キンキカサスゲ Carex persistens  Ohwi カヤツリグサ科 スゲ属 ミヤマシラスゲ節
湿生植物
Fig.1 (兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)

Fig.2 (兵庫県香美町・棚田脇の湿地 2011.5/26)

低山〜山地の河畔や湿地に生育する多年草。
地下に横走する根茎があり、群生する。
基部の鞘は淡色で一部赤紫色を帯びることがあり、わずかに糸網を生じる。
葉はカサスゲよりやわらかく幅4〜8mm。有花茎は高さ30〜70cm。
頂小穂は雄性、長さ3〜7cm。側小穂はふつう雌性、長さ3〜12cm。
雌花および雄花の鱗片には赤紫色の部分があり、鋭頭芒端で、果胞より長い。
果胞は中軸にほぼ直立してつき、長さ3〜4mm、無毛まれに有毛、熟してもふくらまず、乾くとやや褐色に変色する。
花柱は細長く宿存し、柱頭は3岐する。

近似種 : カサスゲアキカサスゲミヤマシラスゲ

■分布:本州(近畿以西)
■生育環境:低山〜山地の河畔、湿地など。
■果期:5〜6月
■西宮市内での分布:市内では見られない。兵庫県下では中北部に多く見られる。

Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  草体はカサスゲに似るが、やや小型で、葉は柔らかく、側小穂は細長い。
  有花茎は前年のシュートの中央から出ている。

Fig.4 基部。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  基部の鞘は淡色で一部赤紫色を帯びることがあり、わずかに糸網を生じる。
  画像のものは有花茎の鞘は淡色で、新しいシュートの新鞘は赤紫色を帯びていた。

Fig.5 有花茎。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  頂小穂は雄性。側小穂はふつう雌性だが、ときに上部が雄花群となり、雄雌性となる。
  画像のものは2個の側小穂が雄雌性となっている。

Fig.6 頂小穂と側小穂の雄花部。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  頂小穂は長さ3〜7cm。雄鱗片には赤紫色の部分があり、葯はやや残る。

Fig.7 側小穂。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  側小穂はふつう雌性。果胞は熟してもふくらまず、中軸にほぼ直立してつく。

Fig.8 雌花群の拡大。(兵庫県篠山市・山際の湿地 2011.5/16)
  雄鱗片には赤紫色の部分があり、鋭頭芒端で、果胞より長い。果胞は長さ3〜4mm、無毛まれに有毛、熟してもふくらまない。
  花柱は細長く宿存し、柱頭は3岐する。

生育環境と生態
Fig.9 渓流畔に群生するキンキカサスゲ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2008.5/16)
山間棚田の間を流れる渓流畔にキンキカサスゲが群生していた。
丹波地方では谷津の小河川や、山際の湧水によってできた小湿地でキンキカサスゲが見られることが多い。
ここではかなりの高密度で群生し、キンキカサスゲがまばらな場所ではクサソテツ、ミヤマハコベ、ミゾホウズキ、オオバタネツケバナ、
ヤマネコノメソウ、ネコノメソウなどが生育する。

Fig.10 高原の棚田の脇の湿地に生育するキンキカサスゲ。(兵庫県香美町・棚田の湿地 2011.5/26)
高原の棚田の脇が山際からの湧水によって湿地となっており、そこにキンキカサスゲが生育していた。
キンキカサスゲは畦のすぐ脇の湛水部分に群生し、同所的にヤマアゼスゲとミヤマシラスゲが生育し、その周辺には画像にも見えるコウヤワラビ、
オタカラコウ、ミソハギ、スギナのほかヌマトラノオ、ヤノネグサ、サワオグルマ、タムラソウなどが生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. キンキカサスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.151. pls.128. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カサスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.287. 保育社
牧野富太郎, 1961 キンキカサスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 805. 北隆館
勝山輝男, 2005 ミヤマシラスゲ節. 『日本のスゲ』 320〜330 文一総合出版
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヤマアゼスゲ. 『六甲山地の植物誌』 243. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. キンキカサスゲ. 『近畿地方植物誌』 159. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. キンキカサスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:156.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:8th.Jul.2011

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