ヒメシラスゲ Carex mollicula  Boott. カヤツリグサ科
湿生植物
Fig.1 (神戸市北区・渓流 2007.6/12)

山地の水辺や日陰の湿地に生える多年草。
細長い匍匐枝を出して、疎らに生え、ときに群生をつくる。
基部の鞘は淡色。古くなると淡褐色。葉は鮮緑色で、幅4〜8mmと幅広い。
花茎は高さ15〜30cm。頂小穂は雄性。側小穂は雌性で、長さ1.5〜3cm、幅4〜5mm。
小穂にはほとんど柄がなく、茎上部にかたまってつく。
雌鱗片は淡緑色、鋭頭で、果胞よりも短い。果胞は長さ3〜4mmで、脈がある。
痩果はゆるく果胞に包まれ、広卵形、長さ1.5mm。柱頭は3岐する。染色体数2n=56,66,68,70。
近似種 : ヒゴクサエナシヒゴクサ

■分布:北海道、本州、四国、九州、対馬 ・ 千島、朝鮮半島
■生育環境:山地の渓流沿いや日陰の湿地など。
■果実期:5〜6月
■西宮市内での分布:市内では1ヶ所で確認したが、まだ他にも自生地はあると思う。

Fig.2 花序。(神戸市北区・渓流 2007.6/12)
  頂小穂は雄性、側小穂は雌性。
  小穂は花茎上部にかたまってつき、ほとんど柄がない。

Fig.3 花序の最下苞基部の花茎は著しくくびれる。(神戸市北区・渓流 2007.6/12)

Fig.4 完全に熟した雌小穂。(神戸市北区・渓流 2007.7/30)
  果胞は熟すと黄褐色を帯び、花軸に対して開出するするようになり、果胞の背はふくらみ、嘴はやや外曲する。

Fig.5 果胞(左)と痩果(右)。(神戸市北区・渓流 2007.7/30)
  果胞は長さ3〜4mm。無毛で光沢があり、数脈がある。
  痩果は広卵形で、長さ約1.5mm、嘴は短く、側方に曲がる。

Fig.6 基部。(西宮市・林道脇 2007.5/27)
  基部の鞘は淡色〜淡褐色。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 日陰の湧水がしみ出す岩壁に生育するヒメシラスゲ。(西宮市・林道脇 2007.5/27)
花茎を上げたヒメシラスゲ(画像左3株)と、花茎をあげていない根生葉のもの(画像右の葉幅の広い1株)が見られ、
花茎をあげないものは葉幅が広く、色がやや濃い緑色である。
右側の株の地下には左に向かっている根茎が見られ、どの株も元は1つの個体であったようだ。
付近にはモエギスゲが見られる程度で、他に湿生のスゲ類は見られなかった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. ヒメシラスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.152. pl.128. 平凡社
小山鐡夫, 2004 ヒメシラスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.288. pl.71. 保育社
牧野富太郎, 1961 ヒメシラスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 803. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属ヒメシラスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 475〜478. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヒメシラスゲ節. 『日本のスゲ』 292〜298. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヒメシラスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 64〜67. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒメシラスゲ. 『六甲山地の植物誌』 246. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヒメシラスゲ. 『近畿地方植物誌』 158. 大阪自然史センター



最終更新日:10th.July.2014

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