ニコゲヌカキビ | Panicum acuminatum Sw. | イネ科 キビ属 |
湿生植物・帰化植物 |
Fig.1 (西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 砂防用に植栽されたことにより、帰化がはじまった北アメリカ原産の多年草。 同じく帰化種であるホウキヌカキビ(P. scoparium)に似るが、全体に小型で、葉幅は狭く、腺体がないことにより区別される。 帰化が報告される例はホウキヌカキビよりも少ないと言われるが、六甲山周辺では多く見かけられるようである。 河原や荒れ地、道端などに現れるが、法面などでまとまって見られる場合は植栽されているものかもしれない。 茎ははじめ直立、または斜上し、高さ20〜70cmになり、主花茎は花後に倒れ込んで、節から短い花茎を次々にのばす。 根生葉は茎葉よりも著しく短く、長さ2〜3cm、有毛。茎葉は長さ5〜10cm、幅4〜10mm、披針形で鋭頭、毛があり、葉裏の毛は特に長い。 葉舌は0.2mmで、両端付近は長さ約3mmの長毛列となり、葉鞘には斜上する長毛が生える。 花序枝は散開し、先端に1小花からなる小穂を1個つける。花序枝にはチゴザサに見られるような腺点はない。 小穂は1.5〜1.7mmと小さく、倒卵形、多毛で先端は鈍頭〜やや円頭、赤紫色〜紫褐色を帯びる。 近似種 : チゴザサ、 ハイチゴザサ、 ホウキヌカキビ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ■生育環境:荒れ地や河川敷など。 ■花期:7〜9月 ■西宮市内での分布:いまのところ六甲山系の1ヶ所で確認している。 |
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↑Fig.2 荒れ地や河原に生育するニコゲヌカキビ。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 開花初期、花茎は直立、または斜上するが、結実後、主花茎は倒れ込み、節から新たな花茎を出す。 |
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↑Fig.3 花序。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 花序中軸には毛が多く、花序枝は散開する。花序はチゴザサ属のものに似るが、チゴザサに見られるような腺点はない。 |
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↑Fig.4 小穂。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 小穂は倒卵形で、長さ1.5〜1.7mm。表面には毛が多く、毛の基部は凸瘤となる。 第2穎(第2苞穎)には明瞭な7脈が見られる(画像下左)。 |
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↑Fig.5 小穂の構造。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 小穂は1両性小花からなるが、本来は2小花あったものが、1個は護穎を残して退化したもの。 第3穎が退化した小花の名残りである。 ヌカキビ属の小穂は、皆このような構造をしている。 |
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↑Fig.6 第4・5穎に包まれた穎果。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 第4穎(護穎)側から見たもの。護穎には3脈あるのが判る。 第4穎(護穎)と第5穎(内穎)に堅固に包まれた内部の穎果は、この状態のまま落果する。 イネ科の果実は、果皮と種皮が分かちがたく癒合し、これを穎果と呼ぶ。 |
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↑Fig.7 葉舌。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) 葉舌は0.2mmと目立たず、縁にある長毛列が目立つ。 |
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↑Fig.8 葉裏や葉鞘には開出、または斜上する毛が多い。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) |
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↑Fig.9 節の直下は輪状に毛のない部分がある。(西宮市・砂防ダム内 2007.8/30) ホウキヌカキビでは、この部分に腺点がある。 |
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↑Fig.10 開花後期になると最初の花茎は倒れ込んで、節から新たな花茎を出し出穂する。(西宮市・砂防ダム内 2007.8/2) |
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↑Fig.11 ニコゲヌカキビの実生苗。(西宮市・砂防ダム内 2007.8/2) 確実に帰化定着している様子がうかがわれる。 |
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↑Fig.12 出穂前のニコゲヌカキビ。(西宮市・砂防ダム内 2007.7/19) |
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↑Fig.13 ニコゲヌカキビの越冬状態。(西宮市・登山道脇 2008.3/9) 地面に張り付いた小さな草体で越冬。葉身は長卵状披針形で、葉裏と越冬芽は紫色を帯びる。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 勝山輝男. 2001. イネ科キビ連キビ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 pp.282〜284. pls.149〜150. 平凡社 清水三重子・藤本義昭, 1982 ニコゲヌカキビ. 『六甲の自然』 226〜227. 神戸新聞出版センター 藤本義昭. 1995. イネ科キビ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 170〜174. 藤本植物研究所 佐藤恭子. 2001. イネ科キビ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 332〜334. 神奈川県立生命の星・地球博物館 桑原義晴. 2008. ニコゲヌカキビ. 『日本イネ科植物図譜』 pp.353,358. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ニコゲヌカキビ. 『六甲山地の植物誌』 234. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ニコゲヌカキビ. 『近畿地方植物誌』 180. 大阪自然史センター *ニコゲヌカキビに関して神奈川県在住のmasaさんの掲示板「花なんでも掲示板」上での「花の詩」さんの疑問からはじまり、 masaさんに同定のお世話になりました。masaさん、花の詩さんには感謝の意を表明いたします。ありがとうございました。 |