イチョウウキゴケ (イチョウゴケ) |
Ricciocarpus natans (L.) Corda | ウキゴケ科 イチョウウキゴケ属 |
浮遊または湿生植物 環境省準絶滅危惧(NT) |
Fig.1 (兵庫県三田市・水路 2007.3/22) |
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Fig.2 (兵庫県小野市・ため池 2011.7/12) 水田や休耕田、溜池の水面に群生して浮遊生活するほか、湿地や冬期の湿田上にも生育する小型の1年草。 小型の苔類で、葉状体はややふくらんでスポンジ状、外形はイチョウの葉に似て扇状半円形、左右の長さ10〜15mm、前後幅4〜10mm、 厚さ0.1〜0.2mm、縁は鈍頭、表面は濃緑色または青緑色を帯び、ときに多少赤味を帯びる。 裏面は紫紅色。表面は丸みをもち、気孔が分布し、2叉状に分岐する亀裂がある。 浮水性の葉状体の裏面には紫色のリボン状で柔らかく、縁に微鋸歯のある長さ5〜15mmの鱗片が多数下垂して仮根のように見える。 泥土上に生育するものは鱗片は小さく、白色の仮根を多数生じる。 葉状体の断面には多数の気室があり、各気室の境は1層の細胞からなる。また、気孔は単純で小さい。 雌雄異株で、稀に雌器・雄器が葉状体内に埋もれて生じる。 胞子体は葉状体の中央部に埋没して生じ、胞子は暗褐色で球状、径約50μである。 近似種 : カンハタケゴケ、 ハタケゴケ、 コハタケゴケ、 カヅノゴケ(ウキゴケ) ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 世界各国。 ■生育環境:水田、休耕田、用水路、溜池など。 ■西宮市内での分布:中・北部の棚田や用水路などに散発的に見られ、やや少ない。 |
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↑Fig.3 葉状体。(神戸市北区・溜池 2009.1/29) 2叉分岐して中央には溝があり、成長すると溝の部分は亀裂して分裂し、殖える。 表面は丸みを帯び、粒状の隆起を密布し、気孔がある。縁からは紫褐色の仮根状の鱗片がはみ出して見える。 |
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↑Fig.4 鱗片の拡大。(神戸市北区・溜池 2009.1/29) 鱗片は長さ5〜15mmで、縁には微鋸歯がある。 |
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↑Fig.5 発生初期の葉状体。(西宮市・湿田中の水路 2006.9/22) イチョウウキゴケは夏期にはあまり見かけることがなく、秋に入ってから発生することが多い。 発生初期のものは小さく、葉状体中央の条線もまだ2叉分岐していない。 画像中央の抽水状態の草体はヤノネグサ。 |
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↑Fig.6 陸生形に移行途上のイチョウウキゴケ。(兵庫県三田市・湿田 2007.3/10) |
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↑Fig.7 陸生形。(西宮市・湿田 2006.10/5) 最初はイチョウウキゴケとは別の種であると思っていたが、別の年に同じ場所で浮遊形と陸生形さらに移行途中のものが見られ、 画像のものがイチョウウキゴケの陸生形であることが判った。 陸生するものは浮遊するものよりも、葉状体は縦に長くのび、分岐するまでの距離が長く、幾分のっぺりとした印象を受ける。 紫色の鱗片は葉状体の端からほとんどはみ出さない。 |
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↑Fig.8 冬期の陸生形。(兵庫県三田市・湿田 2009.1/24) 湿田にも氷が張る時期になると、低温に耐えれず赤紫色に紅葉し、やがて枯れる。 |
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↑Fig.9 陸生形の腹面。(兵庫県三田市・湿田 2009.1/24) 鱗片はほとんど消失していたが、仮根の発根は見られなかった。まだ陸生形に移行途上のものだろう。 |
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↑Fig.10 陸生形の横断面。(兵庫県三田市・湿田 2009.1/24) 維管束組織は無く、多数の気室を持つスポンジ状。胞子体らしきものは見当たらなかった。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.11 素掘りの排水路内に生育するイチョウウキゴケ。(西宮市・水田の素掘りの水路 2015.4/21) 谷津に広がる水田内の素掘り排水路内でイチョウウキゴケが生育していた。水面上は浮遊するものと、陸生するものが見られた。 水路内にはスギナ、ムツオレグサ、チゴザサ、ケキツネノボタン、セリ、コモチマンネングサ、ミゾカクシ、ニガナが生育している。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.12 湿地からの水路を覆いつくすイチョウウキゴケ。(兵庫県三田市・水路 2007.3/22) |
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Fig.13 休耕田でウキクサ類とともに見られたイチョウウキゴケ。(滋賀県高島市・休耕田 2007.11/4) |
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Fig.14 中栄養な溜池に生育するイチョウウキゴケ。(兵庫県篠山市・溜池 2013.8/14) ヒシ、ガマ、マコモ、アシ、キシュウスズメノヒエ、チゴザサが生育する中栄養な溜池のアシの合間にミズユキノシタとともに生育していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 牧野富太郎, 1961 イチョウゴケ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 905. 北隆館 水谷正美, 1972. ウキゴケ科イチョウウキゴケ属. 岩槻善之助・水谷正美・服部新左 『原色日本蘚苔類図鑑 』 p.367. pl.48. 保育社 大滝末男, 1980 イチョウウキゴケ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 278,279. 北隆館 秋山弘之, 1998. 無性的に繁殖する蘚苔類の遺伝的多様性 -ウキゴケとイチョウウキゴケの事例から-. 蘚苔類研究 7(5):152〜160. 最終更新日:20th.June.2015 |