ムラサキコウキクサ Lemna japonica  Landolt ウキクサ科 コウキクサ属
浮遊植物
Fig.1 (西宮市・用水路 2015.3/25)

Fig.2 (西宮市・湧水地 2015.3/25)

湖沼、溜池、水路などに見られる小型で常緑性の浮遊植物。
葉状体は広楕円形で、やや厚味があり、葉脈は3本で不明瞭、長さ3〜4mm、幅2〜3mm。
全体または根のつけ根を中心に赤紫色を帯びるが、環境や季節によっては着色しない場合があり、その場合はコクキクサとの区別は難しい。
根鞘基部に翼はなく、根端は鈍頭。冬期は常緑で越冬する。
コウキクサが日本海側を中心に分布するのに対し、本種の分布の中心は太平洋側にある。

アオウキクサL. aoukikusa)は根が1本だが、根端は鋭頭、根鞘基部に翼がある。1年草で、冬には消える。
アオウキクサの亜種ホクリクアオウキクサ(subsp. hokurikuensis)は日本海側の多雪地に見られ、根の先端部がらせん状に捩れることが多く、冬期は水中に沈む。
ナンゴクアオウキクサL. aequinoctialis)はコウキクサに酷似するが、根端は鋭頭、根鞘基部には翼がある。
ヒナウキクサL. minuta)は根端は鈍頭、根鞘基部に翼はなく、葉脈は1脈。長さ1.5〜2mm。冬期は葉状体のまま越冬。
コウキクサL. minor)はムラサキウキクサよりわずかに大きく、紫色とはならない。常緑越冬する。
キタグニコウキクサL. turionifera)はコクキクサに似るが、中央脈の数個の突起が顕著で、裏面が鮮赤紫色を帯び、冬期は水没する。北海道。
イボウキクサL. gibba)は葉状体裏面に著しい浮嚢が発達し、根端は鈍頭。
チリウキクサL. valdiviana)はヒナウキクサよりも大きく、葉状体はときに湾曲し、長さ2〜4mm、幅1〜2mm。冬期は一部の葉状体が水没する。
近似種 : アオウキクサ、 ホクリクアオウキクサ、 ナンゴクアオウキクサ、 ヒナウキクサコウキクサ、 イボウキクサ、 チリウキクサ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 東アジア。
■生育環境:湖沼、溜池、水路、湧水地など。
■西宮市内での分布:市内では中〜北部の水路内などに見られる。

Fig.3 全草標本。(西宮市・湧水地 2015.3/25)
  葉状体は広楕円形で、やや厚味があり、葉脈は3本で不明瞭、長さ3〜4mm、幅2〜3mm。

Fig.4 表面(左)と裏面(右)。(西宮市・湧水地 2015.3/25)
  全体または根のつけ根を中心に赤紫色を帯びることが特徴。
  しかし環境や季節によっては着色しない場合があり、その場合はコクキクサとの区別は難しい。

Fig.5 3脈あるが弱く、不明瞭。(西宮市・湧水地 2015.3/25)

Fig.6 葉状体の横断面。(西宮市・湧水地 2015.3/25)

Fig.7 葉状体表面の気孔。(西宮市・湧水地 2015.3/25)

Fig.8 根端。(西宮市・湧水地 2015.3/25)
  根端は長い根嚢に包まれ、鈍頭。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 用水路脇の滲み出しに生育するムラサキコウキクサ。(西宮市・湧水地 2015.3/25)
宅地化が進んだ丘陵部の谷間の一画に、ひっそりと取り残されたような農耕地がある。
丘陵の谷間であるために湧水が多く、溝にはいつも水が見られ、用水路脇などから湧水の滲み出しが多く見られる。
ムラサキコウキクサはこれらの溝や滲み出し部、湿地と化した休耕田などに生育している。
画像は用水路脇の滲み出し部にヤナギゴケやコツクシサワゴケとともに生育しているもの。

Fig.10 水田内の素掘りの排水路に生育するムラサキコウキクサ。(西宮市・水田 2015.4/3)
タガラシ、セリ、ムシクサ、スズメノテッポウ、ムツオレグサ、コウガイゼキショウの生育する素掘り排水路内で点々と見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎. 1994. ウキクサ科. 『日本水草図鑑』 72〜77. 文一統合出版
角野康郎. 2014. サトイモ科(ウキクサ科)コウキクサ属(アオウキクサ属). 『日本の水草』 58〜66. 文一統合出版
大滝末男. 1980. ウキクサ科. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 128〜139. 北隆館
角野康郎. 2003. ウキクサ科. 『日本の帰化植物』 pl.154. p.291〜292. 平凡社
内山寛. 2001. ウキクサ科アオウキクサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 387〜388. 神奈川県立生命の星・地球博物館
角野康郎. 2008. ウキクサ科. 兵庫県産維管束植物10. 人と自然19:221. 兵庫県立・人と自然の博物館


最終更新日:4th.Apr.2015

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