ヒゴクサ Carex japonica  Thunb. カヤツリグサ科 スゲ属 ヒメシラスゲ節
湿生植物
Fig.1 (西宮市・渓流沿い 2007.5/31)

Fig.2 (神戸市・渓流沿い 2011.5/21)

湿生植物というよりは、半日陰の湿った林縁や渓流の河畔などに見られる多年草。
細い根茎を地中に伸ばしてやや疎らに叢生し、小さな群生をつくっているのを見かける。
葉は下面がやや粉白味を帯び、幅2〜4mm。
頂小穂は雄性で線形、長さ1.5〜3cm。側小穂は1〜3個で雌性、長さ1〜2cm、幅6〜7mm、長い柄がある。
雌鱗片は淡緑色、鋭頭、果胞より少し短い。果胞は長さ3.5〜4mmで、嘴が長く無毛。
花柱は宿存し、柱頭は3岐する。

よく似た種にエナシヒゴクサC. aphanolepis)があり、葉は粉白味を帯びず、側小穂(雌小穂)には柄が無く、果胞の嘴は短い。
近似種 : エナシヒゴクサヒメシラスゲ

■分布:北海道、本州、四国、九州、対馬、伊豆諸島 ・ 朝鮮、中国
■生育環境:半日陰の湿った林縁や草地など。
■果実期:5〜7月
■西宮市内での分布:各地で普通種とされるが、西宮およびその周辺では比較的少ない。
              エナシヒゴクサは市内では未見。

Fig.3 開花中のヒゴクサ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2008.5/8)
  雌小穂の白い柱頭が長く伸びてよく目立つ。
  画像上方に見えているのはアオスゲ。

Fig.4 頂小穂は雄性、側小穂は雌性。(神戸市・登山道脇 2007.6/12)
  側小穂(雌小穂)には細長い柄があって、果実期にはやや垂れ下がる。

Fig.5 雌小穂を拡大。(西宮市・渓流沿い 2007.5/31)
  鱗片は果胞よりもはるかに短く、果胞の口部は2裂する。
  花柱は残存する傾向が強い。

Fig.6 鱗片をつけた果胞(左)と痩果(右)。(西宮市・渓流沿い 2007.5/31)
  鱗片の中肋は超出して芒となる。
  痩果は果胞にゆったりと包まれている。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 増水して流水につかった跡が顕著なヒゴクサ。(西宮市・渓流沿い 2007.5/31)
樹林中に生育する場合は渓流沿いや細流の脇に見られることが多い。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. ヒゴクサ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.152. pl.130. 平凡社
小山鐡夫, 2004 ヒゴクサ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.288. pl.71. 保育社
牧野富太郎, 1961 ヒゴクサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 804. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属ヒメシラスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 475〜478. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヒメシラスゲ節. 『日本のスゲ』 292〜298. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヒメシラスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 64〜67. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒゴクサ. 『六甲山地の植物誌』 244. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヒゴクサ. 『近畿地方植物誌』 157. 大阪自然史センター

最終更新日:24th.Feb.2014

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