エナシヒゴクサ Carex aphanolepis  Franch. et Sav. カヤツリグサ科 スゲ属 ヒメシラスゲ節
湿生植物
Fig.1 (兵庫県篠山市・湿った農道脇 2008.5/16)

Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地林床 2013.6/7)

湿地や湿った草地、低山の林縁などに生える多年草。
細長い匍匐枝を出して、まばらに群生する。基部の鞘は淡色。
葉は粉白を帯びず、淡緑色、幅2〜4mm。
有花茎は高さ20〜40cm。雄小穂、雌小穂ともに柄がきわめて短い。
頂小穂は雄性、長さ1.5〜3cm。側小穂は雌性で1〜3個つき、長さ7〜12mm、幅6〜7mm。
果胞は長さ3〜3.5mm、長卵形、無毛、嘴は短く、ヒゴクサのように花柱は宿存しない。
雌鱗片は鋭頭で、果胞よりも短く、淡緑色。雌蕊柱頭は3岐する。

ヒゴクサC. nipposinica)に似るが、雌小穂には明瞭な柄があることで区別できる。
近似種 : ヒゴクサヒメシラスゲ

■分布:北海道、本州、四国、九州、対馬 ・ 朝鮮半島
■生育環境:低地の湿地や湿った草地、低山の林縁など。
■果実期:5〜7月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。兵庫県下でも自生地は少ない。

Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・植林地林床 2013.6/7)
  有花茎や葉はややざらつき、紛白を帯びず淡緑色。

Fig.4 根茎と基部。(兵庫県篠山市・植林地林床 2013.6/7)
  地中に細長い匍匐根茎を多数だす。基部の鞘は淡褐色。

Fig.5 花序。(兵庫県篠山市・湿った農道脇 2008.5/16)
  頂小穂は雄性、側小穂は雌性で、側小穂には柄がない。
  画像のものは雌花開花直後のもので花糸があるが、熟すまで宿存しない。

Fig.6 苞葉。(兵庫県篠山市・植林地林床 2013.6/7)
  苞葉基部は鞘がない。最下の苞葉直下はヒメシラスゲのように急で顕著にくびれない。

Fig.7 雌小穂。(兵庫県篠山市・湿った農道脇 2008.5/16)
  雌鱗片は果胞よりも短く、鋭頭。果胞はふくらむ。

Fig.8 鱗片をつけた果胞。(兵庫県篠山市・湿った農道脇 2008.5/16)
  雌鱗片は果胞よりも短く、鋭頭。果胞はふくらむ。

生育環境と生態
Fig.9 湿った農道脇に群生するエナシヒゴクサ。(兵庫県篠山市・湿った農道脇 2008.5/16)
周辺にはケキツネノボタン、クサノオウ、ヨモギ、ヤブヘビイチゴ、オオジシバリなどが生育していた。

Fig.10 明るい植林地の林床に群生するエナシヒゴクサ。(兵庫県篠山市・植林地林床 2013.6/7)
かなり大木となっているスギの植林地の適湿の林床に大きな規模の群生が見られた。
同所的に画像に見えるシラスゲ、ヤエムグラ、カキドオシ、イタドリ、ミヤマフユイチゴ、クサイチゴ、ドクダミ、ミズヒキ、シャガ、
イワヒメワラビのほか、ヤブラン、ジャノヒゲ、イノコヅチ、セリバオウレン、オオタチツボスミレ、アオイスミレ、ミヤマカタバミ、
ツルニガクサ、オカタツナミソウ、ホウチャクソウ、ムロウテンナンショウ、マスクサ、ジュズスゲ、ナキリスゲ、トボシガラ、ベニシダ、
トウゴクシダ、イワガネソウ、リョウメンシダ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、シケシダなどが生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. エナシヒゴクサ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.152. pl.130. 平凡社
小山鐡夫, 2004 エナシヒゴクサ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.288. pl.71. 保育社
牧野富太郎, 1961 エナシヒゴクサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 804. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属ヒメシラスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 475〜478. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヒメシラスゲ節. 『日本のスゲ』 292〜298. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヒメシラスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 64〜67. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. エナシヒゴクサ. 『六甲山地の植物誌』 242. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. エナシヒゴクサ. 『近畿地方植物誌』 153. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. エナシヒゴクサ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:140.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:9th.June.2013

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