サナエタデ Persicaria lapathifolium  L. タデ科 イヌタデ属
湿生植物

Fig.1 (兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)

水田の畦、休耕田、農耕地周辺のやや湿った荒れ地や道端にも生える1年草。
開花が5,6月頃に始まり、田植えの時期と重なることからサナエタデの名称がある。
茎は直立、分枝して高さ30〜60cm、無毛。
葉は披針形、または卵状披針形、鋭尖頭、基部はくさび形、側脈は斜上して7〜15対、両面とも中肋に沿って少し短毛があり、洋紙質。
葉身下面は薄い白毛のあるものから、密に白毛が生えるものまである。
葉柄は短く、節は少し膨らみ、托葉鞘は筒状でほとんど縁毛がないか、きわめて短い縁毛がある。
花序はあまり垂れ下がらず直立気味で、太く、密に小花をつけ2〜6cm。
小花には花弁がないが、4〜5裂する萼が白〜淡紅色を帯び、赤い蕾や開花後の閉じた小花とのコントラストが美しい。
種子は扁平、円形、両面が少し凹み、黒褐色で光沢がある。

葉の裏面に綿毛を密生するものはウラジロサナエタデ(var. salicifolia)として区別する見解がある。
よく似たタデ科の草本にイヌタデP. longiseta)があり、托葉鞘の脈上には上向きの粗い伏せ毛が生え、筒部とほぼ同長の縁毛が生える。
ハルタデP. vulgaris)では、茎に軟毛が生え、托葉鞘には縁毛があり、種子はレンズ形、または3稜形で、光沢がある。
またオオイヌタデ(subsp. nodosum)にも良く似るが、茎の節の部分はオオイヌタデは顕著に膨らみ、花序は7cmに達して下垂することが多く、
葉は披針形で長く、側脈は明瞭で20〜30対あって、葉縁付近まで平行して流れる。
近似種 : イヌタデオオイヌタデハルタデ

■分布:北海道、本州、四国、九州
■生育環境:水田の畦や休耕田、農地周辺の荒れ地や畑地など。
■花期:5〜10月
■西宮市内での分布:市内では平野部の水田周辺や休耕畑地などで見られる。

Fig.2 花序はあまり垂れ下がらず、直立する。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)

Fig.3 花弁はなく、萼が4〜5裂し、雄蕊は5本見られる。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)
  開花中や開花間近の小花は白色、蕾や開花後の小花は赤紫色だが、淡紅色のものもあるという。

Fig.4 花被の拡大。(西宮市・休耕田 2010.5/29)
  雄蕊は5〜6個。柱頭は2岐し、先は球状となっている。

Fig.5 葉身中央にはタデ科特有の斑紋がある。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)
  時には斑紋が見られないものもあるが、葉先の尖り具合でイヌタデと区別できる。

Fig.6 葉身。(西宮市・休耕田 2010.5/29)

Fig.7 葉身表面の拡大。(西宮市・休耕田 2010.5/29)
  表面にはごくまばらに短毛が見られた。葉縁には短毛が並ぶ。

Fig.8 葉身裏面の拡大。(西宮市・休耕田 2010.5/29)
  裏面には全面に綿毛が見られた。中央脈上には短毛が生える。

Fig.9 托葉鞘は膜質、切型でふつう縁に毛は生えない。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)
  節の部分はオオイヌタデのように大きくは膨らまない。ときに筒部に綿毛が見られる。

生育環境と生態
Fig.10 休耕田に生育するサナエタデ。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)
おそらく小麦畑で、転作前の休耕中の場所だと思われる。
ヒメジョオン、ヒロハホウキギク、オランダミミナグサなどのどこにでも見られる外来雑草のほか、トキンソウ、コモチマンネングサ、アゼナ、
イヌガラシ、ミミナグサ、ハハコグサなどが混じる。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜22. 平凡社
北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pls.65. 保育社
牧野富太郎, 1961 サナエタデ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 118. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サナエタデ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. サナエタデ. 『近畿地方植物誌』 118. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. サナエタデ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:111. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:23rd.Dec.2010

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