ツルカノコソウ | Valeriana flaccidissima Maxim. | ||
里山・林縁の植物 | オミナエシ科 カノコソウ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・植林地の林縁 2011.4/17) |
||
Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地の林縁 2013.4/26) 丘陵〜山地の里山の林縁や湿った疎林の林床、渓流畔に生育する多年草。 茎はやわらかく、高さ20〜40cm、花後ときに開花前から細長い走出枝をいちじるしく伸ばす。 根生葉は広卵形で、長さ1.5〜4cm、あるいは一対の小葉を基部にともなう。 茎葉は対生し、羽状腹葉または少数の小葉からなり、頂小片は大きく、縁に毛があり、波状の鋸歯縁となる。 花は散房花序につく。苞は線形。花冠は漏斗状、長さ2mm前後、ふつう5裂し、下部は筒状、白色、ときに紅色を帯びる。 雄蕊は3個、花柱は1個。痩果は広披針形、長さ2〜2.5mm、萼が変化した羽状の白色冠毛がある。 【メモ】 本種は兵庫県下では普通に見られるが、西宮市とその周辺地域では見られない。 近縁種 : カノコソウ ■分布:本州、四国、九州 ・ 台湾 ■生育環境:丘陵〜山地の里山の林縁、湿った疎林の林床、渓流畔など。 ■花期:4〜5月 |
||
↑Fig.3 茎葉。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6) 左は茎下部のもので、右に行くほど上方の茎葉となる。 ふつう羽状複葉で、頂小片は側小片よりも大きく、上方につくものほど長く伸びる。 小片の縁はふつう波状で、カノコソウのようなはっきりとした鋸歯はない。 |
||
↑Fig.4 走出枝。(兵庫県丹波市・植林地の林縁 2011.4/17) 花後ときに開花前から細長い走出枝をいちじるしく伸ばし、長い間隔で卵形の単葉を対生する。 |
||
↑Fig.5 開花したツルカノコソウ。(兵庫県丹波市・植林地の林縁 2011.4/17) 茎頂に散房花序をつくる。 |
||
↑Fig.6 ツルカノコソウの花。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6) 花冠は漏斗状、ふつう5裂し、下部は筒状、白色、ときに紅色を帯びる。雄蕊は3個、花柱は1個。つぼみは紅色を帯びている。 |
||
↑Fig.7 訪花したコハナバチの仲間。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2011.5/6) |
||
↑Fig.8 冠毛をつけた種子。(兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/25) 花後、子房がふくらむと同時に、子房頂端の萼が変化した環状の部分も次第に大きくなる。 この環状の部分には冠毛が内側に巻き込まれて収納されており、種子が成熟すると伸びて羽状の冠毛が現われる。 痩果は広披針形、長さ2〜2.5mmで、淡黄色〜黄褐色。 |
||
↑Fig.9 若い個体。(兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/25) 単葉の根生葉と、短い無花茎を持ち、翌年は花茎を上げる。周囲には別の個体の走出枝が見える。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 社寺のスギ林の林床に生育するツルカノコソウ。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2011.5/6) 下草の少ない社寺内のスギ林の湿った林下に多くのツルカノコソウが生育していた。 ツルカノコソウは日陰の林床から日の当たる林縁部まで広く生育しており、日陰ではムラサキケマン、ヤブタビラコ、ヨツバムグラ、ヤブニンジン、 ミヤマカタバミ、ミヤマフユイチゴ、ムロウテンナンショウとともに生育し、林縁部ではラショウモンカズラ、カキドオシ、レモンエゴマ、ドクダミ、 トキワイカリソウ、ヤエムグラ、ヨシノアザミ、コジュズスゲなどとともに生育している。 |
||
Fig.11 渓流畔の斜面に生育するツルカノコソウ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2011.5/4) 低山の渓流畔の斜面にツルカノコウソウが点々と生育していた。 ここではイノデ、ベニシダ、クサソテツ、ジュウモンジシダ、イヌシダ、ニシノホンモンジスゲ、ミヤマカンスゲ、ヤマスズメノヒエ、ショウジョウバカマ、 ミヤマハコベ、サワハコベ、ミヤマカタバミ、ヒメウズ、チャルメルソウ、オオバタネツケバナ、ヤマルリソウ、ミズタビラコ、ミゾホオズキ、ヤマサギゴケ、 カキドオシ、ヨシノアザミ、オニタビラコなどとともに生育している。 |
||
Fig.12 湿った林道脇に群生するツルカノコソウ。(兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/25) 湧水がにじむ湿った林道脇の斜面にツルカノコソウの群生が見られた。 斜面は破砕された堆積岩からなり、斜面の上にはスギの植林地があり、林縁部にはチャノキが植栽されている。 斜面にはメヤブマオ、アカソ、カテンソウ、ダイコンソウ、イチリンソウ、ドクダミ、ミズヒキ、クサイチゴ、ミヤマフユイチゴ、フキ、キバナアキギリ、 ジャニンジン、ヤマサギゴケ、シャガ、シケチシダなどが見られた。 |