ネジレモ | Vallisneria asiatica Miki var. biwaensis Miki |
トチカガミ科 セキショウモ属 |
水生植物 > 沈水植物 |
Fig.1 (滋賀県・小河川 2008.9/8) |
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Fig.2 (滋賀県・湖沼 2014.9/8) 琵琶湖・淀川水系を中心とした湖沼、河川、水路などに生育する多年生の沈水植物。 セキショウモの変種でよく似るが、葉身はねじれ、葉縁の鋸歯は葉の下部まで全体にわたる。 その他の生活様式などはセキショウモと同様である。 琵琶湖には多産し、水深が1〜3m付近の砂質の水底に最も多く、水深6mぐらいの場所でも生育できる。 これに対して、コウガイモは泥質の水底を好む。 葉のねじれは水深の浅い場所に生えるものほど著しくなる。 琵琶湖では同属のコウガイモとともに、冬期に飛来する水鳥の重要な食料源となっている。 類似する同属に以下のものがある。 母種セキショウモ(V. asiatica)は葉身がほとんどねじれることなく、鋸歯は葉先周辺で目立つが、中部以下ではごくまばらか、全く無い。 同じく変種のヒラモ(var. higoensis)は大型で常緑、熊本市とその周辺に限って生育する。 コウガイモ(V. denseserrulata)はふつう葉縁の鋸歯がセキショウモよりも目立ち、走出枝には微細な突起があり、ざらつく。 秋には走出枝の先にコウガイ状の殖芽を形成して越冬する。 オオセキショウモ(V. gigantea)はアクアリウム用に輸入されたものが逸出したもので、葉幅は1〜3cmと広く、常緑、鋸歯はほとんど目立たない。 近似種 : セキショウモ、 ヒラモ、 コウガイモ、 オオセキショウモ ■分布:滋賀、京都、大阪の2府1県 琵琶湖・淀川水系の固有種。 ■生育環境:湖沼、河川、水路など。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では見られない。 |
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↑Fig.3 雌株の全草標本。(滋賀県・湖沼 2011.9/28) 水深1.2m付近に生育していたもので、水深にあわせて長く花茎が伸びている。 |
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↑Fig.4 葉身の下部に見られる鋸歯。(滋賀県・小河川 2008.9/8) ネジレモの葉身には葉先から基部まで、鋸歯が明瞭に見られる。セキショウモには葉身下部にこのような明瞭な鋸歯はない。 |
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↑Fig.5 雄株の基部から出た雄花の苞鞘。(滋賀県・小河川 2008.9/8) 雄花は短い花茎を出し、苞鞘内に収納されている。雌花のように水面までに達するような長い花茎は持たない。 |
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↑Fig.6 雄花苞鞘の縦断面。(滋賀県・小河川 2008.9/8) 苞鞘内には黄白色の多数の雄花の蕾が詰まっている。 |
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↑Fig.7 水面に雌花を上げたネジレモ。(滋賀県・湖沼 2014.9/8) |
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↑Fig.8 雌花。(滋賀県・湖沼 2011.9/28) 雌株には水深にあわせて伸びた花茎の先に雌花がつく。雌花は子房下位で、子房は大部分が鞘に覆われる。 |
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↑Fig.9 雌花核心部。(滋賀県・湖沼 2011.9/28) 萼裂片を開いたところ。花柱は3個あり、毛状突起の多い柱頭は2岐する。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 湖岸の砂泥質の水底に群生するネジレモ。(滋賀県・湖沼 2011.9/28) 湖岸の遠浅の砂泥質の水底の水深80cm程度の場所に群生していた。 ちょうど開花期で、ネジレモは沢山の雌花を上げていた。同所的にヒロハノエビモが多産し、ホソバミズヒキモも多い。 |
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Fig.11 湧水起源の水路に群生するネジレモ。(滋賀県・水路 2011.9/28) 地元では「生水」と呼ばれる湧水起源の水路内の一画にネジレモが群生していた。 水路内にはナガエミクリ、ヤナギモ、センニンモ、エビモ、シャジクモが生育し、画像にはヤナギモが写っている。 この時期、琵琶湖の本体では多くのネジレモの開花が見られたが、ここでは水流が強いためか、花茎を出しているものはなく、 もっぱら地下茎を伸ばして栄養繁殖しているようである。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980. セキショウモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 180,181. 北隆館 角野康郎, 1994 トチカガミ科セキショウモ属. 『日本水草図鑑』 29〜31. 文一統合出版 角野康郎, 2014. トチカガミ科セキショウモ属. 『日本の水草』 104〜108. 文一統合出版 大井次三郎, 1982. トチカガミ科セキショウモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.6. pl.5. 平凡社 北村四郎, 2004 トチカガミ科セキショウモ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.393〜394. pl.104. 保育社 内山寛. 2001. トチカガミ科セキショウモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 173〜175. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. ネジレモ. 『近畿地方植物誌』 197. 大阪自然史センター 浜端悦治. 2005. 琵琶湖の沈水植物群落. 琵琶湖研究所記念誌 22:105〜119. 最終更新日:8th.Nov.2014 |