ヤマカシュウ Smilax sieboldii  Miq.
  林縁・林床の植物 ユリ科 シオデ属
Fig.1 (岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
低山〜山地の林縁や林床に生育するつる性の半低木。雌雄異株。
茎に稜が多く、ふつうトゲがあり、よく分枝し、冬期にも枯れずに越冬する。
葉は卵形で、長さ5〜12cm、5脈あり、鋭尖頭、基部は心形、両面無毛で光沢がある。
巻きひげは托葉の変化したもので、葉柄の中部以下に2個つき、長い。葉柄は巻きひげのある部分から下方は、扁平でやや幅が広くなる。
花序は散形。花被片は長楕円形、長さ4〜5mm、斜開または平開し、先は少し外曲する。葯は長さ約1.2mm。
液果は球形で紫黒色に熟し径6mm内外。

【メモ】 「日本の野生植物 草本1」「原色日本植物図鑑 草本類3」には石灰岩、蛇紋岩地帯に多いとある。取材した場所も石灰岩の台地上の里山である。
     最初、茎にトゲがないのでシオデかと思ったが花被片は完全に反転していないし花期が早い。良く見ると茎の節間にトゲが2,3個程度ある。
     付近の雑木林の林床には幼株がかなりの数あって、それには細いトゲがおびただしく生じていた。
     帰っていろいろと調べるうち、ネット上で実態不明のトゲナシヤマカシュウなるものを見つけたが、これの原著は植物研究雑誌にあるらしい。
     最終的には、前年の茎頂から今年枝が生じている、花被片は完全に反り返らない、つぼみはシオデのように長楕円形でなく楕円形、
     葉身の網状脈はシオデのように凹まない、幼株にはおびただしくトゲがある、などのことからヤマカシュウとした。
     ここで掲載したものはヤマカシュウの典型的なものではなく、変異集団の1観察例であることをお断りしておきたい。
     ヤマカシュウは兵庫県下では但馬から西播磨地方に産地が点在する。
近縁種 : タチシオデ、シオデ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:低山〜山地の林縁、落葉広葉樹の疎林内など。
■花期:5〜6月

Fig.2 茎の様子。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
  越冬した前年枝から今年枝が出る。ふつう茎にはトゲがあるが、この個体にはほとんど見られない。

Fig.3 葉。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
  葉には柄があり、互生してつく。葉身は卵形、鋭尖頭、基部は心形、5脈は明瞭。
  平行脈間に見られる網状脈はあまり凹まず、シオデのように目立たない。

Fig.4 葉縁。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
  画像では少し判りにくいが、葉縁には微小な突起が不整に並ぶ。シオデでは全縁。

Fig.5 雄花。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
  花は散形花序につく。花被片は6個で、長楕円形、長さ4〜5mm、少し外曲するが、シオデのように完全に反り返らない。
  雄蕊は6個、長さ4mm、葯は長さ1.2mm。

Fig.6 つぼみは楕円形。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)

Fig.7 若い個体。(岡山県真庭市・雑木林の林床 2010.6/1)
  若い個体の茎には開出する細いトゲが多かった。葉には白い斑紋を持つものが多かった。

Fig.8 ヤマカシュウをホストとするアカクビナガハムシ。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.7/8)
  アカクビナガハムシはクビボソハムシ亜科に属し、この仲間にはユリ科草本をホスト(食草)とする種が数種ありLilioceris属という属名を与えられている。
  アカクビナガハムシはヤマカシュウのほか、シオデ、サルトリイバラをホストとすることが知られている。

生育環境と生態
Fig.9 林縁の樹木から垂れ下がったヤマカシュウ。(岡山県真庭市・雑木林の林縁 2010.6/1)
かなりの大株で、アラカシの木に高く這い登って、垂れ下がり多くの花をつけていた。

Fig.10 林縁に生育するヤマカシュウ。(兵庫県篠山市・雑木林の林縁 2011.7/8)
古い果樹園の林縁のコクサギの樹上に這い登って垂れ下がって生育している。
同じ木にはツヅラフジも這い登って開花していたが、ヤマカシュウは大株にもかかわらず開花結実が見られなかった。


最終更新日:20th.Aug.2011

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