キシュウスズメノヒエ Paspalum distichum  L. イネ科 スズメノヒエ属
湿生〜抽水植物・帰化植物 要注意外来生物
Fig.1 (兵庫県三田市・休耕田 2008.8/17)

河川、湖沼、休耕田、用水路、水田、溜池畔、湿地などに半抽水状態で生育する多年草。帰化植物。
茎の下部は地表または水中を這い、節で分枝して立ち上がり高さ20〜50cmになる。
抽水状態で生育するものは、伸張した植物体がしばしば浮遊マット状になって水面を覆う。
葉は線形で長さ2〜10cm、幅3〜8mm、基部付近に長毛が見られるほかはほとんど無毛で、鋭頭。
葉鞘は長さ3〜5cm、口部と縁には長毛が生える。茎上部の葉鞘の表面はほとんど無毛だが、下部では長毛が生える。節は有毛。
葉耳は長さ約3mmで、縁には長毛が生え、あまり左右に張り出さない。葉舌は切り形、長さ約1.2mmで目立たず、ささくれ状に細かく裂けることが多い。
花序はV字状に分岐した長さ3〜6cmの2本の総からなり、中軸の下側に2列に小穂が並ぶ。
小穂は淡緑色ときに赤紫色を帯び、長さ約3mmで、幅は長さよりも短く長楕円形、短い軟毛があり、鋭頭。
第1苞頴は退化してほとんど無いか、小さな三角状となる。第2苞頴と護頴は膜質で同形でほぼ同大。

やや大型でより水生生活に適応したものに変種チクゴスズメノヒエ(var. indutum)がある。
花序の総は2本のものに3(4)本のものが混ざり、第1苞頴は披針形であることにより区別できる。
近似種 : チクゴスズメノヒエ、 スズメノコビエスズメノヒエ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ アジアの暖帯〜熱帯域、北米
■生育環境:水田の畦、休耕田、用水路、溜池畔、河川敷、湿った原野など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内全域に広く分布し、河川で群生する姿がいたる所で見られる。

Fig.2 花序。(西宮市山口町・河川敷 2007.10/14)
  花序はV字状に2叉分岐する。

Fig.3 花序の一部拡大。(西宮市・武庫川河川敷 2008.11/8)
  小穂は総の中軸下面に2列につき、長楕円形で長さ約3mm、表面に微軟毛が生える。
  第1苞頴は退化してほとんどないか、小さな三角状となる。チクゴスズメノヒエでは第1苞頴は披針形となることにより区別できる。
  雄蕊の葯、雌蕊ともに暗紫色。

Fig.4 地表を匍匐する茎。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  長く地表を這い、節から発根し、また茎を直立する。

Fig.5 節から直立した茎。(兵庫県三田市・休耕田 2008.8/17)
  葉鞘の口部や葉身基部付近に白長毛があるのが見える。

Fig.6 茎下部の節と葉鞘。(西宮市・武庫川河川敷 2008.11/8)
  節には下向きの長毛が生え、茎下部にある葉鞘には口部や縁だけでなく、表面にも白長毛が開出して生える。

Fig.7 花茎上部の葉鞘口部付近。(西宮市・武庫川河川敷 2008.11/8)
  葉鞘と葉身をつなぐ葉舌は長さ3mm前後で、縁には毛が生える。
  葉身基部の特に中央脈付近には毛が生える。

Fig.8 葉舌。(西宮市・武庫川河川敷 2008.11/8)
  長さ約1mm、先は繊維状にささくれる。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 河川の水際で群生するキシュウスズメノヒエ。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
匍匐茎を著しく伸ばして群生し、河畔を隙間なく埋め尽くす。

Fig.10 ナガエツルノゲイトウとともに群落を形成するキシュウスズメノヒエ。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)


【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎,1982 イネ科スズメノヒエ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       pp.98〜99. pls.80. 平凡社
小山鐡夫, 2004 キシュウスズメノヒエ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.373. pls.98. 保育社
桑原義晴, 2008 スズメノヒエ属. 『日本イネ科植物図譜』 pp.361〜369. pls.26〜27. 全国農村教育協会
藤本義昭. 1995. イネ科スズメノヒエ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 174〜182. 藤本植物研究所
木場英久. 2001. イネ科スズメノヒエ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 338〜341. 神奈川県立生命の星・地球博物館
角野康郎, 1994 イネ科スズメノヒエ属. 『日本水草図鑑』 pp.65. pls.67. 文一統合出版
勝山輝男. 2001. イネ科スズメノヒエ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 pp.284〜286. pls.150〜151. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. キシュウスズメノヒエ、チクゴスズメノヒエ. 『日本帰化植物写真図鑑』 458. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. キシュウスズメノヒエ. 『六甲山地の植物誌』 234. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. キシュウスズメノヒエ. 『近畿地方植物誌』 180. 大阪自然史センター

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