キショウブ Iris pseudoacorus  L. アヤメ科 アヤメ属
湿生〜抽水植物 ・ 帰化植物 要注意外来生物
Fig.1 (西宮市甲陽園大池 2010.5/2)

西アジア〜ヨーロッパ原産の帰化植物で、全国の湖沼、溜池、河川、用水路などに帰化生育する多年草。ときに栽培される。
汚濁した富栄養化の進んだ水域にも生育でき、繁殖力は旺盛で、ときに在来の競合種を圧し、要注意外来生物に指定されている。
地下には太い根茎があり、群生する。葉は2列に根生し、剣状、先は細くなり鋭頭、長さ50〜120cm、幅1.5〜3cm。
葉の中央脈は隆起して明瞭。
花茎は直立して、高さ50〜120cm、数個の苞葉のもとで分枝する。
花は外花被片3個、内花被片3個と花弁状に3分枝した花柱からなり、外花被片は広卵形で長さ5〜7cm、幅3〜4cm、先が垂れ、基部に褐色の条線がある。
内花被片はごく小型で細長く、長さ2〜3cm、斜上または直立する。
3分枝した花柱は放射状に横に広がり、先は2裂して立ち上がり、縁には歯牙がある。
果実は断面が3稜状の長楕円形で、長さ4〜7.5cm、幅1.5〜2.5cm。成熟すると3裂し、銅褐色で扁平な種子が落ちて水に浮く。

国内に生育する他のアヤメ属のものには黄色い花はなく、花で区別がつく。
サトイモ科のショウブAcorus calamus)との葉の区別はショウブ Fig.3を参照。
近似種 : ノハナショウブ、 カキツバタ、アヤメ

■分布:ユーラシア大陸西部。世界各地に帰化。
■生育環境:湖沼、溜池、河川、用水路など。
■花期:4〜6月
■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に普通。

Fig.2 キショウブの花。(兵庫県芦屋市・溜池畔 2003.6/10)
  花は4〜6月頃開花し、鮮やかな黄色で大型、遠くからでもよく目立つ。
  外花被片には褐色の条線があり、花を引き立てるアクセントとなっている。
  要注意外来生物に指定されているが、花が美しいため植栽されることも多い。

Fig.3 キショウブの未成熟な果実(刮ハ)。(兵庫県芦屋市・溜池畔 2008.7/10)
  刮ハは3稜あり、長い。果実は成熟してくると少し下垂する。


Fig.4 熟して裂開する刮ハ。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/19)
  熟した刮ハは3裂する。
  刮ハの外皮はやがて枯れて黒変し、内側を仕切る壁とともに強くよじれる。よじれることによって、種子の多くが刮ハの外にこぼれ落ちる。

Fig.5 種子。(西宮市甲山町・溜池畔 2006.11/30)
  種子は赤銅褐色、やや扁平な半球形で、少し光沢があり、幅5〜7mm。小さな栗の実を少し押しつぶした感じに見える。
  種子は軽く、水に浮かんで生育領域を広げる。

Fig.6 葉身。(兵庫県芦屋市・溜池畔 2008.5/14)
  葉身は暗緑色で粉白を帯びる。中央脈は隆起し、葉身中央より少し外寄りにずれる。
  pseudoacorus(ショウブ属もどき)という種小名を持つだけあって、ショウブの葉によく似るが、ショウブの葉は中央脈が突出し、
  黄緑色で光沢がある。両種の葉身の比較画像はショウブ Fig.3を参照。

Fig.7 基部。(西宮市甲山町・池畔 2008.7/7)
  葉は根茎の先端から2列に互生して根生する。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 溜池の流れ込み部分に見られたキショウブ。(西宮市甲山町・溜池畔 2007.5/30)


Fig.9 溜池畔に群生するキショウブ。(西宮市甲陽園大池・溜池畔 2010.5/2)
植栽されたものが群生して広がっている。背後の丈の高い草本はヒメガマ。他に池畔にはアゼナルコが見られる。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 小河川の水際に生育するキショウブ。(兵庫県篠山市・小河川 2008.5/22)
周囲に見られる白い花はミズタガラシのもの。
この河川では水際にカサスゲ、ナガエミクリ、ツルヨシ、クサヨシ、オギなどの生育が見られ、キショウブはそれほど個体数は多くなかった。
河川内ではエビモ、ササバモ、ナガレミズヒキモ、オオカナダモ、コカナダモなどが見られる。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
佐竹義輔,1982 アヤメ科アヤメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       p.60〜62. pls.55〜57. 平凡社
北村四郎・村田源・小山鐡夫, 2004 キショウブ. 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.76,78. 保育社
角野康郎, 1994 キショウブ. 『日本水草図鑑』 p.61. pls.63. 文一統合出版
諏訪哲夫. 2001. アヤメ科アヤメ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 234〜237. 神奈川県立生命の星・地球博物館
邑田仁. 2001. キショウブ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.239. pls.129. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. キショウブ. 『日本帰化植物写真図鑑』 412. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. キショウブ. 『六甲山地の植物誌』 221. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. キショウブ. 『近畿地方植物誌』 138. 大阪自然史センター

最終更新日:21st.May.2010

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