コウガイモ Vallisneria denseserrulata (Makino) Makino トチカガミ科 セキショウモ属
水生植物 > 沈水植物
Fig.1 (滋賀県・河川 2014.9/8)

湖沼、河川、水路などに生育する多年生の沈水植物。
葉は根生し、扁平な線形(リボン状)で長さ10〜60cm、幅5〜11mm、葉先は鋭頭または鈍頭、葉縁の鋸歯は他種に比べて目立つのがふつうだが、
鋸歯のサイズや密度は変異が大きく、目立たない鋸歯をまばらにしかつけないものもある。
葉腋部から走出枝を伸ばし、先端に新苗を付ける。走出枝には微細な突起があり、手で触るとざらつく。
雄花の雄蕊は2個。秋になると走出枝の先端に長さ1〜3cmのコウガイ状の殖芽を形成して越冬する。

類似する同属に以下のものがある。
セキショウモV. asiatica)は走出枝は平滑、鋸歯は葉先周辺で目立つが、中部以下ではごくまばらか、全く無い。
変種のヒラモ(var. higoensis)は大型で常緑、熊本市とその周辺に限って生育する。
ネジレモV. asiatica var. biwaensis)はふつう葉がらせん状にねじれ、走出枝は平滑、琵琶湖水系にのみ産する。
オオセキショウモV. gigantea)はアクアリウム用に輸入されたものが逸出したもので、葉幅は1〜3cmと広く、常緑、鋸歯はほとんど目立たない。
近似種 : セキショウモネジレモ、 ヒラモ、 オオセキショウモ

■分布:本州、九州 ・ 中国
■生育環境:湖沼、河川、水路など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では見られない。

Fig.2 全草標本。(滋賀県・河川 2014.9/8)
  葉は根生し、扁平な線形(リボン状)で長さ10〜60cm、幅5〜11mm。

Fig.3 走出枝。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  葉腋部から走出枝を伸ばし、先端に新苗を付ける。

Fig.4 走出枝の拡大。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  走出枝には微細な突起があり、手で触るとざらつく。これはコウガイモ特有のもので、他種には見られない特徴である。

Fig.5 コウガイモの葉先。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  葉先は鋭頭または鈍頭、鋸歯はネジレモやセキショウモよりも明瞭。

Fig.6 葉身下方の鋸歯。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  ふつう葉縁の鋸歯は基部近くまで明瞭であるが、鋸歯のサイズや密度は変異が大きく、目立たない鋸歯をまばらにしかつけないものもある。

Fig.7 雄株の基部についた雄花のつぼみ。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  基部の鞘内部に苞鞘に包まれた多数の雄花が詰まっている。左は鞘に包まれた苞鞘、右は苞鞘を露出させたもの。
  苞鞘は熟すと短い花茎が伸びて、鞘から現れ、雄花が熟すと苞鞘は破裂して、水面上に多数の雄花が浮かぶ。

Fig.8 走出枝先端に形成されつつある殖芽。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  秋になると走出枝の先端に長さ1〜3cmのコウガイ状の殖芽を形成して越冬する。これは近似の他種にはない特徴である。

生育環境と生態
Fig.9 河川に生育するコウガイモ。(滋賀県・河川 2014.9/8)
琵琶湖に流入する湧水が入る河川の下流部に、コウガイモの群生が見られた。
河川内には画像に見られるエビモ、クロモ、オオカナダモのほか、沈水性のホソバミズヒキモ、ヒロハノエビモ、オオササエビモ、
ササバモ、開花中のバイカモの切れ藻などが見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大滝末男, 1980. コウガイモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 182,183. 北隆館
角野康郎, 1994 トチカガミ科セキショウモ属. 『日本水草図鑑』 29〜31. 文一統合出版
角野康郎, 2014 トチカガミ科セキショウモ属. 『日本の水草』 104〜108. 文一統合出版
大井次三郎, 1982. トチカガミ科セキショウモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.6. pl.5. 平凡社
北村四郎, 2004 トチカガミ科セキショウモ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.393〜394. pl.104. 保育社
内山寛. 2001. トチカガミ科セキショウモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 173〜175. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. コウガイモ. 『近畿地方植物誌』 197. 大阪自然史センター

最終更新日:8th.Nov.2014

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