ヤマサギソウ | Platanthera mandarinorum Reichb.f. ver. brachycentron (Franch. et Savat.) Koidz. |
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里山・草地の植物 兵庫県RDB Cランク種 |
ラン科 ツレサギソウ属 |
Fig.1 (兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.5/23) 日当たりよい草地に生育する多年草。 茎は紡錘状に肥厚する根から出て、高さ20〜40cm、やや稜がある。 葉は下部の1個が大きく、線状長楕円形〜長楕円形、長さ5〜11cm、幅1〜1.5cm、基部はわずかに茎を抱く。鱗片葉は2〜5個で、披針形。 花は黄緑色、10個内外の花が穂状につく。苞は披針形。 萼片は草質。背萼片は広卵形、長さ7〜12mm。側萼片は披針形で、背萼片より長い。 側花弁は広卵形、背萼片より少し長く、先はしだいに細くなる。 唇弁は舌状でやや肉質、長さ10〜15mm。距は後方に曲がり、長さ12〜15mm。 蕊柱は平たく、葯室は平行。葯隔は広く、両縁が前方に突出する。花粉塊は淡黄色、広倒卵形。 ツレサギソウ属は似たものが多く、以下に兵庫県内に生育する種の特徴をまとめた。 基本種であるハシナガヤマサギソウ(P. mandarinorum)は距は20mm以上で、その先端は下垂する。 キソチドリ(P. ophyrydioides var. monophylla)は高山の針葉樹林下に生え、萼片はやや膜質。背萼片は狭卵形、 側花弁は線状披針形で先は細く伸張する。 オオバノトンボソウ(P. minor)は林床に生え、下方の2〜3個の葉は大きく、茎には稜があり、翼が発達する。苞の縁に乳頭状突起がある。 オオヤマサギソウ(P. sachalinensis)は山地の林床に生え、オオバノトンボソウに似るが、葉に光沢があり、苞に乳頭状突起はなく、茎の翼の発達は悪い。 ジンバイソウ(P. florenti)はブナ帯の林床に生え、大きな葉はほぼ同大で、対生状に茎下部に相接してつく。 ツレサギソウ(P. japonica)は日当たりよい草地や湿った林床に生え、葉は上方のものは次第に小さくなり、花は白色で、距の長さ3〜4cm。 ミズチドリ(P. hologlottis)は山間の湿地に生え、ツレサギソウに似るが、距の長さ10〜12mm。 コバノトンボソウ(P. tipuloides var. nipponica)は日当たりよい湿地に生え、茎は細く繊細で、花は一方に偏ってつき、距は長さ12〜18mmで、後方に跳ね上がる。 近縁種 : ジンバイソウ、ミズチドリ、ツレサギソウ、キソチドリ、 オオバノトンボソウ、 コバノトンボソウ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 樺太、朝鮮半島。中国 ■生育環境:日当たりよい草地など。 ■花期:5〜7月 |
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↑Fig.2 下部の大きな葉。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.5/23) 茎は高さ20〜40cm、やや稜がある。 葉は下部の1個が大きく、線状長楕円形〜長楕円形、長さ5〜11cm、幅1〜1.5cm、基部はわずかに茎を抱く。 |
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↑Fig.3 鱗片葉。(兵庫県小野市・溜池土堤 2014.5/23) 鱗片葉は茎の下部〜中部につき、2〜5個で、披針形。 |
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↑Fig.4 花序。(神戸市・棚田の土手 2014.5/28) 花は10個内外が穂状につく。画像のものは生育状態がよく、多数の花をつけている。 |
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↑Fig.5 苞。(神戸市・溜池土堤 2011.5/21) 苞は披針形。花柄(子房)は180度捩れている。画像の花はつぼみの状態。 |
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↑Fig.6 開花中の花序。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.5/23) 距は後方に曲がり、ときに先は跳ね上がり、長さ12〜15mm。 |
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↑Fig.7 花の拡大。(兵庫県神戸市・溜池土堤 2014.5/28) 萼片は草質。背萼片は広卵形、長さ7〜12mm。側萼片は披針形で、背萼片より長く、後方に反り返っている。 側花弁は広卵形、背萼片より少し長く、先はしだいに細くなる。唇弁は舌状でやや肉質、長さ10〜15mm。 蕊柱は平たく、葯室は平行。葯隔は広く、両縁が前方に突出する。 |
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↑Fig.8 後方および側面から見た花。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.5/23) 距は後方に曲がり、側萼片は後ろに反り返っている。 |
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↑Fig.9 果実形成期。(神戸市・溜池土堤 2014.6/24) 未熟な刮ハ。花後、子房(花柄)の捩れは無くなり、直立〜斜上して熟す。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 刈り込まれた溜池土堤に生育するヤマサギソウ。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2014.5/23) 草刈りと野焼きがなされる溜池土堤の下部にヤマサギソウが点在していた。 丈の低いネザサの中、同所的にソクシンラン、ノギラン、イシモチソウ、コモウセンゴケ、フシグロ、オミナエシ、キキョウ、リンドウ、 イヌヨモギ、アキノキリンソウ、ニガナ、アキノタムラソウ、ヤマハッカ、ウンヌケ、ウンウケモドキ、オガルカヤ、イトハナビテンツキ、 ノテンツキ、アオスゲ、ノゲヌカスゲ、メアオスゲなどが生育している。 |
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Fig.11 溜池土堤に点在するヤマサギソウ。(兵庫県神戸市・溜池土堤 2014.5/28) 里山の棚田の途中にある溜池土堤にヤマサギソウが点在していた。 ここではネザサやススキに混じって、同所的にスギネ、ノギラン、オトギリソウ、ワレモコウ、ミツバツチグリ、オミナエシ、キキョウ、 ツリガネニンジン、リンドウ、ノアザミ、オカオグルマ、ニガナ、アキノキリンソウ、リュウノウギク、ヨモギ、アキノタムラソウ、ヤマハッカ、 タツナミソウ、ウツボグサ、アオスゲ、ノゲヌカスゲなどが生育している。 |