コモウセンゴケ | Dorosera spathulata Labill. | モウセンゴケ科 モウセンゴケ属 |
湿生植物 兵庫県RDB Cランク種 |
Fig.1 (兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) |
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Fig.2 (兵庫県姫路市・農道脇土手 2011.7/22) 日当たり良い酸性の湿地、粘土質の裸地などに生える多年草。 根生葉の葉身は広倒卵形で、幅2.5〜3.5mm、表面に紅色の長腺毛があり、基部はしだいに細くなり、葉身と葉柄の境は不明瞭である。 葉の基部につく托葉は膜質、3深裂し、中央の裂片はさらに0〜3浅裂する。 花茎は高さ5〜15cm、数個〜十数個の花が総状につき、花序と萼に短い腺毛が多い。花序の先はわらび状に巻く巻散花序で、花は片側につく。 萼片は長楕円形または披針形で長さ2.5〜3mm、先が鈍く、短腺毛がある。 花弁は淡紅色、倒卵形で長さ5〜8mm、花柱は3個で先が2深裂し、柱頭は頭状。 以下の2種に似るが、特にトウカイコモウセンゴケに酷似する。 モウセンゴケ(D. rotundifolia)は根生葉には明瞭な柄があり、葉身は卵状円形、花はふつう白色。 トウカイコモウセンゴケ(D. tokaiensis)はモウセンゴケとコモウセンゴケによる雑種起源の種。区別点については トウカイコモウセンゴケのページを参照。 近似種 : モウセンゴケ、 トウカイコモウセンゴケ ■分布:本州(宮城県以南)、四国、九州、沖縄 ・ 中国、台湾、東南アジア、オーストラリア ■生育環境:湿地、溜池畔、粘土質の裸地など。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:市内ではトウカイコモウセンゴケは産するが、コモウセンゴケは見られない。 |
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↑Fig.3 ロゼット。(兵庫県加東市・溜池土堤下部 2010.8/8) 根生葉を四方に広げ、ロゼットを形成する。葉には腺毛が生え、葉縁のものほど長い。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) 葉は酷似するトウカイコモウセンゴケよりも小さい。 葉身は広倒卵形で、基部はしだいに狭くなって葉柄へと流れ、葉身と葉柄の境は不明瞭となる。 葉の全長に対する、腺毛のある部分の比率はおよそ0.73となる。トウカイコモウセンゴケではこの比率がおよそ0.57となる。 |
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↑Fig.5 托葉。(兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) 葉の基部には膜質の托葉がつき、その形状がトウカイコモウセンゴケとのよい区別点となる。 コモウセンゴケの托葉は3深裂し、中央の裂片はさらに0〜3浅裂する。右のものは中央裂片がさらに2中裂している。 トウカイコモウセンゴケの托葉は4〜多裂片状、最外裂片の外縁に鋸歯がある。 |
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↑Fig.6 花序。(兵庫県姫路市・農道脇湧水湿地 2011.8/30) 花序は巻散花序。つぼみを巻き込んだ花序の様子がサソリの尾のようにも見えるのでサソリ尾状花序とも呼ばれる。 花序はほどけながら開花し、開花する花は常に花序の最も高い位置にくる。 花序中軸、花柄、萼には短腺毛が生える。 |
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↑Fig.7 コモウセンゴケの花。(兵庫県姫路市・農道脇湧水湿地 2011.8/30) 花は日当たりよい午前中に開花し1日花。花弁は淡紅色、倒卵形で長さ5〜8mm。 花柱は3個で先が2深裂し、柱頭は頭状。雄蕊は5個で花糸は直立する。 |
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↑Fig.8 熟した花序。(兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) 花序と萼には短い腺毛が生える。花後も枯れた花弁が宿存する。刮ハは長さ約1.5mmで、3裂する。 |
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↑Fig.9 種子。(兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) 種子は紡錘形で長さ約0.4mm、微凸端、暗褐色、表面には格子紋がある。 |
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↑Fig.10 種子拡大。(兵庫県姫路市・農道脇の土手 2011.7/22) |
生育環境と生態 |
Fig.11 刈り込まれた溜池土堤の下部に生育するコモウセンゴケ。(兵庫県姫路市・溜池土堤下部 2011.7/18) 刈り込まれたネザサを主体とする溜池土堤下部の湧水のにじむ箇所で多くの個体が生育している。 同所的にノギラン、イシモチソウ、ヤマトキソウ、キキョウ、カキラン、ノテンツキ、ヤマイ、アリノトウグサなどが見られた。 |
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Fig.12 農道脇の粘土質の裸地状の土手に生育するコモウセンゴケ。(兵庫県姫路市・農道脇土手 2011.7/22) 湧水のにじむ礫混じりの粘土質の半裸地状の土手にトウカイコモウセンゴケとともにコモウセンゴケが生育していた。 コモウセンゴケはネザサ、ノギラン、アリノトウグサなどが生育するやや乾いた場所に生育しているが、トウカイコモウセンゴケは表水のあるようなより湿り気の多い場所で イヌノハナヒゲ、ヤマイ、アリノトウグサなどとともに生育していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 佐竹義輔. 1982. モウセンゴケ科モウセンゴケ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.120〜121. pls.115〜116. 平凡社 村田源, 2004 モウセンゴケ科モウセンゴケ属. 北村四郎・村田源 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.167〜168. pls.39. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コモウセンゴケ. 『六甲山地の植物誌』 127. (財)神戸市公園緑化協会 中村俊之・植田邦彦, 1991. 東海丘陵要素の植物地理 U.トウカイコモウセンゴケの分類学的研究. 植物分類地理 42:125〜137. 中村俊之・角野康郎, 1993. 兵庫県南部におけるコモウセンゴケとトウカイコモウセンゴケの分布. 植物分類地理 44:75〜76. 黒崎史平・高野温子・中村俊之 2001. コモウセンゴケ. 兵庫県産維管束植物3 モウセンゴケ科. 人と自然12:151. 兵庫県立・人と自然の博物館 兵庫県 2010. コモウセンゴケ. 兵庫の貴重な自然・兵庫県版レッドデータブック(植物・植物群落) 42. (財)ひょうご環境創造協会 最終更新日:4th.Sept.2011 |