サワクサリゴケ Lejeunea aquatica  Horik. クサリゴケ科 クサリゴケ属
抽水〜沈水植物・苔類
Fig.1 (兵庫県篠山市・渓流畔 2013.2/7)

Fig.2 (兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)

渓流や湧水地の湿岩上や流水中に群生してマットをつくる苔類。
緑色でやや光沢がある。茎は長さ1〜4cm。葉の背片は相接し、卵形、全縁、円頭〜鈍頭。
腹片はきわめて小さく、5〜15細胞。葉細胞は20〜40μ、薄膜で、トリゴンは小さい。
油体は1細胞に10〜25個、円〜楕円形、3〜10μ、単粒。
腹葉は離在し、幅は茎の2〜3倍、ハート形、横に長く、1/2まで2裂する。

クサリゴケ属中で水中に生育するものは本種のみ。生育環境や形態の似た苔類に以下の2種がある。
ヒロハツボミゴケ(Jungermannia exsertifolia)は暗緑色〜暗褐色のマットをつくり、葉は茎に斜めに付き長さ1〜1.4mm、腹葉はない。
フジウロコゴケ(Jungermannia exsertifolia)は緑色のマットをつくり、葉の長さ1〜1.5mm、腹葉は長3角形で茎よりも狭く、2裂する。
近似種 : ヤマトコミミゴケ、 カマハコミミゴケ、 キコミミゴケ、 オガサワラクサリゴケ、 コミミゴケ、 コクサリゴケ、 コクサリゴケモドキ、
     ヒロハツボミゴケフジウロコゴケ
関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 冬に見るコケ2 水辺近くのコケ

■分布:本州(静岡県以西)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾
■生育環境:渓流、湧水地など。
■西宮市内での分布:北部の小渓流などに見られる。

Fig.3 全体。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)
  緑色でやや光沢がある。茎は長さ1〜4cm。

Fig.4 苔体の拡大。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)
 葉と茎を合わせた幅は約1.3mm。背片は相接してつく。

Fig.5 葉の背片。1目盛=26μ。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)
  背片は長さ0.4〜0.6mm、卵形、全縁、円頭〜鈍頭。

Fig.6 腹片(矢印)はきわめて小さく、5〜15細胞。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)

Fig.7 苔体の腹面。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)
  茎には腹葉が離れて並び、幅は茎の2〜3倍、ハート形、横に長く、1/2まで2裂する。

Fig.8 葉身細胞。1目盛=1.6μ。(兵庫県篠山市・湧水地の細流中 2015.2/27)
  葉身細胞は20〜40μ、薄膜で、トリゴンは小さい。油体は1細胞に10〜25個、円〜楕円形、3〜10μ、単粒。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 棚田脇の沢に生育するサワクサリゴケ。(西宮市・小渓流 2015.3/5)
山際から流れ出し棚田を通る沢の水中の岩の表面に着生している。
比較的流れが速いため、小さな転石には着生しておらず、流されることのない大きな転石や基岩に着生が見られた。
沢の周辺にはタニガワスゲ、タチスゲ、マツバスゲ、ヤチカワズスゲ、マンゴクドジョウツナギ、コブナグサ、チゴザサ、セキショウ、ショウジョウバカマ、
ヤマラッキョウ、サワオトギリ、サワギキョウ、リンドウ、サワシロギク、サワヒヨドリ、キセルアザミなどが生育している。
沢は棚田下部ではコンクリートで護岸された水路となるが、そこでは底面をヒロハツボミゴケが覆っていた。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 山際の細流中にフジウロコゴケとともに生育するサワクサリゴケ。(兵庫県篠山市・細流中 2013.2/7)
画像上の苔体の大きなものはフジウロコゴケ、下の礫に着生しているものはサワクサリゴケ。大きさの違いが解る。
サワクサリゴケは比較的流量の一定した、湧水の流入が見られるような水辺環境によく見られる。
ここでは細流内に上記フジウロコゴケの他、オオバチョウチンゴケ、ケチョウチンゴケなどとともに流水中に生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
岩槻善之助, 1972. ツボミゴケ科. 岩槻善之助・水谷正美『原色日本蘚苔類図鑑』 p.290〜297. PL.39. Fig.152〜154. 保育社

最終更新日:7th.Mar.2015

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