ノビル | Allium grayi Regel | ||
里山・草地・道端の植物 | ユリ科 ネギ属 |
Fig.1 (西宮市・水田の畦 2010.6/21) 低地〜丘陵、原野、里山の草地、道端、畦などに普通な多年草。 鱗茎は球茎で径15mm前後、2〜10個の葉が出る。葉は線形、長さ20〜30cm、幅2〜3mm、中空で、断面は三日月形。 花茎は高さ40〜60cmで直立し、茎頂に散形花序がつくが、はじめは総苞に被われてくちばし状を呈する。 花被片は6個、卵状長楕円形で長さ4〜6mm、白色または淡紅色を帯び、やや平開する。 雄蕊は花被片よりはるかに長く、花糸の基部に歯牙はない。花柱も花被片より長い。 花序のうち、花の一部または全部が珠芽に変わることが多い。 【メモ】 本種は農耕地や人家周辺に特に多く見られるため、史前帰化植物とする説がある。 食用・薬用として有用な野草で、生食したり、軽く茹でて鱗茎を食用とすると美味である。 近縁種 : ニラ、 ヤマラッキョウ、 アサツキ ラッキョウ、 ハタケニラ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾 ■生育環境:低地〜丘陵、原野、里山の草地、道端、畦など。 ■花期:5〜6月 |
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↑Fig.2 ノビルの地下部。(西宮市・自宅植栽 2011.1/15) 葉の基部は葉鞘となって、若い葉を包み、葉鞘はそのまま鱗茎の外皮となる。 このように薄い外皮に何層も包まれるものを外皮鱗茎といい、ネギ亜科の特徴である。 ノビルの鱗茎は土中の10cm前後の深さにあり、広卵形で白色、下端からひげ根を多数生じる。 画像では脇から小球を生じており、分球(あるいは分枝になるのか?)しての栄養繁殖も盛んである。 鱗茎は生食すると、鼻から脳天に抜けるようなかなり強い辛味があり、味噌をつけて焼酎や泡盛のアテによい。 また、軽く茹でると辛味が抜けて甘みが生じ、辛子酢味噌などで和えると、日本酒にあうつまみとなる。 ノビルは同属のネギ、アサツキ、エシャロット、ラッキョウ、タマネギと同様、様々な料理に応用することができる。 |
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↑Fig.3 ノビルの葉。(西宮市・自宅植栽 2011.12/29) 葉は線形、長さ20〜30cm、葉鞘部数cmは直立するが、中部以上は下垂し、地表に広がる。 葉がよく繁り、鱗茎が発達するのは晩秋〜春にかけてである。 開花期には葉数は冬場の半数以下となり、花後には葉が枯死していることが多い。 |
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↑Fig.4 葉の横断面。(西宮市・自宅植栽 2011.12/29) 葉は表面が凹み、裏面が膨出し、横断面は三日月形となる。 内部は中空であるはずだが、粘性のある液体に満たされてよく解らない。 |
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↑Fig.5 花序。(西宮市・水田の畦 2010.6/21) 長い花茎の先に散形花序がつく。花序には多数の花がつくが、多くは珠芽となっていることが多い。 |
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↑Fig.6 ノビルの花。(西宮市・水田の畦 2010.6/21) 花は6個の離生する内外花被片と、雄蕊6個、3室の子房、1個の雌蕊からなる。 外花被片は内花被片より少し幅広く、花被片の中脈は紫色を帯びる。。子房は上位につき、多くは先端の背が緑色を帯びる。 ノビルが種子形成している状態を確認したことはない。しかし、開花過程を見ると自家受粉を防ぐかのような挙動が見られる。 開花し始めると同時に雄蕊が成熟しはじめ、完全に開花すると成熟して花被片よりも長くなり、葯が開く頃には花被片よりもはるかに長くなる。 この間、雌蕊はまだ花被片よりも短く、葯が開ききって後に伸び始め、花粉が放出されたと見られる頃に、ようやく花被片よりも長くなる。 花が閉じる頃には花柱も雄蕊とともに、花被片の外に出てよく目立っている。 |
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↑Fig.7 ムカゴ(珠芽)を形成した花序と、発芽したムカゴ。(西宮市・棚田の畦 2007.6/8) 花序の全ての花が全て珠芽となっている集団は、全てが花となっている集団よりもはるかに多い。 このような全てが珠芽となっている集団では、開花期に発芽しているものも多い。 画像の集団では、多くの発芽が見られ、まるでメデューサの頭のような様相を呈し、過剰な生命力が爆発するかのようであった。 このような珠芽は花茎が枯れた後に、地表に分散し、幼植物として発根し自立する。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 休耕田の畦に群生するノビル。(西宮市・休耕田の畦 2011.3/15) ノビルは乾いた草地から水田の畦のような湿った日当たり良い場所まで、いたるところで生育している。 ここではスギナ、フユノハナワラビ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、タネツケバナ、ナズナ、スイバ、ヨモギ、ノアザミ、 アキカラマツ、ツメクサなどとともに多くの個体が生育していた。 |
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Fig.9 畑地の土手に群生するノビル。(兵庫県たつの市・畑地の土手 2011.6/5) 麦畑が広がる斜面のチガヤを主体とする草地土手にノビルが群生し、多数の花をつけていた。 ノビルは花をつけるものより、ムカゴを生じているのを見かけることが多いが、ここでは多数の花が見られ、生育条件が良好なようである。 |