ハルタデ Persicaria vulgaris  Webb et Moq. タデ科 イヌタデ属
湿生植物

Fig.1 刈り込みに遭い、側枝を生じて晩秋に開花した個体。(西宮市・休耕田 2009.11/12)

畑地、休耕田、畦など、湿った場所に生える1年草。
やや荒地気味な場所に見られることが多く、ヨーロッパ原産の史先帰化植物とされる。
茎は直立し、ふつう上部で枝を分け、紅紫色を帯び、毛は無いものとあるものとがあり、高さ30〜80cm。
葉は短い柄があり、長楕円形〜披針形、先は鋭尖頭〜やや鈍頭、基部はくさび形、しばしば中央に暗斑があり、両面に粗毛が生え、
葉縁には毛が並び、濃緑色、長さ4〜14cm、幅0.5〜2cm。
托葉鞘は筒状、外面に毛があり、縁毛は短い。総状花序は密で直立し、長さ2.5〜5cm。花柄にはまばらに腺毛がある。
花被は5裂し、やや不明瞭な脈があり、淡紅紫色ときに白色、長さ2.5〜3.5mm、小花柄に腺点がある。雄蕊は6個。
痩果はレンズ形か稀に3稜形で、広卵形、黒色、光沢があり、長さ2〜2.5mm。

他の変種に以下の2種がある。
よく似たサナエタデP. scabra)は茎が無毛。托葉鞘に毛はなく、ふつう縁毛もない。葉の側脈は7〜15対。花序は直立。
オオイヌタデP. lapathifolia)はサナエタデに似るがより大型で、節はふくらみ、葉の側脈は20〜30対ある。花序は下垂するものが多い。
近似種 : サナエタデオオイヌタデ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 北半球の温帯〜暖帯に広く分布。
■生育環境:畑地、休耕田、畦、湿った荒地など。
■花期:4〜10月
■西宮市内での分布:ほぼ全域に分布するが少ない。

Fig.2 茎。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  茎は暗紅紫色を帯び、ごくまばらに上向きの伏し毛がある。
  伏し毛とは別により短い腺毛が散生しており、上部の托葉鞘に向かうにつれて多くなっている。

Fig.3 托葉鞘。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  托葉鞘は膜質筒状、表面には伏せ毛が散生する。
  画像の個体は晩秋に生育したものであるためか托葉鞘の発達が悪く、筒部は短く、縁毛も見られなかった。

Fig.4 葉。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  葉は長楕円形〜披針形、先は鋭尖頭〜鈍頭、基部はくさび形で、短い葉柄がある。
  画像の葉には葉身中央付近に暗斑が見られるが、暗斑の出ないものもある。

Fig.5 葉身の拡大。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  葉はふつう粗毛を散生する。
  この個体のものは、脈上と葉縁にははっきりとした毛が生えていたが、葉身にはきわめてまばらに見られるだけであった。

Fig.6 葉身の裏面拡大。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  裏面には脈上と、葉縁のみに伏毛が見られた。サナエタデやオオイヌタデのような腺点はない。

Fig.7 総状花序。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  花は総状花序に密につき、直立し、長さ2.5〜5cm。

Fig.8 花柄にはまばらに腺毛がある。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  ネバリタデには到底及ばないが、花柄に触ると若干粘る。

Fig.9 小花。(西宮市・休耕田 2009.11/12)
  花被は5裂し、長さ2.5〜3.5mm、腺点はない。花被片には先が2分岐する脈があるが、この例では脈自体が不明瞭である。

市内での生育環境と生態
現在、画像はありません。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜23. 平凡社
北村四郎. 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 合弁花類』 p.299〜316. pls.64〜68. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ハルタデ. 『六甲山地の植物誌』 111. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ハルタデ. 『近畿地方植物誌』 119. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. ハルタデ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:112. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:23rd.Dec.2010

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