トウゲシバ | Huperzia serratum Thunb. | ||
里山・林床のシダ | ヒカゲノカズラ科 トウゲシバ属 |
Fig.1 (兵庫県三田市・林縁 2011.1/20) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁 2013.2/6) 低地〜山地のやや湿った林床に生育する常緑性シダ。 茎は斜上する基部から分枝して数本直立し、高さ8〜20cm、円柱状で、葉を密生する。 葉は倒披針形〜長楕円状披針形、薄い革質、下部は短い葉柄となり、鋭頭、縁に不整な鋭鋸歯がある。 胞子嚢は大きく、葉柄に1個ずつ生じ無柄、腎円形で黄白色、横に裂けて黄色の胞子を出す。 茎の上部に無性芽を生じて、これが後に落ちて新植物となる。 トウゲシバはホソバトウゲシバ(var. serratum)、ヒロハノトウゲシバ(var. intermedium)、 オニトウゲシバ(var. longipetiolatum)に分けることがある。 日本全域に見られるのはホソバトウゲシバで、葉は狭披針形〜倒披針形、長さ8〜15mm、幅は最も広い中央より少し上で2mm以内で、無柄。 当ページに掲載しているものはこのタイプにあたる。兵庫県の高所で見られるものはかなり小型で草体も細っそりしている。 ヒロハノトウゲシバは暖帯に多く、葉が倒披針形〜披針形、長さ15〜20mm、最も広い部分で幅2〜3mm、葉柄は不明瞭。 オニトウゲシバは葉が長楕円形〜卵状長楕円形で、披針形のものが混じることがあり、長さ20〜30mm、幅は中央部で3〜5mmで、葉柄がある。胞子葉は小さい。 近縁種 : ヒメスギラン ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 東アジア、東南アジア ■生育環境:低地〜山地のやや湿った林床や林縁。 |
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↑Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10) 腐植土と落葉に古い分枝した茎が深く埋もれ、埋もれた茎から発根する。地上部の茎は直立し、葉を密生する。 古い茎につく葉は枯れても茎に堅くつき、腐植も遅い。 |
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↑Fig.4 トウゲシバの葉。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10) 葉は変異が多く、倒披針形〜長楕円状披針形、幅1〜5mm、鋭頭、縁には不整な鋭鋸歯がある。 |
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↑Fig.5 胞子嚢は葉腋に1個つく。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10) 胞子嚢は腎円形で、熟すと上方から2裂して胞子を放出する。 |
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↑Fig.6 茎の上部には無性芽(矢印)ができる。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10) 無性芽は多肉質で、地上に落ちると新植物となる。 |
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↑Fig.7 無性芽の拡大。(兵庫県篠山市・林床 2011.2/10) |
生育環境と生態 |
Fig.8 植林地の林縁に生育するトウゲシバ。(兵庫県三田市・林縁 2011.1/20) 手入れされまばらに植栽されたスギ植林地の林縁に生育している。 トウゲシバは雑木林のやや湿った林床に見られることが多いが、スギの植林がまばらで多少の日射があるため状態よく生育している。 周辺にはシシガシラ、ゼンマイ、ツルリンドウ、セリバオウレン、ツルアリドオシ、ナガバモミジイチゴ、イヌツゲ、まばらなネザサ などが生育している。 |
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Fig.9 渓流沿いの落葉広葉樹林下に生育するトウゲシバ。(西宮市・渓流畔の林床 2011.2/18) 西宮市内には風化した花崗岩からなる貧栄養で乾いた山が多く、シダ類は少ないが、東〜北向きの流量の豊富な渓流畔ではシダ類が見られる。 ここではツルアリドオシが多く生える渓流畔の緩斜面にトウゲシバが散在していた。 付近は比較的高湿度のようで、岩上ではヤマイタチシダやコウヤコケシノブが生育している。 |
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Fig.10 植林地の林床に生育するトウゲシバ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2011.3/8) 比較的湿度の高い植林地の林床に点在して生育していた。 林床にはオオカサゴケが多く、他にニシノホンモンジスゲ、ジュウモンジシダ、ヤマイタチシダ、オオカナワラビ、リョウメンシダ、イヌショウマなどの 草本やシダ類、イヌツゲ、コガクウツギなどが見られた。 |