ノガリヤス Calamagrostis brachytricha  Steud.
  里山・草地・林縁の植物 イネ科 ノガリヤス属
Fig.1 (兵庫県香美町・林道脇 2010.10/11)

Fig.2 (兵庫県篠山市・道端草地 2012.10/11)

丘陵〜山地の草地や林縁に生育する多年草。
茎は高さ60〜150cmになり、やや硬い。葉は線形、まれに葉鞘に毛がある。
円錐花序は長さ10〜50cm、披針形または狭卵形で、やや密に多数の小穂をつけ、枝はざらつき半輪生する。
小穂は披針形でとがり、長さ4.5〜5mm。苞頴は同長またはほぼ同長で、淡緑色または汚紫色を帯び、やや光沢がある。
護頴と苞頴はほとんど同長で、芒はその背面の基部近くから出て、わずかに膝折れする。
基盤の毛束は不同長で、短い。

深山に生えるものにヒゲノガリヤスC. longiseta)があり、芒は護頴背面中央部またはやや下部につく。
ヒメノガリヤスC. hakonensis)は芒は小穂の外に出ず、葉舌は淡色で長さ1〜5mm、葉鞘上端に環状に短毛が生える。
オニノガリヤスC. gigas)は大型で、茎に5〜7節あって、芒は小穂から少し突き出す。
タカネノガリヤスC. sachalinensis)は高山に生え、芒は短く、小穂から出ない。
近縁種 : ヒゲノガリヤス、 ヒメノガリヤス、 オニノガリヤス、 タカネノガリヤス

■分布:北海道西南部、本州、四国、九州 ・ ユーラシア全域
■生育環境:里山の草地、林縁、落葉広葉樹の疎林内など。
■花期:8〜11月

Fig.3 全草標本。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  短い根茎があり、植物体はゆるく束生する。茎は細く、やや硬い。

Fig.4 基部。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  茎の基部は1〜2個の厚膜質で脈の目立つ鱗片葉がある。

Fig.5 葉鞘・葉舌・葉・節。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  葉鞘は両縁が重なり合い、節間よりも短く、ふつう無毛、まれに毛が生える。
  葉舌は膜質で卵形、長さ2〜3.5mm、ときに中央部が裂けている。
  葉表の脈上には刺状突起があってざらつき、脈間には軟短毛が生える。葉裏は無毛。
  節は少しふくらみ、平滑無毛。

Fig.6 円錐花序。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  円錐花序は披針形または狭卵形。半輪生する花序枝に、小穂をやや密につける。

Fig.7 花序の一部拡大。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  花序枝には刺状突起があってざらつく。小穂からは芒が突き出る。

Fig.8 小穂。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  小穂は1小花からなる。苞頴はほぼ同長で4.5〜5mm、披針形、竜骨脈上には刺状突起が並ぶ。

Fig.9 苞頴を開いた小穂。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  小花は長さ4mm、基部には長さ1〜1.5mmの基毛を束生する。芒は長さ5.5〜6mm、わずかに膝折れする。
  小花は熟すと基部から脱落し、基毛が風を受けて飛ばされて生育領域を広げる。

Fig.10 展開した小花。(西宮市・林縁 2010.11/14)
  護頴は膜質、長さ4mm、3脈あり、竜骨脈基部から芒を生じる。内頴は長さ3.5〜4mm、2脈ある。葯は長さ2mm。
  頴果は小花基部に固着している。

生育環境と生態
Fig.11 渓谷の日当たりよい断崖上に生育するノガリヤス。(西宮市・渓谷断崖上 2010.11/14)
ノガリヤスは乾燥にもよく耐え、岩壁の乾いた草付きに生育しているのをよく眼にする。

Fig.12 里山の林縁草地に生育するノガリヤス。(西宮市・林縁草地 2010.11/14)
里山ではあまり頻繁に草刈りが行われず、ネザサがまばらに生える草地で見かけることが多い。
西宮市内ではこのような場所でヒヨドリバナ、オカトラノオ、アキノキリンソウ、キクバヤマボクチなどとともに生育していることが多い。

Fig.13 林道脇の崖錐下部に生育するノガリヤス。(西宮市・林道脇 2010.11/14)
数年前に小規模な地すべりのあった林道脇の急斜面の崖錐の岩屑の溜まった下部に生育している。
ここではこのような場所によく現われるイタドリ、ヘクソカズラ、ヤクシソウ、ヨシノアザミ、ノコンギク、アカメガシワ幼木、タニウツギ幼木などが見られた。


最終更新日:3rd.Mar.2014

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