ハイチゴザサ Isachne nipponensis  Ohwi. イネ科 チゴザサ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)

低山〜山地の湿地に生育する1年草。明るい池畔などにも見られるが、木陰などの半日陰を好む。
草体はチゴザサよりもかなり小さく、高さ5〜10cm。
稈の下部は地を這い、節から発根し、稈の途中から斜上して秋に頂部に円錐花序を付ける。
図鑑などでは葉の長さ1.5〜3cmとあるが、3cmもあるようなものは見かけたことがなく、1.5〜2cmのものが多い。
葉には両面に疎らな毛が生え、節にも毛がある。
小穂は1.3mm前後で、毛の生えた苞穎につつまれた2つの小花がある。

チゴザサ(I. globosa)に似るが、チゴザサは茎が直立し、小穂の柄には腺点があり、葉は披針形でほとんど無毛。
また、ヒナザサ(Coelachne japonica)は軟弱で小型。葉鞘は茎をゆったりと包み、葉面の脈は浮き出て、小穂は1小花からなるものが混じる。
近似種 : チゴザサヒナザサニコゲヌカキビ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州
■生育環境:低山〜山地の湿地や池畔。
■花期:9〜10月
■西宮市内での分布:市内では確認できていないが、六甲山系に自生していてもおかしくはない。

Fig.2 湿地の表面を覆うようにして群生し、背丈は低い。(兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)

Fig.3 全草の様子。(兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)
  稈の下部は横に這い、節から発根する。葉は互生し、斜上した稈の上部に円錐花序を付ける。

Fig.4 葉の両面に毛が疎らに生える。表面の毛は裏面の毛よりもかなり長い。(兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)
  葉鞘の開口部付近には長い毛が生える。

Fig.5 節にも毛が生える。(兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)

Fig.6 小穂は長さ1.3mm前後。苞穎の内部には2つの小花がある。(兵庫県三田市・湿地 2007.10/7)
  この2個の小花は硬く密着する護穎と内穎に包まれ、果実(穎果)は熟すと護穎と内穎をつけたまま落果する。
  苞穎には毛が生え、辺縁付近の長い毛の根元には凸瘤が見られる。

生育環境と生態
Fig.7 林道脇の小湿地に生育するハイチゴザサ。(長崎県 2007.10/4)
半日陰の林道脇の小湿地をハイチゴザサがカーペット状に広がっていた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科チゴザサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.96〜97. pls.78. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科チゴザサ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.362〜363. pls.60. 保育社
藤本義昭. 1995. イネ科チゴザサ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 134〜136. 藤本植物研究所
古川冷實. 2001. イネ科チゴザサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 346〜348. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 チゴザサ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.276〜280. pls.22. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ハイチゴザサ. 『六甲山地の植物誌』 231. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ハイチゴザサ. 『近畿地方植物誌』 176. 大阪自然史センター

最終更新日:8th.Nov.2009

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