ムラサキミミカキグサ | Utricularia yakusimensis Masam. | タヌキモ科 タヌキモ属 |
湿生〜抽水〜沈水植物 環境省準絶滅危惧種(NT)・兵庫県RDB Cランク種 |
Fig.1 (西宮市・湿地 2006.9/22) 貧栄養な湿地に生育する多年草。食虫植物。 地下の根茎は糸状に伸びて分枝し、まばらに捕虫嚢をつけ、節から不定根と地上葉を生じる。 地上用は気中葉と沈水葉の2型があって、気中葉は小さく長倒卵状へら形で長さ3mm〜8mm。 沈水葉は線形で、長さ1〜8cm、鈍頭で、基部の地中部分は柄状で細い。 気中葉と沈水葉は水深に応じて変化し、両タイプの中間型を見ることが多い。 花茎は無毛で高さ7〜15cm、数個の鱗片葉がある。 花には長さ2〜3mmの柄があり、萼は広卵形膜質。花冠は径3.5〜4mm、距は下向きで長さ2〜3mm。 花後には萼が大きくなり、果実を抱く。 近似種 : ミミカキグサ、 ホザキノミミカキグサ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:貧栄養な湿地など。 ■花期:8〜9月 ■西宮市内での分布:市内では2ヶ所の湿地で自生を確認しているだけで稀。 |
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↑Fig.2 へら形の気中葉。(西宮市・湿地 2006.9/22) 湿地や表層にわずかな水が流れる場所に生育するものの気中葉は3〜8mm程度。 |
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↑Fig.3 湧水のある斜面で生育する個体。根生葉はごく小さい。(西宮市・湿地 2006.9/22) |
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↑Fig.4 沈水状態で生育した個体。(兵庫県芦屋市・砂防ダム内 2004.10/23) 溜池や砂防ダム内で沈水状態で生育するものは沈水葉をつける。 沈水葉は線形〜長披針形となり、長さは8cmにおよぶものもある。 |
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↑Fig.5 沈水葉と根茎についた捕虫嚢。(兵庫県芦屋市・砂防ダム内 2004.10/23) 根茎にはまばらに捕虫嚢をつける。また、泥中に埋もれた葉身基部にも捕虫嚢が見られる。 |
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↑Fig.6 捕虫嚢の拡大。(兵庫県芦屋市・砂防ダム内 2009.10/28) 捕虫嚢は白色半透明で、口部上端には2本の口ひげがある。 |
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↑Fig.7 秋に開花したムラサキミミカキグサ。(兵庫県加東市・湿原 2008.10/19) 秋に開花するものは、他のミミカキグサ類同様、花茎が極端に低くなり花茎につく花数も少ない。 おそらく花が寒気をできるだけ浴びないようにする体勢なのだろう。 |
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↑Fig.8 沈水状態で形成された刮ハ。(兵庫県芦屋市・砂防ダム内 2009.10/28) 水中に花茎を上げ、水面に達する前に結実しているらしき刮ハを調べた。 耳掻き状の萼を除くと、中に刮ハがあり、表皮を取ると中心にある胎盤上に種子が作られつつあった。 どうやらムラサキミミカキグサは自家受粉して結実することもできるようである。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 貧栄養な湿地に生育するムラサキミミカキグサ。(西宮市・湿地 2006.9/22) ミカヅキグサやイヌノハナヒゲなどの株元近くに小型なシロイヌノヒゲとともに生育している。 このような場所では近縁種のミミカキグサ、ホザキノミミカキグサも混生していることが多い。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.10 湿地の浅水域に生育するムラサキミミカキグサ。(兵庫県加東市・湿地 2008.10/19) 被植の少ない半裸地の浅水域に生育するのが見られた。 ここではミカヅキグサ属草本の幼苗やトウカイコモウセンゴケ、小型のイヌノヒゲやシロイヌノヒゲなどとともに生育している。 |
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Fig.11 溜池畔の湿地に生育するムラサキミミカキグサ。(兵庫県篠山市・湿地 2013.9/22) イグサ、イヌシカクイ、オニスゲ、エゾハリイなどが優占する溜池畔の湿地の表水の多い場所に生育していた。 ムラサキミミカグサはシロイヌノヒゲ、イトイヌノヒゲ、ヒナザサ、ヒメジソ、アギスミレなどとともに下草のように生育している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 田村道夫, 1981. タヌキモ科タヌキモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.137〜139. pls.112〜114. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004. ミミカキグサ亜属. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.121. pl.39. 保育社 牧野富太郎, 1961 ムラサキミミカキグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 575. 北隆館 勝山輝男. 2001. タヌキモ科タヌキモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1282〜1283. 神奈川県立生命の星・地球博物館 近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ムラサキミミカキグサ. 『六甲山地の植物誌』 195. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ムラサキミミカキグサ. 『近畿地方植物誌』 37. 大阪自然史センター 矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課 小宮定志, 1982. ミミカキグサも水草. 水草研究会会報 10:1〜3. 外山雅寛, 1983. 北海道内における食虫植物の群落と生態. 水草研究会会報 14:12〜14. 外山雅寛, 1984. 北海道内における食虫植物の群落と生態 (第二報). 水草研究会会報 15:10〜11. 外山雅寛, 1984. 北海道内における食虫植物の群落と生態 (第三報). 水草研究会会報 18:7〜12. 角野康郎 2006. ムラサキミミカキグサ. 兵庫県産維管束植物7 タヌキモ科. 人と自然16:115. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:26th.July.2014 |