サワトラノオ | Lysimachia leucantha Miq. | サクラソウ科 オカトラノオ属 |
湿生植物 環境省絶滅危惧TB類(EN) |
Fig.1 (大阪府・河川敷 2013.5/15) 休耕田、用水路脇、河川敷や湿地などに生育する多年草。 地下に根茎を横走し、地上茎を直立し、群生する。茎は円柱形で稜があり、無毛。高さ40〜80cm。 葉は互生し、倒披針状線形または広線形で、先は鈍いかややとがり、基部は次第に狭くなり、柄はほとんどないか無柄。 葉の長さ2〜4.5cm、幅3〜5mm。葉肉内に黒色の腺点が散らばる。 花は総状花序に多数つき、小花柄は花時に6〜10mm、果期に1.5〜2cmとなる。苞は線形で花後に伸びる。 萼は5深裂し、裂片は披針形で鋭尖頭、長さ約3mm、背面には黒点がある。 花冠は白色で、ふつう5裂し長さ4mm、裂片は倒卵形で、円頭。雄蕊はふつう5個。花糸は葯より長く、その背面について丁子形となる。 葯は花粉とともに淡紫色。刮ハは球形で径2〜2.5mm、萼裂片よりも短い。 よく見られるヌマトラノオ(L. fortunei)は茎に稜がなく、葉肉内に黒点はなく、葉はやや革質、花期は7〜8月。 トウサワトラノオ(L. candida)は幅7〜10mmの細いへら形〜倒披針形の葉を持ち、葯や花粉は黄色。 オカトラノオ(L. clethroides)が生育する。小花は密に集合して先の垂れた太い花序となり、葉幅は2〜5cmと広い。 ノジトラノオ(L. barystachys)は花序の先は垂れ、葉や花序に淡褐色の毛が多い。花期は6月。 上記のうちトウサワトラノオ、ノジトラノオは稀少種で、自生地は局限され、絶滅危惧種となっている。 他にヌマトラノオとオカトラノオの種間雑種イヌヌマトラノオ、ノジオカトラノオとオカトラノオの種間雑種ノジオカトラノオなどがある。 近似種 : ヌマトラノオ、 トウサワトラノオ、ノジトラノオ、 オカトラノオ ■分布:本州、九州 ・ 朝鮮半島 ■生育環境:休耕田、用水路脇、河川敷や湿地など。 ■花期:4〜5月 ■西宮市内での分布:兵庫県内での生育は確認されていない。 |
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↑Fig.2 草体基部。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 日当たりよい場所に生育するものは、草体の基部付近が赤味を強く帯びる。 また、基部付近に生じる葉は長いヘラ形となり、一見すると長い柄があるように見える。 |
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↑Fig.3 茎と葉。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 草体はヌマトラノオよりも柔らかく、茎は円柱形で稜があり、無毛。 葉は互生し、倒披針状線形または広線形で、やわらかい紙質、先は鈍いかややとがり、基部は次第に狭くなり、柄はほとんどないか無柄。 |
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↑Fig.4 開花したサワトラノオ。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 開花は春〜初夏にかけてで、この仲間ではトウサワトラノオとともに開花期が早い。 花は総状花序に多数つき、下から上へと咲いていく。 |
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↑Fig.5 花。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 花冠は白色で5裂し、裂片は倒卵形で、円頭。雄蕊はふつう5個。花糸は葯より長く、その背面について丁子形となる。 葯は花粉とともに淡紫色で、トウサワトラノオと区別される。 この場所のものは花披が6裂するものや、雄蕊が6個あるものが比較的多く見られた。 |
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↑Fig.6 長い花柱。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 花柱は長く、つぼみの頃から花冠から先が飛び出している。 |
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↑Fig.7 花後の花序。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 花後、花柄とその基部についた苞葉が伸びる。その後、刮ハが成熟する。 |
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↑Fig.8 開花株の周辺で見られた実生苗。(大阪府・河川敷 2013.5/15) |
生育環境と生態 |
Fig.9 移植維持されているサワトラノオ。(大阪府・河川敷 2013.5/15) ここに生育しているものは、河川敷のアシ原を掘削した際に、埋土種子から生じたものを移植したものである。 元の自生場所は密生するアシ原となるため、アシの生育のない場所に移植され、保護管理されている。 移植されている場所は大雨でも水没しないよう土が盛られており、今年になって分散移植されたと思われる個体も見られた。 移植株の周辺には多くの実生苗も見られ、生育範囲が広がることを期待したいものだ。 |
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Fig.10 アゼナルコの株元に生育するサワトラノオ。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 移植によるものか、実生が生育したものかは不明であるが、Fig.9とは離れた場所に生育している。 周辺は浅い水溜りが広がる湿地となっており、ミコシガヤ、フトイ(狭義)、カンガレイ、コゴメイ、コウガイゼキショウ、ハリコウガイゼキショウ、 ヒロハノコウガイゼキショウ、スズメノテッポウ、イヌタデ属sp.数種、タネツケバナ、スカシタゴボウ、タコノアシ、ミズハコベ、ムシクサ、 オオアブノメ、アゼナsp.、ムラサキサギゴケ、ミゾコウジュなどが生育している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 山崎敬, 1981. サクラソウ科オカトラノオ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.16〜19. pls.12〜14. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004 サクラソウ科オカトラノオ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花編』 p.227〜230. pl.68. 保育社 牧野富太郎, 1961 サワトラノオ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 477. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 ヌマトラノオ・サワトラノオ. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 p.121. pl.119. 保育社 永田芳男, 2003. サワトラノオ・トウサワトラノオ. 『レッドデータプランツ』 186〜187. 山と渓谷社 最終更新日:21st.May.2013 |