ママコノシリヌグイ Persicaria senticosa  (Franch. et Savat.) H. Gross タデ科 イヌタデ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)

Fig.2 (岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)

休耕田、河川敷、堤防、湿った原野や林縁に生えるつる性の1年草。
ママコノシリヌグイは「継子の尻拭い」で、特徴をよく表しているとはいえ、随分と凄まじい名前を授かったものである。
茎には下向きの鋭い刺があって、刺にさわると痛い。茎は長く伸びて、他のものにからまり、また他の植物に倒れこむようにして横に這う。
葉身は三角形で基部は心形。葉柄は葉身の基部の縁に付く。よく似たイシミカワの葉柄は、葉裏に楯状に付くので区別できる。
葉柄にも下向きの刺があり、葉裏の中央脈にも刺を生じる。
花は5深裂する花被(花弁状の萼片)からなり、淡紅色〜紅色で、花茎先端に多数集合し、花序は果実期にはほぼ球形となる。
花序枝と花の苞葉には緑白色の腺毛がまばらに生える。
托葉鞘先端の苞葉状部は腎円形で茎を抱き、表面には短毛がまばらに生じ、縁にも毛がまばらに生える。
近似種 : イシミカワサデクサミゾソバ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:休耕田、河川敷、堤防、湿った原野や林縁など。
■花期:5〜10月
■西宮市内での分布:市内では湿地や溜池畔ではなく、2ヶ所の海岸で確認できた。

Fig.3 ママコノシリヌグイの花序。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
  花は萼が5深裂した花被で、花序枝先端に多数つく。
  花序枝と花被を包む苞葉には緑白色の腺毛がまばらに生える。

Fig.4 花の拡大。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
  雄蕊は8本で葯は淡紅色。雌蕊柱頭は3岐する。
  こうして拡大して見ると、名とはかけ離れた美しさがある。

Fig.5 果実期。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
  全ての花被が出きった果実期には、花序は大きな球形の総状花序となる。
  画像では花被が破れて、中にある痩果が見える。


Fig.6 果実と痩果の表面(下)。(西宮市・海浜 2008.11/8)
  痩果は花被に覆われ、その中で熟す。痩果は長さ約4mm。光沢はほとんどなく、表面には不定の細かな皺がある。

Fig.7 葉身は三角形で、基部は心形。(西宮市・海浜 2008.6/30)
  葉柄は葉身基部の縁につき、イシミカワのように葉裏に楯形にはつかない。
  また、よく似たサデクサは葉身が披針形で基部が鉾形に左右に突き出す点で区別できる。

Fig.8 茎と托葉鞘。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23
  茎の断面は四角形で、稜上には下向きの鋭い刺が生える。
  托葉鞘先端は苞葉状となり腎円形で、表面には短毛が散生し、縁にも毛がまばらに生える。
  茎上部の葉は画像のように葉幅が狭まり、サデクサに似るが、サデクサの托葉鞘の苞葉状部は歯牙状に切れ込むことで区別できる。

Fig.9 幼植物。(兵庫県篠山市・野原 2011.4/21
  双葉は楕円形〜卵状楕円形。本葉はすでに基部に腎円形の托葉鞘があり、成葉とほぼ同形だが、葉面には粗いしわが生じる。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 海岸で生育するママコノシリヌグイ。(西宮市 2008.6/30)
西宮市内では休耕田や河川敷では見られず、海岸の2ヶ所で確認できた。
湿生植物というよりも、荒地に適応した植物なのであろう。ツルナ、ハマヒルガオとともに群生していた。

他地域での生育環境と生態
Fig.11 河川の堤防で群生するママコノシリヌグイ。(岡山県真庭市 2007.9/23)
マット状の群落をつくっているクズやカナムグラの勢いにも負けることなく、その上を覆うように茎を横に伸ばし開花していた。
ここでは、やや離れてイシミカワやスズメウリといったつる性の草本も観察された。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜22. 平凡社
北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社
牧野富太郎, 1961 ママコノシリヌグイ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 122. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ママコノシリヌグイ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ママコノシリヌグイ. 『近畿地方植物誌』 119. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. ママコノシリヌグイ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:111. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:2nd.Oct.2014

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