ツルデンダ Polystichum craspedosorum  (Maxim.) Diels
  山地・着生シダ オシダ科 イノデ属
Fig.1 (兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)

Fig.2 (兵庫県養父市・渓流畔の岩場 2015.4/30)

山地のやや湿った岩上、斜面などに着生する常緑性シダ。ふつう群生する。
根茎は小さく、短く、斜上から直立、葉を叢生し、鱗片をつける。
鱗片は披針形、先は尾状、長さ2〜4mm、縁にややまばらに長い毛がある。
葉柄は長さ1〜10cm、鱗片をやや密につける。葉身は単羽状複生、線状披針形、長さ12〜20cm、幅2〜3.5cm。
中軸は黄褐色〜褐色の鱗片をやや密につけ、長く伸びて先端に無性芽をつける。
羽片はふつう20〜35対つき、卵状長楕円形、鈍頭、基部は前側で切形、後ろ側でくさび形、短柄があり、紙質、
長さ1〜3cm、幅2〜5mm、辺縁は浅い鋸歯が並び、葉裏には線形の鱗片がある。
ソーラスは辺縁寄りに1列に並び、包膜は円形、径2mmを超えることもあり、膜質で、宿存する。
染色体数はn=41の2倍体。

イワデンダWoodsia polystichoides)は夏緑性。ソーラスは羽片の縁寄りの両側につき、包膜はコップ状で宿存しない。
近似種 : イワデンダ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 中国、朝鮮半島、ロシア東部
■生育環境:山地のやや湿った岩上、斜面など。

Fig.3 全草標本。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  根茎は小さく、短く、斜上から直立、葉を叢生する。
  葉柄は短く、長さ1〜10cm。葉身は単羽状複生、線状披針形、長さ12〜20cm、幅2〜3.5cm。

Fig.4 基部鱗片。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  鱗片は披針形、先は尾状、長さ2〜4mm、縁にややまばらに長い毛がある。

Fig.5 中軸と羽片。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  中軸は黄褐色〜褐色の鱗片をつける。羽片は卵状長楕円形、鈍頭、基部は前側で切形、後ろ側でくさび形、
  短柄があり、紙質、長さ1〜3cm、幅2〜5mm、辺縁は浅い鋸歯が並ぶ。

Fig.6 葉裏。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  中軸裏には鱗片がやや密に生える。葉裏には線形の鱗片がある。
  ソーラスは辺縁寄りに1列に並び、包膜は円形、径2mmを超えることもあり、膜質で、宿存する。

Fig.7 中軸の先端は伸びる。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  季節が進めば、先端に無性芽が生じる。

Fig.8 葉は基物壁面に沿うように伸びる。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
  イワデンダの葉は基物に沿わず、斜上する。

Fig.9 葉先に無性芽をつけた個体。(神戸市・谷間の岩場 2015.10/8)

生育環境と生態
Fig.10 谷間の緑色岩系の岩場の隙間に生育するツルデンダ。(兵庫県姫路市・谷間の岩場 2014.5/8)
急傾斜で基岩が露出している場所に多数着生している。
同じ岩上にはダイモンジソウ、スズシロソウ、ツルカノコソウなどが生育していた。

Fig.11 渓流畔の岩場に生育するツルデンダ。(兵庫県養父市・渓流畔の岩場 2015.4/30)
渓流畔の緑色岩系の多湿な岩場に多数のツルデンダが着生していた。
同所的にシシガシラ、ヤマイヌワラビ、ヒロハヤブソテツ、ショウジョウスゲ、ミヤマカンスゲ、アカソ、ウワバミソウ、ヤマブキショウマ、ダイモンジソウ、
イワタバコなどが生育していた。

Fig.12 渓流の岩場に生育するツルデンダ。(神戸市・渓流の岩場 2015.10/8)
自生地は花崗岩地域だが、この谷筋ではあちこちの岩場でツルデンダが生育している。
ツルデンダは本来好石灰性のシダだが、変性作用で何らかの石灰分でも生じたのだろうか。
同じ岩場にはヒメカンスゲとイワタバコ程度しか着生していないが、他の岩場ではオウレンシダ、クジャクシダ、クサアジサイ、ウワバミソウ、
ヒメウワバミソウ、コアカソ、ジンジソウ、シラネセンキュウなどが見られた。


最終更新日:12th.Aug.2016

<<<戻る TOPページ