ニガクサ Teucrium japonicum  Houtt.
  里山・林縁・林床の植物 シソ科 ニガクサ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)

里山や山地のやや湿った林縁から林床に生育する多年草。
茎は直立し、高さ30〜70cm、無毛ときに下向きの細毛があり、地下に細長い走出枝を出す。
葉は対生し、卵状長楕円形〜広披針形、長さ5〜10cm、幅2〜3.5cm、鋭頭。
花序は長さ3〜10cm。萼は長さ4mm内外、短毛のみが生え、腺毛はなく、上歯の先はやや尖り、果時にも口はすぼまない。
花冠は淡紅色で、長さ10〜12mm。分果は広楕円形で、長さ1.3〜1.6mm。

ツルニガクサT. viscidum var. miquelianum)は萼に一面に腺毛があり、上歯は鈍頭で果時に内側に曲がる。日本全土。
ツルニガクサの基本種コニガクサ(var. viscidum)は葉がやや厚く、密に腺毛と細毛がある。沖縄以南。
エゾニガクサT. veronicoides)は葉が広卵形〜卵形で両面に粗い毛があり、茎に粗い開出毛がある。北海道、本州に稀。
エゾニガクサの変種イヌニガクサ(var. brachytrichum)は開出毛が短く、葉の鋸歯が大きい。東北地方に稀。
テイネニガクサT. teinense)は葉の表面または脈上にまばらに粗毛があり、茎には上部の節にだけ開出毛がある。北海道、本州。
近縁種 :  ツルニガクサ、 エゾニガクサ、 テイネニガクサ

■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島
■生育環境:里山や低山、山地のやや湿った林縁や林床など。
■花期:7〜9月

Fig.2 茎。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
  茎には非常に微細な短毛が見られた。

Fig.3 葉。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
  葉は1〜2cmの葉柄があり、葉身はツルニガクサよりも厚味があり、卵状長楕円形〜広披針形。
  葉縁は重鋸歯状となる部分はツルニガクサより少なく、基部は広いくさび形〜心形となる。

Fig.4 花序。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
  花序は長さ3〜10cm、ふつうツルニガクサよりも長く伸びる。

Fig.5 花序(つぼみ時)の拡大。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
  萼には短毛が密生するが、腺毛は見られない。苞葉は広披針形。萼裂片の上歯はやや尖る。

Fig.6 花。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
  花冠は唇形で、淡紅色、長さ10〜12mm。下唇は大きくて3裂し、中裂片は大きく、垂れ下がり、ときに画像のように反り返る。
  上唇は小さく2深裂し、下唇側面についた小突起状となる。雄蕊4個と雌蕊1個は斜上して突き出し、雌蕊先端は2岐する。

Fig.7 萼の口部は花後になってもすぼまらない。(兵庫県篠山市・林縁 2013.8/23)

Fig.8 分果。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.11/13)
  分果は広楕円形で、長さ1.3〜1.6mm、表面の大きな網目模様はツルニガクサよりもさらに不明瞭だった。

Fig.9 分果表面の拡大。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.11/13)
  表面には六角状の微細な網目が並んでいた。

Fig.10 ツルニガクサとの萼の比較。(兵庫県篠山市・林縁 2014.7月)
  ニガクサ(左)には腺毛はないが、ツルニガクサ(右)では腺毛が密生する。

Fig.11 春先の萌芽。(兵庫県篠山市・林縁 2014.4/28)

生育環境と生態
Fig.12 林縁草地に群生するニガクサ。(兵庫県篠山市・林縁草地 2014.7/22)
山麓の植林地林縁のクリ園跡の草地でニガクサが群生していた。
同所的にヤブソテツ、クサソテツ、スギナ、ノゲヌカスゲ、ニシノホンモンジスゲ、ヒカゲスゲ、トボシガラ、ヤマミゾイチゴツナギ、ホウチャクソウ、
ウバユリ、コアカソ、ママコノシリヌグイ、ミズヒキ、ハナウド、ヤブニンジン、オヤブジラミ、セントウソウ、ミツバ、ウマノアシガタ、ミヤマキケマン、
キンキエンゴサク、クサノオウ、イチリンソウ、ボタンヅル、タチツボスミレ、オオタチツボスミレ、ノジスミレ、ドクダミ、ミヤマカタバミ、クサイチゴ、
ダイコンソウ、ヘクソカズラ、スイカズラ、ハグロソウ、ツルカノコソウ、カキドオシ、キツネノマゴ、ノコンギク、フキなどが生育している。

Fig.13 社寺の林縁部に生育するニガクサ。(兵庫県篠山市・社寺林縁 2013.8/23)
社寺境内の湿った林縁部でニガクサの小群落が見られた。
ここでは同所的にコハシゴシダ、ゲジゲジシダ、アオカモジグサ、カニツリグサ、トボシガラ、ツユクサ、ジャノヒゲ、ミヤマナルコユリ、ヒメドコロ、
クサコアカソ、ミズヒキ、イノコヅチ、ヤブニンジン、ミツバ、ウマノアシガタ、ナガバノタチツボスミレ、コスミレ、アオイスミレ、ヤブマメ、クサイチゴ、
ヘクソカズラ、ハグロソウ、オカタツナミ、トウゴクシソバタツナミ、ヨメナ、フキなどが生育していた。


最終更新日:21st.June.2015

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