ナンゴクナライシダ Arachniodes miqueliana (Maxim.) Ohwi
  山地・林床・林縁のシダ オシダ科 ナライシダ属
Fig.1 (兵庫県朝来市・林床 2011.6/19)

Fig.2 (神戸市・林床 2011.7/11)

低山〜山地の湿った林床や林縁に生育する常緑性シダ。
根茎は長く横走し、まばらに葉を生じる。
葉柄は赤褐色を帯びることが多く、鱗片は褐色〜淡褐色でややまばらにつく。
葉身は3角状または5角状広卵形、3〜4回羽状複葉、葉質は薄い草質で柔らかく、葉面には毛が生える。
羽片は披針形〜広披針形、鋭尖頭、羽軸の溝は中軸の溝に流れ込まない。
小羽片は内側が先につき、小羽軸の表面の溝には毛が密生する。
裂片の幅はホソバナライシダより幅広く、楕円形、鈍頭。
胞子嚢群は裂片の切れ込み近くの脈上につき、苞膜は腎円形で、ふつう全縁で、径1〜1.5mm。染色体数n=82の4倍体。

ホソバナライシダA. borealis)は裂片の幅が狭く、小羽軸上に毛はほとんどなく、葉柄には鱗片が多くつき、苞膜は径1mm以下。
ヒロハナライシダA. quadripinnata subsp. fimbriata)は稀で、苞膜に縁毛が生え、葉裏の鱗片は袋状とならない。
ナンゴクナライシダを片親とする雑種に以下のものがある。
タカヤマナライシダA. × takayamensis)はホソバナライシダとの雑種。両種の中間的な形質が見られる。
イケミネナライシダA. × ikeminensis)はヒロハナライシダとの雑種。
近縁種 : ホソバナライシダ、 ヒロハナライシダ

■分布:本州(岩手県、秋田県以南)、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:低山〜山地の湿った林床や林縁など。

Fig.3 地上部標本。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  葉身は3角状または5角状広卵形、3〜4回羽状複葉、葉質は薄い草質で柔らかい。

Fig.4 葉柄基部。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  葉柄は赤褐色を帯びることが多く、鱗片は褐色〜淡褐色でややまばらにつく。

Fig.5 中軸。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  中軸につく鱗片はごくまばらである。

Fig.6 最下羽片。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  最下羽片の基部外側の小羽片は、他のものに比べて大きい。
  小羽片は内側のものが先につく。

Fig.7 小羽片と羽軸。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  羽軸や小羽軸の表面の溝には毛が密生する。

Fig.8 羽軸や小羽軸に密生する毛。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)

Fig.9 小羽片の裏面。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  裏面にはほとんど毛がなく、脈上にわずかに短毛が見られた。
  胞子嚢群(ソーラス)は裂片の切れ込み近くの脈上につく。

Fig.10 胞子嚢群。(兵庫県丹波市・林床 2011.2/8)
  苞膜は腎円形で、ふつう全縁、径1〜1.5mm。

Fig.11 春の新葉。(兵庫県篠山市・林縁 2011.4/28)
  夏緑性シダが展葉する様子はいずれの種でもみずみずしく美しいが、ナンゴクナライシダは繊細さが加わる。

Fig.12 展葉間もない葉。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.5/9)

生育環境と生態
Fig.13 林縁斜面に生育するナンゴクナライシダ。(西宮市・林床斜面 2013.6/9)
同所的にベニシダ、オオベニシダ、コアジサイ、タチツボスミレなどが生育している。

Fig.14 林縁斜面にまばらに群生するナンゴクナライシダ。(兵庫県朝来市・社寺境内 2011.6/19)
社寺境内の植林地の林床斜面にナンゴクナライシダがまばらに群生していた。
周辺にはシダ類ではベニシダ、ヤブソテツ、シケシダが生育し、タチシオデ、アズマガヤ、ミヤマフユイチゴ、ツタウルシ、アマチャヅル、
コウモリカズラ、アオツヅラフジ、キヅタ、テイカカズラ、ムラサキニガナなどが生育している。


最終更新日:17th.Mar.2014

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