ノコギリヘラシダ Deparia x tomitaroanum   (Masam.) R.Sano
  林床・着生シダ イワデンダ科 オオシケシダ属
Fig.1 (京都府・岩壁 2016.11/2)
ヘラシダとナチシケシダの自然雑種で、陰湿な林床や渓流畔の岩壁に生育する常緑性シダ。鱗片は線状披針形で黒褐色〜茶褐色、全縁。
ヘラシダに似るが、葉身は下部ほど深く羽状に切れ込み、最下の側裂片(羽片)は羽状にほぼ全裂し、耳状となる。
ソーラスは裂片の中肋の両側に並び、中肋よりやや離れ、辺縁近くに達するが、やや短い。
染色体数は'n'=123で3倍体無融合生殖と、2n=500で胞子に異常のあるものがある。

ヘラシダD. subsinuatum)は葉身が単葉。
ヒトツバシケシダD. × lobatocrenata)はヘラシダとホソバシケシダの推定種間雑種。葉質は薄く、葉にはやや2形がある。
近縁種 : ヘラシダ、 ヒトツバシケシダ

■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄 ・ 中国、台湾
■生育環境:陰湿な林床や渓流畔の岩壁など。

Fig.2 全草標本。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  明瞭な葉柄があり、葉身は下部ほど深く羽状に切れ込み、披針形〜線形、鋭尖頭、革質、上面は濃緑色。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  鱗片は線状披針形、全縁、茶褐色〜黒褐色。

Fig.4 葉身下部。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  最下の側裂片(羽片)は羽状にほぼ全裂し、耳状となる。

Fig.5 葉身裏面。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  葉身裏面は淡色、中軸は裏面に隆起する。
  ソーラスは裂片の中肋の両側に並び、中肋よりやや離れ、辺縁近くに達するが、やや短い。

Fig.6 ソーラス。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  発見時期が遅いため、胞子嚢は全て弾けて中は空だった。

Fig.7 苞膜。(京都府・岩壁 2016.11/2)
  苞膜は全縁で、表面には毛が見られた。

Fig.8 ノコギリヘラシダとヘラシダ(下)。(京都府・岩壁 2016.11/2)

生育環境と生態
Fig.9 滝の脇の岩壁に生育するノコギリヘラシダ。(京都府・岩壁 2016.11/2)
滝の横の多湿の岩壁にヘラシダが群生しており、そこに1個体のみが見られた。
海辺に近い花崗岩地で風化している部分も多く、他にヤブソテツsp.、コバノカナワラビ、イヌシダなどが見られ、周辺の林下には
ホソバカナワラビの群落が点在していた。


最終更新日:15th.Mar.2017

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