タチシオデ Samilax nipponica  Miq.
  里山・林縁・草地の植物 ユリ科 シオデ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁土手 2010.5/29)
丘陵〜山地の里山の林縁や土手の草地に生育する多年草。
茎は円柱形で平滑、とげはなく、はじめ直立するが、生長すると他のものに寄りかかり、長さ1〜2mになる。
葉はまばらに互生し、広楕円形または長楕円形で、長さ6〜10cm、先は急にとがって鋭頭、基部は切形または広いくさび形。
葉の質は硬膜質、表面は鮮緑色、裏面は淡色で多少粉白色を帯びる。葉柄は長く、基部の托葉は巻きひげとなる。
花序は長い柄をもった半球形〜球形の散形花序で、葉腋につき、雌雄異株。
雄花、雌花ともに黄緑色または淡緑色で、花被片は内外花被片とも同形で6個ある。
雄花は花被片が反り返らず、雄蕊が6個あり、葯は短い。雌花は子房は球形、上位につき、花柱は3岐する。
液果は夏〜秋に熟し、粉白を帯びた黒色となる。

【メモ】 兵庫県では中北部に自生地が多い。丹波地方では林縁草地の2次的自然度の高さを示す種であるといえる。
近縁種 : シオデ、ヤマカシュウ、サルマメ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:丘陵〜山地の里山の林縁、草地など。
■花期:5〜6月

Fig.2 生長すると茎上部は他のものに寄りかかる。(兵庫県篠山市・林縁土手 2010.5/29)
  画像のものは2本のタチシオデが互いに寄りかかっている。

Fig.3 茎と葉。(兵庫県篠山市・林縁土手 2010.5/29)
  茎は平滑でトゲはない。葉は互生し、広楕円形または長楕円形、長い柄があり、基部の托葉は巻きひげとなっている。

Fig.4 巻きひげで他物に巻き付く。(兵庫県篠山市・林縁土手 2010.5/29)
  茎上部の巻きひげが、花後のショウジョウバカマの花茎に巻き付いている。



Fig.5 雄株。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.5/29)
  雌雄異株。雄株雌株ともに葉腋に長い柄をもった半球形〜球形の散形花序をつける。
  ふつう雄株は雌株よりも多くの花序をつける。

Fig.6 雄花序。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.5/29)
  花は長い小花柄の先につき、ふつう黄緑色。花被片は内外ともに同形で、6個、狭長楕円形、平開し反り返らない。
  雄蕊は6個、花糸は長く、葯は小さい。

Fig.7 緑色の花被を持った雄花。(兵庫県篠山市・果樹園土手 2008.5/13)

Fig.8 雌花序。(兵庫県篠山市・林縁土手 2010.5/29)
  花被片は雄花と同様。子房は粉白を帯びた緑色球形で上位にあり、花柱は3岐する。

Fig.9 果実形成期。(兵庫県篠山市・社寺境内 2011.7/8)
  未熟な果実も白味を帯びる。

Fig.10 熟した果実。(兵庫県三田市・林縁 2013.9/30)
  熟した果実は黒色で、紛白を帯びる。

Fig.11 若い個体。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.5/29)
  花序を形成しない若い個体では、葉幅が広くなり、褐色の斑紋が入るものがある。

生育環境と生態
Fig.12 山際の溜池土堤に点在するタチシオデ。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.5/29)
扇状地最上部の山際に造られた溜池の土堤は、草刈りの管理が行き届き、良好な草地環境が保たれていた。
刈り込まれて矮小化したネザサの間に多くのタチシオデが生育している。
同所的にヤマスズメノヒエ、ニガナ、シラヤマギク、シシガシラ、リンドウ、ヒカゲノカズラなどの草本、刈り込まれたモチツツジ、ヤマツツジ、
イヌツゲ、ナツハゼ、ヒサカキ、ノリウツギなどが生育している。


最終更新日:26th.July.2014

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