コシロネ Lycopus ramosissimus  Makino var.japonicus  (Matsumura et kudo)Kitamura シソ科 シロネ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・池畔 2006.9/21)

Fig.2 (滋賀県・用水路脇 2012.10/1)

中栄養な湿地、溜池畔に生える多年草。
地下に細長い根茎を伸ばして殖え、茎は下部で枝分かれして直立し、高さ15〜60cm、4稜あり、茎上部では上向きの突起があり、ざらつく。
葉は対生し、長さ2〜4cm、幅1〜2cm、披針形〜菱状卵形で、粗い鋸歯があり、鈍頭。
花期には唇形の花を葉腋に密につけ、花冠の長さ約3mm、花柄はなく、5深裂する尖った萼片が目立つ。
果実は4分果で、痩果は長さ1.5mm、広いくさび形。

茎が著しく分岐して這うものはヒメサルダヒコ(var. ramosissimus)とされ、葉もコシロネより小型であるという。
いまひとつ実態がつかめないのだが、Fig.12 のようなものがそれに類するのかもしれない。
近似種 : ヒメシロネシロネ、 エゾシロネ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、満州、中国
■生育環境:中栄養な湿地、溜池畔など。
■花期:8〜9月
■西宮市内での分布:市内では1ヶ所でのみ確認。ヒメシロネよりも分布は局所的。自生地では群生が見られ個体数は多い。

Fig.3 茎は4稜あり、上部ではざらつく。(西宮市・水辺湿地林内 2007.8/19)

Fig.4 時に茎が倒れ込み、横走する匍匐枝を盛んに出して広がる個体が見られる。(西宮市・池畔 2007.10/20)

Fig.5 花は葉腋に数個づつつく。(西宮市・水辺湿地林内 2007.8/19)

Fig.6 花冠は筒状で4中裂し、雄蕊は2個。(西宮市・水辺湿地林内 2007.8/19)
  花後には、4深裂した萼の中から、4分果する果実が見える。

Fig.7 春先に地下茎から出芽したコシロネ。(西宮市・池畔 2007.4/13)
  ヒメシロネの新芽に似るが、ヒメシロネほど鋸歯は数多く切れ込まず、切れ込みも浅い。

Fig.8 果実期は10〜11月。日なたの個体は紫色に紅葉することがある。(滋賀県・内湖畔 2007.11/4)
  画像のものは変色する途中の過程のもの。先ず茎の稜や果実が色付き、続いて寒さに当たって葉が色を変える。

Fig.9 冬期、枯れ残ったコシロネの果実と茎。(西宮市・池畔 2007.1/18)
  開いた萼筒の中には、まだ4分果した痩果が残っているのが見られた。


Fig.10,11 種子。(兵庫県篠山市・休耕田 2014.11/28)
  種子は分果で、長さ約1.5mm、3稜ある広倒卵形。
  種子の中央稜部分(4分果の内側の部分)から下部にかけて、白色〜透明となる乳頭状の付属物がある。

西宮市内での生育環境と生態
現在、画像はありません。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 琵琶湖畔の岩上の割れ目で生育していたコシロネ。(滋賀県・湖畔 2007.11/4)
葉身は丸みを帯び、鋸歯は大きく鈍頭〜円頭で、まるで別種。見つけたときにはすぐにはコシロネだと思わなかった。
葉は2cm以下と小さく、背丈も矮小化している。非常に特殊な例だとおもう。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
村田源, 1981. シソ科シロネ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.82〜83. pl.69. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 シソ科シロネ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.170〜171. pl.52. 保育社
牧野富太郎, 1961 サルダヒコ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 535. 北隆館
浅野文 2001. シソ科シロネ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1210〜1211. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コシロネ. 『六甲山地の植物誌』 186. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. コシロネ. 『近畿地方植物誌』 44. 大阪自然史センター

最終更新日:5th.Nov.2014

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