イシミカワ | Persicaria perfoliata (L.) H. Gross | タデ科 イヌタデ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (滋賀県・琵琶湖湖岸 2007.11/4) |
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Fig.2 (兵庫県加古川市・溜池畔 2011.10/29) 河川敷や湿った原野、堤防や溜池の土堤などに見られるツル性の1年草。 茎には下向きの刺があって、長く伸び、他のものにまとわりついて生長する。全草無毛。 葉は三角形で薄く、葉柄には目立つ刺があり、葉身の裏側に盾形につくのが特徴。葉身の先端は鈍頭。 托葉鞘の先端は皿形苞葉状となり、全縁。 花や果実のない時期には、ママコノシリヌグイに似るが、葉柄の付き方を確認することで容易に区別できる。 花序は長さ1〜2cmで、緑白色の目立たない花を数個つける。花には花弁はなく、5中裂する萼片がある。 果実は多肉質の花被(萼)に包まれ、中に1個の黒色の痩果ができる。 花被の色は、最初は緑白色だが、やがてピンク味を帯び、最後にはコバルトブルーに変化し、花期よりも果実期に目立つ草本である。 近似種 : ママコノシリヌグイ、 サデクサ、 ミゾソバ、 オオミゾソバ ■分布:北海道、本州、四国、沖縄 ・ 東アジア ■生育環境:河川敷、湿った原野や林縁、堤防や溜池の土堤など。 ■花期:7〜10月 ■西宮市内での分布:平野部の河川敷や耕作地の湿った林縁に見られるが個体数はあまり多くはない。 |
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↑Fig.3 開花。(滋賀県・後背湿地 2014.9/8) 花披は平開せず、淡緑色で目立たない。 |
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↑Fig.4 痩果を包む花被の色は、緑白色→薄いピンク→水色→コバルトブルーへと変わる。(岡山県真庭市・堤防 2007.9/23) 画像のものは果実期初期のもの。時期を追うにつれ、花被は多肉質になってくる。 |
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↑Fig.5 成熟した果実をつけたイシミカワ。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2007.11/4) 葉は近縁種の中では最も正三角形に近く、葉柄は裏面に楯形につく。 托葉鞘先端は丸い皿型の苞葉状となり、無毛で全縁。 |
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↑Fig.6 イシミカワの痩果。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2007.11/4) ほぼ球形で黒色、表面は平滑で光沢がある。 |
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↑Fig.7 秋期に紅葉した草体。(兵庫県養父市・農道脇草地 2010.10/11) 秋期には熟した果実とともに、赤化した草体が美しい。 |
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↑Fig.8 成長期のイシミカワ。(兵庫県明石市・溜池畔 2007.7/12) この時期のものはママコノシリヌグイとよく似るが、葉柄の付き方が、ママコノシリヌグイでは葉身の縁に付くのに対して、 イシミカワでは葉の裏面に楯形に付く点、托葉鞘先端の苞葉状部は、ママコノシリヌグイでは腎円形で、縁に毛を まばらに付けるのに対して、イシミカワでは全縁の皿状となり、無毛である点で区別できる。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 河川敷に生育する成長期のイシミカワ。(西宮市・河川敷 2009.5/21) 河川敷のワンド状となった湿った陸地に数個体が固まって生育している。数個体見られることから毎年発生していると考えられる。 キシュウスズメノヒエの優勢な場所だが、成長期の始まりはキシュウスズメノヒエよりも早いためその影響を受けにくいのだろう。 付近にはゴキヅル、アゼナルコ、コゴメイ、ヤガミスゲ、ミゾソバなどが生育している。 |
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Fig.10 シュロの木に登ったイシミカワ。(西宮市・林縁 2015.10/3) 林縁にある溝の縁から出たイシミカワが大きく成長してシュロの木に登っていた。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.11 高原の耕作地の草地に生育するイシミカワ。(兵庫県養父市・農耕地の草地 2010.10/11) 農耕地と雑木林が入り混じる高原の農道脇の湿った草地にヒメジソとともに群生していた。 イシミカワが生育する場所ではチカラシバ、ヨモギ、ヒメヨモギ、メハジキ、オオアブラススキが目立っており、林縁部の半日陰の場所ではハナタデ、 アオミズなどが優勢となり、スズメウリ、ヤブマメなどのつる性草本が林縁部を覆うようになる。 林縁のつる性草本が発達する場所ではイシミカワにかわってアキノウナギツカミ、ヤノネグサなどのタデ科草本が現れる。 |
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Fig.12 溜池畔に群生するイシミカワ。(兵庫県加古川市・溜池畔 2011.10/29) 平野部にある溜池畔の湿地からネザサの覆う陸上にかけて、イシミカワが大きな群落をつくっていた。 陸地ではカナムグラやノブドウとともに、ネザサを覆い隠すように広がっていた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜22. 平凡社 北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社 牧野富太郎, 1961 イシミカワ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 122. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社 林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. イシミカワ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. イシミカワ. 『近畿地方植物誌』 119. 大阪自然史センター 黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. イシミカワ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:110. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:12th.Aug. 2016 |