カンハタケゴケ | Riccia nipponica Hatt. | ウキゴケ科 ウキゴケ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市一ヶ谷町・水田 2007.1/2) 稲刈り後の水田や、冬期の管理休耕田、湿った庭先の土上で見られる苔類。 葉状体は長さ1〜2cm、幅2.5〜5mm、密に2又を繰り返して円形のロゼットをつくる。 横断面は両端が丸く、幅は厚さの4〜6倍、気室は2〜3層。腹鱗片は透明で小さい。 陸生状態のイチョウウキゴケに似るが、葉状体の中央に明瞭な脈はなく、肉厚で、表面には凹凸があり、内部に沢山の気室を持つ。 凵i胞子嚢)は葉状体の中に埋没していて、濃褐色〜黒色。 弾糸はなく、胞子は黄褐色〜褐色、径70μ、表面は網目状。 乾いた水田では見られず、湿った水田で発生し、ときに大規模なコロニーをつくることがある。 近似種 : ハタケゴケ、 イチョウウキゴケ ■分布:本州(近畿以西)、四国、九州 ■生育環境:冬期の水田、管理休耕田、湿った庭先など。 ■発生期:10〜2月 ■西宮市内での分布:市内平地部の水田と北部の休耕田で確認。 市内における分布は広いと思われるが、発生はかなり偶発的で、ハタケゴケのように普通には見られない。 |
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↑Fig.2 雨後のカンハタケゴケはキラキラと光って美しい。(西宮市一ヶ谷町・水田 2007.1/2) |
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↑Fig.3 葉状体の腹面。(兵庫県三田市・休耕田 2008.2/11) 腹面には透明な細長い仮根が生える。 |
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↑Fig.4 葉状体の横断面。(兵庫県三田市・休耕田 2008.2/11) 横断面は両端が丸く、幅は厚さの4〜6倍。 |
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↑Fig.5 葉状体背面の拡大。(西宮市一ヶ谷町・水田 2007.1/5) 表面には凹凸があり、黒い凵i胞子嚢)が透けて見える。 |
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↑Fig.6 葉状体の基部寄りに埋もれた凵B(兵庫県三田市・休耕田 2008.2/11) ウキゴケ科の苔類は雄器、雌器ともに葉状体の中に埋まったままで、凾燉t状体の中に包まれて成熟する。 |
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↑Fig.7 凾ノ詰まった胞子。(西宮市一ヶ谷町・水田 2007.1/5) |
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↑Fig.8 葉状体から取り出した凵i上)と、胞子(下)。(兵庫県三田市・休耕田 2008.2/11) 凾ヘ球形、暗褐色。 胞子は半球形で、黄褐色。 胞子は葉状体が枯れて腐敗することによって散布される。 |
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↑Fig.9 胞子の拡大。(兵庫県三田市・休耕田 2008.2/11) 古い廉価な顕微鏡なので甚だ見苦しく解りづらいが、胞子の表面には刺状の突起がある。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.10 冬期の湿った水田でコロニーをつくるカンハタケゴケ。(西宮市一ヶ谷町・水田 2007.1/5) 市内平野部の水田で、一部の場所が湿り気が多く、そこに見られたもの。 水田内にはチョウジタデ、ヒレタゴボウ、ホソバヒメミソハギ、アゼナ、アメリカアゼナ、ヌカキビ、イヌガラシ、スカシタゴボウなどが生育。 この水田は2009年に埋め立てられ、現在では駐車場となっており、往時の面影はない。 |
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Fig.11 休耕田の裸地で他のコケ類と混生するカンハタケゴケ。(西宮市山口町・休耕田 2008.2/29) 生育地は北部の休耕田で、アゼガヤ、ホタルイ、カワラスガナ、タマガヤツリ、マツバイ、ヒデリコ、キカシグサ、ミゾハコベなどが生育する。 冬期、休耕田の大部分が密生するスズメノカタビラに覆われているが、一部にできた裸地ではハタケゴケとともにカンハタケゴケが見られた。 両種の葉状体の大きさの違いがよく解る。 ヒロクチゴケは刈り取り後の水田などで最も普通に見られる蘚類。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 水谷正美, 1972. ウキゴケ科ウキゴケ属. 岩槻善之介・水谷正美 『原色日本鮮苔類図鑑』 368〜369. 保育社 最終更新日:3rd.Jan.2011 |