ジロボウエンゴサク | Corydalis decumbens (Thunb.) Pers. | ||
低山・林縁・草地の植物 | ケシ科 キケマン属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・林縁 2011.5/7) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁 2013.4/9) 平地〜山地の林縁、疎林の林床、草地などに生育する多年草。 地下に塊茎がある。根生葉は塊茎の頂端に少数ついて、2〜3回3出複葉、長い柄がある。 小葉はふつう2〜3深裂し、裂片は長さ1〜2cm、幅3〜7mm。 花茎は1球から数本ずつ出て長さ10〜20cmとなり、柄のある葉がふつう2個つく。 花序はやや少数の花をつけ、苞は卵形で全縁。花は紅紫色〜青紫色、まれに白色で、長さ12〜22mm。 刮ハは線形、長さ15〜22mmで、径約1.5mmの種子が数個ある。 近縁種 : ヤマエンゴサク(広義) ■分布:本州(関東以西)、四国、九州 ・中国、台湾 ■生育環境:平地〜山地の林縁、疎林の林床、草地など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 全草標本。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) 草体は軟弱で、無毛。塊茎は地下およそ10cmの場所にあり、そこから非常に細い茎を立ち上げていた。 この個体は日陰に生えていたためか、根生葉が見られず、花茎のみが見られ、茎に2枚の葉をつけているのみだった。 標本は新産地報告のために採集したものです。 |
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↑Fig.4 塊茎。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) 塊茎は新しいものと、古いものとが連結しており、1個の塊茎は長さ8mm前後。根は新旧塊茎の間から出ている。 茎は新しい塊茎から出て、他にも細く硬い新しい茎か葉柄らしきものが3本ほど出ていた。これは根生葉が切れた痕なのかもしれない。 |
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↑Fig.5 葉と小葉。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) 葉は2〜3回3出複葉。小葉はふつう2〜3深裂し、裂片は長さ1〜2cm、幅3〜7mm。 |
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↑Fig.6 花。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) 花は総状花序に少数がつく。花柄基部の苞葉は卵形で全縁、ヤマエンゴサク(広義)では苞葉に切れ込みがある。 花は紅紫色〜青紫色で、長さ12〜22mm。 |
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↑Fig.7 紅色味の強い花。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) |
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↑Fig.8 果実形成期。(兵庫県丹波市・社寺境内 2011.4/29) 花の終わった花茎は、地表に倒伏して刮ハをつけていた。 |
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↑Fig.9 刮ハは線形。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) |
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↑Fig.10 種子。(兵庫県丹波市・林縁 2011.5/7) 種子は黒熟し、長径約1.5mm、短径約1.2mm。表面には横長の網目模様があり、非常に微細な突起がある。 種子の下部にはエライオソームが付属する。エライオソームは透明で、つばさを畳んだような形状をしている。 |
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↑Fig.11 種子表面の突起。(兵庫県丹波市・林縁 2011.5/7) |
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↑Fig.12 幼植物。(兵庫県丹波市・林縁 2011.5/7) 当年苗は単葉(左)、2年目は3小葉となる(右)。 |
生育環境と生態 |
Fig.13 植林地の林縁に生育するジロボウエンゴサク。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/29) 植林地の日陰〜半日陰にセントウソウ、ミヤマカタバミ、セツブンソウ、サワハコベ、ユリワサビなどとともに生育してた。 |
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Fig.14 果樹園跡地に生育するジロボウエンゴサク。(兵庫県丹波市・果樹園跡地 2011.5/7) スギ植林地の谷間の一画に放棄されたカキ・クリの果樹園があり、多くのジロボウエンゴサクが生育していた。 シカの通り道となっているため撹乱が激しいが、ジロボウエンゴサクは食害されておらず、シカの忌避植物とともに生育している。 同所的にネコノメソウ、ヤマネコノメソウ、ノミノフスマ山地型、オオバタネツケバナ、ジャニンジン、ムラサキケマン、オオバチドメ、 マツカゼソウ、ヌカボシソウ、ニシノホンモンジスゲ、クラマゴケ、ジュウモンジシダなどが見られた。 |
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Fig.15 チャノキの根際に生育するジロボウエンゴサク。(兵庫県丹波市・果樹園跡地 2011.5/7) Fig.14 と同じ場所で、果樹園内に数多く植栽されていた倒伏したチャノキの根際に多くの個体がかたまって見られた。 シカの撹乱が激しい場所であるため、シカの通りにくいチャノキの根際に生育しているものが多く残っている。 |
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Fig.16 林縁斜面に生育するジロボウエンゴサク。(兵庫県篠山市・果樹園林縁 2013.4/9) 丹波層群の頁岩が破砕されて堆積した、果樹園の半日陰の斜面に群生が見られた。 同所的にオオベニシダ、ナキリスゲ、ニシノホンモンジスゲ、ネザサ、コメヒシバ、ジャノヒゲ、アマナ、ツルボ、タチツボスミレ、ボタンヅル、 ヤエムグラ、アキノタムラソウ、ミヤコアオイなどが生育している。 |