ツルニガクサ | Teucrium viscidum Blume var. miquelianum (Maxim.) H.Hara |
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里山・林縁・林床の植物 | シソ科 ニガクサ属 |
Fig.1 (西宮市・林縁 2010.8/6) 里山や山地のやや湿った林縁から林床に生育する多年草。 茎は直立し、高さ20〜40cm、無毛または下向きの細毛があり、地下に細長い走出枝を出す。 葉は対生し、1〜2cmの葉柄があり、葉身はやや薄く、狭卵状長楕円形、長さ4〜10cm、幅1.5〜5cm、表面にはときに毛が散生する。 花序は長さ3〜5cmで、一方向に偏って密に淡紅色の花をつける。 萼は長さ3mm内外で全面に腺毛があり、上歯の先は鈍く、果期にはやや球状にふくれて口はすぼむ。 花冠は長さ8〜10mm。分果はやや円形で、長さ1.2〜1.5mm、不明瞭な網目模様があり、上部に腺点がある。 基本種のコニガクサ(var. viscidum)は葉がやや厚く、密に腺毛と細毛がある。沖縄以南。 ニガクサ(T. japonicum)は萼に腺毛がなく、まばらに短毛だけがあり、上歯は鋭頭で果時に内側に曲がらない。日本全土。 エゾニガクサ(T. veronicoides)は葉が広卵形〜卵形で両面に粗い毛があり、茎に粗い開出毛がある。北海道、本州に稀。 エゾニガクサの変種イヌニガクサ(var. brachytrichum)は開出毛が短く、葉の鋸歯が大きい。東北地方に稀。 テイネニガクサ(T. teinense)は葉の表面または脈上にまばらに粗毛があり、茎には上部の節にだけ開出毛がある。北海道、本州。 近縁種 : ニガクサ、 エゾニガクサ、 テイネニガクサ ■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島、台湾 ■生育環境:里山や低山、山地のやや湿った林縁や林床など。 ■花期:7〜9月 |
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↑Fig.2 茎。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/31) 茎には下向きの細毛が見られた。 |
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↑Fig.3 葉。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 葉は1〜2cmの葉柄があり、葉身はやや薄く、狭卵状長楕円形、表面にはときに毛が散生し、葉縁は重鋸歯状、基部はやや広いくさび形。 |
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↑Fig.4 花序。(西宮市・林縁 2010.8/6) 花序は長さ3〜5cmで、一方向に偏って密に淡紅色の花をつける。 |
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↑Fig.5 花序の拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 花序の中軸、萼、苞葉裏面には腺毛と細毛が混じって生えている。苞葉は広披針形。萼裂片の上歯は鈍頭。 ときに花序中軸に下向きの細毛だけが生え、腺毛が混じらないものも見られる。 ニガクサとの比較はニガクサのページを参照。 |
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↑Fig.6 花。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 花冠は唇形で、淡紅色、長さ8〜10mm。下唇は大きくて3裂し、中裂片は大きく先は垂れ下がる。 上唇は小さく2深裂し、下唇側面についた小突起状となる。 雄蕊4個と雌蕊1個は斜上して突き出し、雌蕊先端は2岐する。 |
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↑Fig.7 分果。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.10/24) 分果はやや円形で、長さ1.2〜1.5mm、不明瞭な網目模様があり、上部に腺点がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 林縁に生育するツルニガクサ。(兵庫県篠山市・渓流畔の林縁 2014.7/15) 山麓の小さな渓流畔の植林地林縁でツルニガクサが群生していた。 隣接する植林地は適度の管理されてやや湿り気が多く、同所的にクマワラビ、イワガネソウ、ヤマヤブソテツ、キヨスミヒメワラビ、トウゴクシダ、 ベニシダ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、キジノオシダ、ミヤマカンスゲ、ナキリスゲ、ヤマジノホトトギス、ナガバジャノヒゲ、アオイスミレ、 ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、ドクダミ、ミヤマカタバミ、ヤマホロシ、ホクリクタツナミソウ、ミカエリソウなどが生育している。 |
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Fig.9 湿潤な植林地に群生するツルニガクサ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/31) 渓流に面した植林地の湿潤な林床にツルニガクサが群生していた。 林床は被植率が高く、チャノキやアオキの低木が点在し、イノデ、サイゴクイノデ、イノデモドキ、アイアスカイノデ、イワガネゼンマイ、 ヤマヤブソテツ、キヨスミヒメワラビ、オニヒカゲワラビ、イワヒメワラビ、シケシダ、シケチシダ、ヒロハイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、 ミヤマカンスゲ、ヒカゲスゲ、チヂミザサ、ナガバジャノヒゲ、ヤブラン、ヤマトキホコリ、イノコヅチ、セリバオウレン、イヌショウマ、 ヤブニンジン、フタリシズカ、アキチョウジ、ミカエリソウなどが生育している。 |