オオカワヂシャ Veronica anagallis-aquatica  L. ゴマノハグサ科 クワガタソウ属
湿生〜抽水植物 ・ 帰化植物  特定外来生物指定種
Fig.1 (西宮市・渓流畔 2007.4/20)

休耕田、用水路、河畔、富栄養な湿地、水田などに生育する越年草。ヨーロッパ〜アジア北部原産の帰化植物。
各地に帰化し、旺盛な繁殖力で在来種を駆逐するため特定外来種の指定を受け、無許可の採取、栽培、移動は禁止されている。
在来種のカワジシャV. undulata)に似るが全体に大型である。
茎の基部の葉は有柄だが、開花時には枯失していることが多い。ときに基部から出す枝につく葉は有柄で丸みを帯びる。
茎中部より上につく葉は基部が茎を抱き、葉の鋸歯は微細または不明瞭で、カワヂシャのように目立たない。
花冠は4深裂し、明るい青紫色で、径約5mm、条線部分がくっきりと目立つ。
果実は刮ハ、ほぼ球状で、残存花柱は長さは2〜3mmで、萼から飛び出し、カワヂシャV. undulata)の残存花柱1〜1.5mmよりも長い。

ホナガカワヂシャV×myriantha)はカワヂシャとオオカワヂシャの混生地に生ずる種間雑種。
花序は細長く伸び、果実は不稔のものがほとんどとなる。
この他に外来種としてオトメカワヂシャV. anagalloides)、カワヂシャモドキV. catanata)があるが定着しているかどうかは不明である。
オトメカワヂシャはカワヂシャより葉が細く、刮ハの長さ約2mm。カワヂシャモドキは花柄が無毛で、刮ハは幅が広く、長さ2〜3mm、幅2.5〜3.5mm。
近似種 : カワヂシャホナガカワヂシャ

■分布:ヨーロッパ〜アジア北部。各地に帰化。
■生育環境:休耕田、用水路、河畔、富栄養な湿地、水田など。
■花期:4〜6月
■市内での分布:全域に普通。在来種のカワヂシャはほとんど見られない。

Fig.2 開花したオオカワヂシャ。(西宮市・渓流畔 2007.4/20)
  径約5mmで、カワヂシャの約2倍の大きさがありよく目立つ。

Fig.3 花後の花序。(西宮市・水田 2010.5/3)
  花後、すぐに子房はふくらみはじめる。残存花柱は2〜3mmあり、萼から超出する。

Fig.4 葉身。(西宮市・渓流畔 2007.4/20)
  葉縁には低い微鋸歯が並び、カワヂシャのように目立たない。

Fig.5 常緑越冬するオオカワヂシャ。(西宮市・休耕田 2007.1/5)
 

Fig.6 沈水状態で生育するオオカワヂシャ。(神戸市北区・用水路 2007.2/22)
 

Fig.7 水路内で発芽するオオカワヂシャ。(西宮市・水路 2009.1/6)

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 畑地の畝間に生育するオオカワヂシャ。(西宮市・畑地 2010.5/3)
畑地の畝間の水溜まりにカズノコグサ、スズメノテッポウ、ムシクサなどの水田雑草とともに生育している。
左側に見える大きな葉はゴボウのもの。この畑地のすぐ隣りではカワヂシャが生育しており、種間雑種であるホナガカワヂシャも少数見られる。

Fig.9 河川の水際に生育するオオカワヂシャ。(西宮市・小河川 2010.5/6)
オオカワヂシャは市内平野部の隅々まで広がっており、河川のちょっとした水際の岸辺などでもよく見られる。
このような場所では本来はカワヂシャが生育していたであろうが、現在では全く見られなくなってしまった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大滝末男, 1980 カワジシャ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 26〜27. 北隆館
山崎敬, 1981. カワヂシャ・オオカワヂシャ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.112. pls.97. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 クワガタソウ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.139〜145. pls.43〜45. 保育社
山崎敬. 2001. ゴマノハグサ科クワガタソウ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.189〜191. pls.93〜94. 平凡社
城川四郎. 2001. クワガタソウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1267〜1271. 神奈川県立生命の星・地球博物館
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. オオカワヂサ. 『日本帰化植物写真図鑑』 300. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オオカワヂシャ. 『六甲山地の植物誌』 193. (財)神戸市公園緑化協会
田中俊雄. 1994.オオカワヂシャとカワヂシャの間の雑種.水草研究会会報 54:34-35.
田中俊雄. 1998.オオカワヂシャとカワヂシャの間の人為交配実験.水草研究会会報 64:16-17.

最終更新日:6th.May.2010

<<<戻る TOPページ