リンドウ Gentiana scabra  Bunge
  var. buergeri  (Miq.) Maxim.
  里山・草地の植物 リンドウ科 リンドウ属
Fig.1 (西宮市・棚田の畦 2006.11/9)

Fig.2 (兵庫県加東市・溜池土堤 2012.11/8)

丘陵〜山地の里山の草地、草原、林縁ときに湿地に生育する多年草。
茎は高さ20〜100cm、直立または斜上し、4条線がある。
葉は対生して、卵状披針形、3脈がいちじるしく目立ち、長さ3〜8cm、表面は緑色、裏面は淡緑色、先は長くとがり、
基部は円く、縁には細かい突起があってややざらつき、柄はない。
花は茎頂および上部の葉腋につき、苞がある。萼筒は長さ10〜20mm、萼裂片は線状披針形。
花冠は紫色、内面に紫褐色の斑点があり、長さ4〜5cm、副片は3角形で小歯がある。
子房の基部に5個の蜜腺がある。種子は紡錘形で、両端に短い尾がある。

ホソバリンドウ(f. stenophylla)は湿地に生育し、葉が細い品種。
アサマリンドウG. sikokiana)は葉の縁が波状となり、葉柄がある。萼裂片は卵形で平開する。
近縁種 : ホソバリンドウ、 アサマリンドウ

■分布:本州、四国、九州、奄美
■生育環境:里山の草地、草原、林縁など。
■花期:9〜11月

Fig.3 葉。(西宮市・棚田 2010.11/20)
  葉は対生して、卵状披針形、先は長くとがり、基部は円く、柄はない。

Fig.4 刈り込みに遭った草体の葉。(西宮市・林縁草地 2010.11/14)
  葉先は伸びず、楕円形を帯び、鋭頭。踏み付けに遭ったものもこのような葉になることがある。

Fig.5 開花全盛期のリンドウ。(西宮市・棚田 2010.11/20)
  花は茎頂および上部の葉腋につく。
  画像のものは、茎が一旦刈り取られたか、野生動物の食害にあって、主茎が切り詰められ、節間が詰まった側枝から開花しているため、
  より花が密につき、華やかに見える。

Fig.6 開花したばかりの花。(西宮市・棚田 2010.11/20)
  花冠は花筒、花冠裂片とその間にある副片、雄蕊5個、子房、2個の花柱からなる。
  開花したばかりの花では、雄蕊は子房と花柱に密着して取り囲み、葯が外向きに裂開して、淡黄色の花粉を放出する(雄性期)。

Fig.7 雄性期から雌性期への移行途中の花。(西宮市・棚田 2010.11/20)
  花は雄蕊が花粉放出後、取り囲んでいた雄蕊群の中央から2個の柱頭を出して、次第に外曲する。
  花冠裂片には白点を散布し、花筒内部には紫褐色の斑点がある。副片には小歯がある。

Fig.8 雌性期の花。(西宮市・棚田 2010.11/20)
  雌蕊を取り囲んでいた、花粉を放出した雄蕊は四方に倒れ込んで、花筒壁面に接着し、花柱2個はいちじるしく外曲する。
  子房の基部には5個の蜜腺があるが、雄性期、移行期、雌性期のそれぞれに蜜の分泌量がどうなっているのか、興味はつきない。

Fig.9 刮ハ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.1/20)
  花冠を切り開いたもの。刮ハは宿存する枯れた花筒と花冠裂片の内部で成熟し、長楕円状披針形。

Fig.10 裂開した刮ハ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.1/20)
  刮ハは成熟すると先端から2裂するが、宿存する花冠が風雪と乾燥にさらされ崩れることによってはじめて種子散布できる。
  裂開した刮ハ先端には宿存した花柱が残る。

Fig.11 リンドウの種子。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.1/20)
  種子は種皮が発達して胚乳周囲に広がり、表面には縦長の格子紋があり、縁辺は全体翼状となり、両端は尾状に伸びる。
  種子は開いた刮ハを指で弾くと、大量に飛散する。強風が吹けば恐らく翼状となった種皮縁辺が風を受けて飛散し、生育領域を広げるはずである。

生育環境と生態
Fig.12 棚田の草地斜面に生育するリンドウ。(西宮市・棚田 2010.11/20)
里山の管理放棄された草地斜面に刈り込みを受けずに大きく生育し、寒気に晒された紅葉した草体。
周辺にはススキ、チガヤ、メガルカヤ、オガルカヤ、ヒメアブラススキ、キセルアザミ、サワヒヨドリ、コガンピなど
草原環境を好む種が多い。

Fig.13 刈り込まれて開花したリンドウ。(西宮市・用水路脇 2010.11/14)
山際を流れる導水路脇の草地が刈り込まれており、矮小化したネザサの間に点在し、いずれの個体も15cm程度の草丈で開花している。
周辺にはノアザミ、コメヒシバ、コチヂミザサ、ノガリヤス、ショウジョウスゲ、ヒカゲスゲ、ノギラン、ソクシンランなどが生育する。

Fig.14 高原の遊歩道脇で開花したリンドウ。(兵庫県養父市・遊歩道脇 2010.10/11)
かろうじて草刈りの難をのがれたリンドウが秋の初めから開花していた。自生地点は標高1000mほどあり、秋が早くやってくる。
周辺にはネザサ主体の草原が広がり、遊歩道脇にはセンブリ、アキノキリンソウ、キクバヤマボクチが開花し、アリノトウグサ、イトハナビテンツキ
などが生育している。

Fig.15 溜池土堤に生育するリンドウ。(兵庫県福崎町・溜池土堤 2011.11/29)
草刈り管理の行き届いた溜池土堤に多くのリンドウが開花していた。
リンドウは土堤の中部〜下部に多く見られ、ヤマラッキョウ、ツリガネニンジン、ワレモコウなどとともに生育していた。
土堤の上部ではオガルカヤ、メガルカヤ、センブリなどが生育している。


最終更新日:3rd.Mar.2014

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