ホザキノミミカキグサ | Utricularia caerulea L. | タヌキモ科 タヌキモ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池畔 2008.7/21) 日当たりの良い貧栄養な湿地に生える小型の多年草。食虫植物。 根茎は細く、地中を横走し、捕虫嚢をまばらに付け、所々で2〜3mmの単生する根生葉をつける。 花茎は細く、高さ5〜20cmで直立し、数個の鱗片葉を楯状につける。花柄はごく短く、鱗片葉と同形の苞葉がつく。 花冠は4mm前後で、距は下唇の2倍あって、前方へ突き出る。 湿地の開発や遷移などで減少傾向が著しい。 近似種 : ミミカキグサ、 ムラサキミミカキグサ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、台湾、インド ■生育環境:貧栄養な湿地、溜池畔。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:溜池畔と湿地の、それぞれ1ヶ所づつで確認。このうち溜池畔のものは踏みつけに頻繁に遭い絶滅寸前。 残念ながら溜池畔のものは2007年度には開花が見られず、自生の確認はできなかった。 |
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↑Fig.2 根生葉を密生するホザキノミミカキグサ。(兵庫県篠山市・溜池跡湿地 2010.9/19) ホザキノミミカキグサ群落中に見られた多数の根生葉。 根生葉は横走する根茎の節から1個ずつ出て、湛水〜沈水状態でない時は2〜3mmの小さなへら形全縁となる。 画像では地表の多くを根生葉が被っており、狭い場所に密な群生が形成されていることが解る。 |
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↑Fig.3 花茎。(西宮市・溜池畔 2005.10/18) 細い花茎を長く直立させ、花をまばらに付ける。花柄はごく短い。 |
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↑Fig.4,5 花の距は前方に突き出す。(西宮市・湿地 2007.9/2) |
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↑Fig.6 花茎は開花しながら上に伸びていく。(西宮市・湿地 2007.10/18) |
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↑Fig.7 果実。(兵庫県篠山市・溜池畔 2008.7/27) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.8 溜池畔のわずかに湿地状になった場所で、ささやかな群落をつくったホザキノミミカキグサ。(西宮市・溜池畔 2005.10/18) 釣り人や、近隣に住む住人による犬の散歩などで、頻繁に踏みつけにあい、現在では表土が剥き出しになりつつある。 残念ながら2007年度には自生が確認できなかった。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 溜池畔の小湿地でミミカキグサとともに見られるホザキノミミカキグサ。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.7/21) 湿地上の地表には多数の根生葉が見られたが、ミミカキグサのものかホザキノミミカキグサのものかは判断がつかない。 ここではモウセンゴケ、トキソウ、サギソウなどの湿生植物が混生する。出穂しているカヤツリグサ科の草本はヤマイ。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 田村道夫, 1981. タヌキモ科タヌキモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 pp.137〜139. pls.112〜114. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004. ミミカキグサ亜属. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 pp.121. pls.39. 保育社 牧野富太郎, 1961 ホザキノミミカキグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 575. 北隆館 勝山輝男. 2001. タヌキモ科タヌキモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1282〜1283. 神奈川県立生命の星・地球博物館 近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ホザキノミミカキグサ. 『六甲山地の植物誌』 195. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ホザキノミミカキグサ. 『近畿地方植物誌』 37. 大阪自然史センター 矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課 外山雅寛, 1984. 北海道内における食虫植物の群落と生態 (第二報). 水草研究会会報 15:10〜11. 角野康郎 2006. ホザキノミミカキグサ. 兵庫県産維管束植物7 タヌキモ科. 人と自然16:115. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:28th.Dec.2010 |