ヤマエンゴサク(広義) (キンキエンゴサク、ヒメエンゴサク含む) |
Corydalis lineariloba Sieb. et Zucc. | ||
里山〜山地の植物 | ケシ科 キケマン属 |
Fig.1 (兵庫県香美町・棚田の斜面 2008.4/27) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・果樹園 2011.4/15) 落葉広葉樹の林床、草地の斜面などに生える多年草。 全体ほぼ無毛で、地下に球形の塊茎があり、径約1cm。 茎は1個(まれに2個)出て高さ10〜20cm。最下の葉は鱗片状となり、その葉腋から分枝する。 茎葉は2個(まれに3個)あり、2〜3回3出複葉、小葉は線形〜卵円形、しばしば3裂し、変化が多い。 花は茎の先に総状花序をとなってつき、淡紅紫色、長さ15〜25mm。 花の苞葉は披針状〜扇状くさび形、ふつう歯牙があり3つ以上切れ込む。 刮ハは卵形または卵状長楕円形、長さ7〜13mm、幅3〜4mm。 種子にはエライオソームが付属する。 変種にヒメエンゴサク(var.capillaris)とキンキエンゴサク(var.papilligera)がある。 ヒメエンゴサクは小型でか細く、小葉は倒卵形〜卵状長楕円形で、長さ5〜8mm。花数は2〜3個程度で少ない。 キンキエンゴサクはヒメエンゴサクに似るが、刮ハは太短く、長さ5〜10mm、幅4〜5mm、種子の表面に微細な突起が並ぶ。 両種は外見上ほとんど区別できないため、ここでは両変種をまとめて広義のヤマエンゴサクとした。 よく似た種にジロボウエンゴサク(C. decumbens)があり、本州(関東地方以西)、四国、九州に分布する。 花茎の苞葉は歯牙状にならず卵状披針形。刮ハは線形で長さ約2cm、多少じゅず状となる。 近縁種 : ジロボウエンゴサク ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、満州 ■生育環境:関西では内陸から日本海側にかけての里山や山地の、落葉広葉樹林の林床、草地の斜面など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 花の色には様々な変異がある。(兵庫県篠山市・果樹園の土手 2008.3/29) |
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↑Fig.4 ヤマエンゴサクの花。(兵庫県篠山市・果樹園の土手 2008.3/29) 花弁は外側に上下2個あり、内側に左右2個ある。 雄蕊、雌蕊ともに、内側の花弁に囲まれて、ほとんど見えない。 |
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↑Fig.5 花茎と苞葉。(兵庫県香美町・棚田の斜面 2008.4/27) 花茎の花柄基部には苞葉がつく。苞葉にはふつう3個以上の切れ込みがある。 |
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↑Fig.6 キンキエンゴサクの花。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.3/29) 果実期の種子によってキンキエンゴサクと同定したもの。花の外見からはヒメエンゴサクと区別できない。 |
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↑Fig.7 未熟な刮ハ。(兵庫県篠山市・果樹園の土手 2008.4/18) 刮ハは広披針形〜卵状長楕円形。広披針形のものは不稔であることが多い。 |
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↑Fig.8 不稔の刮ハ(左)と結実した刮ハ(右)。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.4/29) 刮ハは不稔のものが多く、結実が見られるものでも1〜3個程度の種子しか見られない。 不稔の刮ハは扁平であるが、結実した種子を含む刮ハは、丸みを帯びた卵形または卵状長楕円形となる。 |
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↑Fig.9 種子(狭義キンキエンゴサクのもの)。(兵庫県丹波市・落葉広葉樹林下 2011.4/29) 種子は扁平な円形で、長径約2mm、下部にはエライオソームが付属する。 画像の種子表面には微細な突起が並び、狭義の変種キンキエンゴサクのものとすることができる。 |
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↑Fig.10 葉身。(兵庫県篠山市・果樹園の林床 2008.4/13) 画像からはちょっと込み入って解りづらいが、葉はふつう2回3出複葉ときに1回または3回3出複葉となる。 小葉は変異が多いが、ふつう卵形〜楕円形で先がとがり、下面は白味を帯び、無毛。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 果樹園林床に生育するヤマエンゴサク。(兵庫県篠山市・果樹園の林床 2008.3/25) アズマイチゲ、ニリンソウなどとパッチ状の群落をつくっている。 |
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Fig.12 棚田斜面に群生するヤマエンゴサク。(兵庫県香美町・棚田の斜面 2008.4/27) 高標高地にある棚田の斜面で、数十株の個体が群生していた。 |