フジウロコゴケ | Chiloscyphus polyanthus (L.) Corda | ウロコゴケ科 フジウロコゴケ属 |
抽水〜沈水植物・苔類 |
Fig.1 (西宮市・湧水泉 2012.11/12) |
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Fig.2 (西宮市・湧水泉 2012.11/12) 湿岩上、流水中、湧水泉などに群生する苔類。 草体は緑色〜緑褐色。茎は長さ6cmになる。仮根は腹葉の基部から出る。 葉は重なり、丸みのある方形または卵形、円頭または少し凹頭、全縁。葉身細胞は大きく、薄膜でトリゴンはない。 腹葉は茎の幅よりも狭く、ふつう1/2まで2裂し、裂片は細長くとがり、ときに両側に1歯がある。 雌雄異株。雌花はごく短い側枝につき、苞葉は葉より著しく小さく、浅2裂し、腹苞葉は2裂する。 花披は3角柱形で、口部は広く、深3裂し、裂片は歯で縁取られる。 雄花は茎の途中につき、苞葉は数対、葉に似るが、背縁基部にふくれた小裂片をつけ、造性器を入れる。 近似種 : マルバハネゴケ、 ヒロハツボミゴケ、 サワクサリゴケ 関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 冬に見るコケ2 水辺近くのコケ 冬の水辺 ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 北半球の温帯。 ■生育環境:湿岩上、流水中、湧水泉など。 ■西宮市内での分布:1ヶ所で確認。湧水泉中に群生している。 |
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↑Fig.3 流水中のもの。(兵庫県篠山市・林縁の細流内 2013.2/6) 茎は不規則に分枝し、側枝は細流内の微地形によって、さまざまな長短が生じている。 丸みの強い葉はほぼ対生してつき、前後が一部重なり合うことが多い。 |
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↑Fig.4 止水に近い場所のもの。(西宮市・湧水泉 2014.2/3) 止水中の水底近くで浮遊して生育しているものは分枝は不規則でも、扇状に広がって生育してゆく。 このような状態で生育しているものは、茎腹側にほとんど仮根を持たない。 |
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↑Fig.5 背面からの拡大。(兵庫県篠山市・林縁の細流内 2013.2/6) |
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↑Fig.6 腹面からの拡大。(兵庫県篠山市・林縁の細流内 2013.2/6) 左側の2つの節からは仮根が出て、腹葉はそれにさえぎられている。 右側2つの節(葉の基部)からは仮根が出ておらず、小さな腹葉が見える。 |
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↑Fig.7 葉。(西宮市・林縁の疎水 2015.2/12) 葉は縦に広くつき、長さ幅ともに1〜1.5mm、丸みのある方形または卵形、円頭または少し凹頭、全縁。 |
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↑Fig.8 腹葉。(西宮市・林縁の疎水 2015.2/12) 腹葉は茎の幅よりも狭く、ふつう1/2まで2裂し、裂片は細長くとがり、ときに両側に1歯がある。 |
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↑Fig.9 葉身細胞。(西宮市・林縁の疎水 2015.2/12) 葉身細胞は大きく長さ16〜40μ、薄膜でトリゴンはない。細胞内には2〜数個の油体が入っている。1目盛は1.6μ。 |
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↑Fig.10 細胞表面。(西宮市・林縁の疎水 2015.2/12) 図鑑には平滑とあったが、表面には多数のベルカらしきものが見られたが、あるいは単に葉緑体の見間違いなのか。 |
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↑Fig.11 凾上げたフジウロコゴケ。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27) 水際で陸生している雌株は凾上げる。 |
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↑Fig.12 花披。(兵庫県篠山市・溜池跡湿地 2015.3/8) 花披は3角柱形で、口部は広く、深3裂し、裂片は歯で縁取られる。 |
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↑Fig.13 弾糸と胞子。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27) 弾糸は2らせんで長さ約200μ。 |
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↑Fig.14 胞子。1目盛=1.6μ。(兵庫県篠山市・湧水地 2015.2/27) 胞子は球形、径15μ内外、黄緑色、表面は平滑。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.15 湧水泉内で群生するフジウロコゴケ。(西宮市・湧水泉 2012.11/12) かつては飲料水や食材洗浄にも使用されていた湧水であるが、上部に道路が敷かれ、湧水量が減少し飲料にも適さなくなったという。 水中内はほぼフジウロコゴケの純群落が形成され、わずかにヨツメモのような緑藻の群体が見られます。 |
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Fig.16 疎水の水際に生育するフジウロコゴケ。(西宮市・林縁の疎水 2015.2/12) 渓流から水を引いた山際を流れる疎水内の壁面に点々と小群生が見られた。一部では湧水が流入している。 疎水内では他にホソバミズゼニゴケ、ナガサキホウオウゴケ、ホソホウオウゴケ、ヒロハツボミゴケ、アオハイゴケなどが生育している。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.17 清流に生育するフジウロコゴケ。(兵庫県篠山市・小川 2013.2/6) 丹波帯の山塊から緩やかに流下する小川に生育しており、場所によっては層状に群生が見られた。 この渓流内には他にもケチョウチンゴケ、ツルチョウチンゴケ、サワクサリゴケなどが生育していました。 ナガレホトケドジョウの魚影の多い小川でした。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻善之助, 1972. ウロコゴケ科フジウロコゴケ属. 岩槻善之助・水谷正美『原色日本蘚苔類図鑑』 p.305〜306. Fig.158. 保育社 最終更新日:9th.Mar.2015 |