スブタ Blyxa echinosperma  (Clarke) Hooker トチカガミ科 スブタ属
水生植物 > 沈水植物  環境省絶滅危惧U類(VU) 兵庫県RDB Cランク種
Fig.1 (兵庫県丹波市・休耕田 2010.10/7)

Fig.2 (兵庫県小野市・溜池 2011.9/19)

主に水田、流れの緩やかな用水路、溜池などで沈水状態で生育する1年草。
茎はきわめて短く、葉はほぼ根生する。葉は線形で鋭尖頭、長さ10〜30cm、幅3〜9mm、縁に細鋸歯がある。
夏から秋にかけて、葉腋から1個の両性花を出し、水面上で白色の小さな花を咲かせる。
花柄基部は膜質円筒形の苞鞘につつまれる。花弁は3個で白色、線形。
果実は線形の筒状、長さ2〜4cm(花柱部のぞく)、中に多数の種子が縦に並ぶ。
種子は紡錘形で長さ1.5〜2mm、表面に突起があるほか、ふつう両端に尾状突起がある。

ヤナギスブタB. japonica)やセトヤナギスブタB. alternifolia)は有茎であることで区別は容易である。
これに対しマルミスブタB. aubertii)は外形はほぼスブタと同様で、種子に尾状突起がないものである。
スブタ、マルミスブタともに水田雑草であったが除草剤や環境改変に弱く、現在ではほとんど見かけない。
近似種 : マルミスブタ、 セトヤナギスブタヤナギスブタ
関連ブログ・ページ 『京都の棚田で見られたスブタ属3種』

■分布:アジア東部、インド、スリランカ、オーストラリア
■生育環境:水田・用水路・溜池など、特に里山環境を良好に残す地域に多い。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:西宮市内では未確認。県下では播磨・摂津・丹波地方に生育する。

Fig.3 全草標本。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.10/7)
  茎はきわめて短く、葉はほぼ根生する。

Fig.4 葉の拡大。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.10/7)
  葉は線形で、柔らかく、縁には細鋸歯がある。

Fig.5 花茎を上げた個体。(兵庫県小野市・水田の減反地 2011.9/19)
  花柄は葉腋から出る。花弁は白色線形で3個あるが、画像のものは降雨のため完全に開いていない。
  花弁の長さは約13mm。雄蕊3個。花柱は3岐する。

Fig.6 果実。(京都府・棚田の水田中 2013.10/11)
  果実は線形筒状、長さ2〜4cm、径1.5〜2mmで、長さ2〜5.5cmの苞鞘に包まれ、線形の花柱が果実の先に宿存する。

Fig.7 切り開いた果実。(京都府・棚田の水田中 2013.10/11)
  種子は果実内部に縦に密に並んでいる。

Fig.8 典型的なスブタの種子。(京都府・棚田の水田中 2013.10/11)
  種子は紡錘形で長さ1.5〜2mm、表面に突起があり、両端に長くのびる尾状突起がある。

Fig.9 種子の変異。(長崎県・棚田の水田中 2009.10/4)
  同一果実内でも尾状突起の発達具合の悪いものがあり、変異が多い。これは特に尾状突起の発達の悪いもの。
  その形状はセトヤナギスブタの種子と酷似しているが、やや小さい。
  また、両端が丸みを帯びず、尾状突起がわずかにあるため、マルミスブタとは区別される。

Fig.10 尾状突起の長大な種子。(兵庫県加西市・溜池 2011.11/6)
  同じ溜池では突起の短い種子をつくる個体も多いため、変異の範疇だと思うが、このような種子が生じる要因はよく解らない。

Fig.11 水田で生育する個体。(長崎県・棚田の水田中 2009.10/4)
  水深の浅い水田では小型の個体が密生していることが多い。

生育環境と生態
Fig.12 休耕田の水路内に生育するスブタ。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.10/7)
かなり経年した谷津奥の休耕田の素掘りの排水路内で多くの個体が生育していた。
水路内にはヤナギスブタ、ホッスモ、キクモ、ミズハコベ、コナギ、オオハリイ、エゾノサヤヌカグサ、ムツオレグサ、チゴザサなどの生育が見られる。
2009年度には見られなかったが、2010年になってヤナギスブタとともに出現した。

Fig.13 水田の排水路内で生育するスブタ。(兵庫県三田市・水田 2011.9/17)
豊富な水田雑草が生育する水田の素掘りの排水路内に多数の個体が見られた。
排水路内は水田よりも水深が深いためか、沈水植物が多く見られ、ヒロハトリゲモ、ヤナギスブタ、ミズオオバコなどとともに生育していた。

Fig.14 溜池に生育するスブタ。(兵庫県小野市・溜池 2011.9/19)
水中画像。溜池の水深のある場所に生育するものは、水深にあわせて葉身が伸びて長さ40cmを超えることがある。
水田に生育するスブタばかりを見慣れた眼には、まるで別種のように見えた。
近隣の水田に生育しているものは開花中であったが、ここで生育しているものはまだ花茎を上げていなかった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
牧野富太郎, 1961 スブタ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 700. 北隆館
大滝末男, 1980. スブタ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 184〜185. 北隆館
角野康郎, 1994. トチカガミ科スブタ属. 『日本水草図鑑』 p.24〜25. pl.26. 文一統合出版
山下貴司, 1982. トチカガミ科スブタ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.4〜5. pls.3〜4. 平凡社
内山寛. 2001. トチカガミ科スブタ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 174〜175. 神奈川県立生命の星・地球博物館
北村四郎, 2004 トチカガミ科スブタ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.395〜396. pl.104. 保育社
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. スブタ. 『六甲山地の植物誌』 213. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. スブタ. 『近畿地方植物誌』 197. 大阪自然史センター
角野康郎・中村俊之・高野温子 2007. スブタ. 兵庫県産維管束植物9 トチカガミ科. 人と自然18:86. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:13th.Oct.2013

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