倒卵形または広倒卵形、円頭で、長さ2.5〜3mm、開花時には平開する。
雄蕊は約20個、長さ2〜3mm、裂開直前の葯は黄色。子房は花柱をのぞき、ほとんど萼筒に合着する。
花柱は花期に直立し、長さ0.5〜0.8mm、果期には外曲し、長さ1〜1.5mm。
刮ハは長さ3〜4mm。種子は楕円状で長さ0.6〜1mm。
近縁種 : オオクサアジサイ、アマミクサアジサイ、 ギンバイソウ

■分布:本州(東北南部)、四国、九州
■生育環境:やや湿った林床や岩上など。
■花期:7〜10月

Fig.3 地上茎。(兵庫県香美町・渓流畔 2015.7/19)
  地上茎は直立し、ふつう分枝せず、葉のつく場所で多少屈曲し、全体に白色の粗い毛を散生する。

Fig.4 葉。(神戸市・渓谷の岩上 2014.10/19)
  葉はふつう互生し、有柄、草質で、披針形または楕円形、まれに卵形で、長さ10〜20cm、幅3〜6cmになる。
  葉先はやや尾状の鋭尖頭、基部は鋭尖形で葉柄に続く。鋸歯は鋭形で、先端は多少点状となる。

Fig.5 花序は頂生し、白色または淡紅色の花を多数つける。(神戸市・社寺の石垣 2011.8/13)

Fig.6 白い花を持った集団。(兵庫県香美町・渓流畔 2015.7/19)
  開花初期には白色でも、開花が進むと淡紅色となるものが多い。
  開花前のツボミは下を向いており、開花直前に小花柄が直立する。

Fig.7 花序の拡大。(兵庫県養父市・渓谷の岩上 2015.8/2)
  花軸には白色の粗い毛を生じる。苞は狭楕円形〜狭披針形、長さ2cm以下で、果期まで残る。
  中性花は少数、3個の卵形で長さ7〜18mmの花弁状の萼片からなる。両性花の小花柄は無毛または白色の毛を散生し、長さ3〜6mm。
  萼筒は長さ1.5〜2mm、外側に粗い毛を散生する。萼裂片は広卵形または3角状卵形で、先端は円形、花期には平開する。

Fig.8 両性花。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/22)
  両性花は径6〜7mm。花弁は倒卵形または広倒卵形、円頭で、長さ2.5〜3mm、開花時には平開する。
  雄蕊は約20個、長さ2〜3mm。花柱は花期に直立し、長さ0.5〜0.8mm。

Fig.9 訪花したヨツスジハナカミキリ。(兵庫県香美町・渓流畔 2015.7/19)
  ヨツスジハナカミキリは最もふつうに見られるハナカミキリで、多くの花の受粉者となっている。

Fig.10 秋の開花。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/22)
  花は7月から長期にわたって開花し、秋には夏に開花した両性花が果実形成期となり、かなりふくらむ。

Fig.11 果実形成期。(神戸市・渓流畔の岩上 2014.10/16)
  両性花の結実が進んでも、中性花は落ちずに残る。花柱は果期には外曲し、長さ1〜1.5mm。

Fig.12 結実期。(神戸市・渓流畔 2015.10/27)
  高所に生育するものは10月下旬に結実し、刮ハは上部から3裂する。

Fig.13 刮ハ。(神戸市・渓流畔 2015.10/27)
 刮ハは長さ3〜4mm。萼筒と萼裂片、花柱は宿存する。

Fig.14 種子。(神戸市・渓流畔 2015.10/27)
 種子は楕円状で長さ0.6〜1mm、褐色、下端には不定形の翼がある。

Fig.15 種子の拡大。(神戸市・渓流畔 2015.10/27)
 種子の表面には微細な格子模様と、縦の隆条が見られる。翼部は隆条が網目状となっている。

生育環境と生態
Fig.16 渓谷の岩場に生育するクサアジサイ。(神戸市・渓谷の岩場 2014.10/19)
開けた渓谷は土石流の押し出しで荒れに荒れているが、岩場に生育しているクサアジサイは難を逃れていた。
岩場は乾いた箇所も、湧水に濡れて湿っている場所もあるが、多湿の場所ではイワタバコによってほぼ占められている。
クサアジサイが生育するあたりではヒメワラビ、イノモトソウ、ヒカゲスゲ、ナキリスゲ、ノガリヤス、ノギラン、キヨスミギボウシ、
コアカソ、イブキシモツケ、ヤマルリソウ、ヤクシソウ、アキノキリンソウ、ヨメナなどが生育している。

Fig.17 スギ植林地の林床に生育するクサアジサイ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/22)
谷筋から境界山麓に小規模に広がった扇状地上の植林地に、多数の個体が生育している。
沢は伏流しているが、小規模扇状地であるため地下水位はあまり高くなく、シカ除けの柵に囲まれて多様な植生が見られる。
同所的にチャノキ低木、フジ低木、ミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、チヂミザサ、ササクサ、ヌカボシソウ、ウバユリ、ヤマジノホトトギス、
ムロウテンナンショウ、コアカソ、カテンソウ、サンショウソウ、ヤマミズ、ムカゴイラクサ、ミズヒキ、ナガバノヤノネグサ、セリバオウレン、ヤマネコノメソウ、
チャルメルソウ、ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、ミヤマハコベ、イヌショウマ、ミヤマキケマン、タケニグサ、ミヤマカタバミ、マツカゼソウ、ヤマアイ、
ドクダミ、ヤブニンジン、ミヤマチドメ、ツリフネソウ、ミヤマフユイチゴ、クサイチゴ、サワオトギリ、イノコヅチ、ヤマルリソウ、ツルカノコソウ、
ミヤマタゴボウ、ハダカホオズキ、ヤマホロシ、ヘクソカズラ、ナガバハエドクソウ、ヤマトウバナ、オカタツナミソウ、ツルニガクサ、アキチョウジ、
ムラサキニガナ、シュウブンソウ、キッコウハグマ、ベニシダ、トウゴクシダ、ジュウモンジシダ、アイノコクマワラビ、オニヒカゲワラビ、ミゾシダ、
ヤマイヌワラビ、タニイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビなどが生育している。


最終更新日:3rd.Jul.2016

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