アシカキ | Leersia japonica Makino | イネ科 サヤヌカグサ属 |
湿生〜抽水植物 |
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) |
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Fig.2 (兵庫県三木市・溜池 2011.7/12) 溜池や小河川、用水路の浅水中に群生する浮水性の多年草。 茎葉はざらつき、茎は稈状、径1.5〜2mm。茎はやや細く節があり、茎の基部は倒伏して水面に浮かびながら生育する。 また、節からひげ根を出して分枝する。茎の上方は節から曲がって斜上し、高さ30〜80cm、ときに1mに達する。 節には長さ1〜2mmある白毛の逆毛が密生する。 葉は互生し広線形で扁平、鋭尖頭、5〜6個の縦脈があり、表面は逆向きにざらつく。 葉身は長さ5〜15cm、幅5〜10mm、葉鞘は長さ5〜7cm、上部は斜上または水平。 花序はイネの穂に似て円錐状の複穂状花序。長さ8〜12cm、まばらに斜出する8〜12個の枝が出る。 花穂は単純で花序枝には約10個の小穂が互生、小穂は花序枝に圧着し淡緑白色ときに赤紫色を帯び、扁平は舟形で鋭頭、 基部は鈍頭で半切り形、長さ4.5〜6mm、幅1.5〜1.7mm。 小穂は1花からなり、苞穎は退化して痕跡だけが残る。外穎の側脈は無毛で平滑、外穎と内穎の縁に剛毛が1列に生える。 雄蕊6個、葯は長さ2.5〜3.5mm。子房は無毛、胚乳種子ができる。 近似種 : エゾノサヤヌカグサ、 サヤヌカグサ ■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:溜池や小河川、用水路など。 ■花期:7〜10月 ■西宮市内での分布:市内では確認できていない。 |
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↑Fig.3 標本。(兵庫県篠山市・溜池 2010.7/31) 茎は水中または水面上を長く這い、節から水中に発根する。 |
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↑Fig.4 花茎の様子。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) |
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↑Fig.5 花序。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) 小穂は花序枝の付け根付近からつく。 |
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↑Fig.6 花序のクローズアップ。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) 小穂は花序枝に嵌め込み状に1列でつく。小穂は赤味を強く帯びているが、淡緑色の個体もある。 |
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↑Fig.7 小穂の拡大。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) 小穂はサヤヌカグサに似るが、護頴の表面には毛がほとんど生えない。 |
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↑Fig.8 節には逆毛が密生する。(兵庫県三田市・溜池 2007.6/23) |
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↑Fig.9 葉鞘の口部付近。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) 葉舌は明瞭。葉耳は三角形。葉縁には下向きの粗い毛が生えて著しくざらつく。 |
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↑Fig.10 葉鞘表面に見られる下向きの小刺。(兵庫県三田市・溜池 2007.6/23) |
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↑Fig.11 成長期のアシカキ。(兵庫県三田市・溜池 2007.6/23) |
生育環境と生態 |
Fig.12 やや富栄養な溜池に生育するアシカキ。(兵庫県加西市・溜池 2008.10/12) 群生しているように見えるが、水際に生えた1株が匍匐茎を伸ばして広がったもの。 |
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Fig.13 大きな群落をつくるアシカキ。(兵庫県篠山市・溜池 2009.9/11) やや富栄養な溜池でヒシ、ヒメガマなどが見られたが、他種を圧倒してアシカキが大きな群落をつくっていた。 アシカキは山間の貧栄養な溜池から、平野部のやや富栄養な溜池にまで場所を選ばず広く生育するが、大きな群落は富栄養気味の溜池で見られる。 |
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Fig.14 用水路内に群生するアシカキ。(長崎県・用水路 2009.10/2) 棚田の間に掘られた素掘りの用水路内に群生が見られた。 アシカキは用水路や畦に生育することもあり、匍匐茎を伸ばして水田に侵入することがあり、水田雑草とされることがある。 ここのアシカキも水田に匍匐茎を伸ばして水田の水面を一部覆っていたので、雑草扱いされていることだろう。 水路内にはこの他にコバノウシノシッペイ、オオハリイ、ミズマツバ、ホッスモ、シャジクモ、ウキゴケ、イチョウウキゴケなどが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎,1982 イネ科サヤヌカグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.108〜109. pls.92〜93. 平凡社 北村四郎・村田源・小山鐡夫, 2004 イネ科サヤヌカグサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.342〜343. pl.88. 保育社 長田武正・長田喜美子, 1984 サヤヌカグサ・アシカキ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 pls.114. p.116. 保育社 大滝末男, 1980 アシカキ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 170〜171. 北隆館 角野康郎, 1994 イネ科サヤヌカグサ属. 『日本水草図鑑』 p.65. pl.67. 文一統合出版 藤本義昭. 1995. イネ科サヤヌカグサ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 140〜142. 藤本植物研究所 佐藤恭子. 2001. サヤヌカグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 262〜263. 神奈川県立生命の星・地球博物館 桑原義晴, 2008 サヤヌカグサ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.294〜299. pls.23. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アシカキ. 『六甲山地の植物誌』 232. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. アシカキ. 『近畿地方植物誌』 177. 大阪自然史センター 藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. アシカキ. 兵庫県産維管束植物7 イネ科. 人と自然19:188. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:6th.Oct.2014 |