スズメノコビエ Paspalum scrobiculatum  L. イネ科 スズメノヒエ属
湿生植物  兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)

Fig.2 (兵庫県姫路市・溜池畔 2012.10/15)

溜池畔、河川敷、草地や裸地などの日当たりのよい湿った場所に生育する多年草。
茎は直立または斜上し、平滑でほぼ無毛、高さ20〜70cm。基部で少数が分枝(分けつ)し、中部まで連続的に葉鞘に包まれる。
葉は線形で、長さ10〜30cm、幅3〜10mm、先は細くとがる。表面と縁はざらつき、葉鞘口部には長い毛がある。
葉舌は切形で、長さ0.5〜1.5mm。茎の基部の古い葉鞘には長い伏せ毛がある。
花序は長さ5〜15cm、2〜4個(ふつう3個)の花軸に分かれ、花軸の基部には長さ約10mmの毛が叢生する。
花軸は扁平で平滑、小穂を1個に40個程度2列につける。
小穂は楕円状円形、長さ2.1〜2.3mm、平滑で無毛ときに微毛があり、円頭。第2、第3頴はほぼ円形、3脈あり薄膜質。
第4頴は光沢があり革質、果実が熟すころ褐色を帯びる。

スズメノヒエ属は帰化種も含め似たものが多い。
スズメノヒエP. thunbergii)は、水田の畦や農耕地周辺に見られ、葉や葉鞘に軟毛が多く、小穂にはふつう縁毛があり、長さ2.5〜2.8mm。
キシュウスズメノヒエP. distichum)は、河川敷、溜池畔、水田などに抽水状態で見られることが多く、葉鞘口部と縁に毛があり、
花序はふつうV字状に2叉分岐することにより、スズメノコビエとの区別は容易である。
近似種 : キシュウスズメノヒエ、 チクゴスズメノヒエ、 スズメノヒエ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州、沖縄 ・ 熱帯アジア、アラビア
■生育環境:溜池畔、河川敷、湿った草地や裸地など。
■花期:9〜10月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。県内では西神戸から播磨地方に限られる。

Fig.3 全草の様子。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  茎は直立または斜上し、葉よりもかなり長い。

Fig.4 花序。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  花序には花軸がふつう3個、ときに2個または4個つく。花軸は扁平。

Fig.5 花軸。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  花軸の下側には、基部から先端まで隙間無く小穂が2列に並ぶ。画像のものは基部近くの小穂が脱落している。
  花軸の基部には白長毛が生える。

Fig.6 小穂。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  小穂は楕円状円形、長さ2.1〜2.3mmで、円頭。画像のものには苞頴に微毛が見えるが、無毛のものもある。

Fig.7 基部付近。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  基部につく古い葉鞘には白長毛があるが、それ以外の葉鞘には長毛は見られない。

Fig.8 節と葉鞘口部。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  節は少し肥厚し、無毛。葉鞘口部には白長毛が生えるが、画像のものは大部分が脱落している。
  葉鞘には毛が見られない。

Fig.9 葉身の拡大。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  表面と縁には上向きの微刺毛が並び、ざらつく。

生育環境と生態
Fig.10 やや富栄養な溜池畔の湧水のある砂礫地に生育するスズメノコビエ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.11/23)
他の草本の少ない裸地で見られることが多く、砂礫地から粘土質の湿った場所に見られ、土壌の条件はあまり選ばないようだ。

Fig.11 Fig.9を上方から俯瞰。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.11/23)
スズメノコビエを赤い矢印で示した。湧水のある砂礫地でまばらに生育している。
白矢印はコメヒシバ、黄矢印はオオシロガヤツリ、水色矢印はヒデリコ。
他にコアゼガヤツリ、ヒナガヤツリ、アオテンツキ、メアゼテンツキ、ヨツバムグラ、チョウジタデ、ナガエフタバムグラ、トキンソウなどが生育していた。

Fig.12 やや中栄養な溜池畔に生育するスズメノコビエ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
スズメノコビエは貧栄養〜中栄養な溜池畔に生育することが多い。
この溜池はやや中栄養だと思われる場所であり、外来種のメリケンムグラの侵入が見られるが、水際付近ではメリケンムグラの生育はややまばらであり、
オオホシクサ、ヌマカゼクサ、フタバムグラなどの在来種の生育箇所は多かった。
比較貧栄養な状態が保たれるのであれば、この溜池ではスズメノコビエが継続的に生育していくのは可能であると考えられる。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982 イネ科スズメノヒエ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.98. pl.80. 平凡社
北村四郎・村田源・小山鐡夫, 2004 イネ科スズメノヒエ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.372〜374. pl.98. 保育社
藤本義昭. 1995. イネ科スズメノヒエ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 174〜182. 藤本植物研究所
牧野富太郎, 1961 スズメノコビエ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 745. 北隆館
桑原義晴, 2008 スズメノヒエ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.361〜369. pls.26〜27. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. スズメノコビエ. 『六甲山地の植物誌』 235. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. スズメノコビエ. 『近畿地方植物誌』 180. 大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. スズメノコビエ. 兵庫県産維管束植物10 イネ科. 人と自然19:199. 兵庫県立・人と自然の博物館.

最終更新日:10th.Oct.2010

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