シデアブラガヤ | Scirpus wichurae Boecklr. form. cylindricus (Makino) Nemoto |
カヤツリグサ科 クロアブラガヤ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (兵庫県三田市・湿地 2012.8/31) 湿地、溜池畔などの日当たりのよい湿った場所に生育する大型の多年草。 安定した湿原などよりも、攪乱を受ける湿地や、沼などが湿地化する初期段階などに見られる。 根茎は短く叢生し、茎は高さ1〜1.5mになり、質は硬い。 葉は長さ20〜40cm、幅5〜15mm。 花序は2〜6個、頂生または側生し、数回分枝し、多数の小穂を密につける。 頂花序の小穂は花序枝先端に1〜2個まれに3個づつつき、線状披針形〜長楕円形、アブラガヤよりもかなり細長く、長さ5〜9mm、幅1.3〜1.8mm、赤褐色。 側花序につく小穂は下方の節にむかうほど短くなり、最下では球形。雌蕊柱頭は3岐する。 その他の特徴はアブラガヤとほとんど変わらない。 近似種 : アブラガヤ、 アイバソウ、 エゾアブラガヤ(ヒゲアブラガヤ) ■分布:本州、四国、九州 ■生育環境:湿地、溜池畔など。 ■果実期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では確認していない。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 全体の大きさや、葉序、花序の構造はアブラガヤやアイバソウと全く変わりない。 |
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↑Fig.3 頂花序。(兵庫県三田市・湿地 2012.9/21) 小穂は長さ5〜9mm、幅1.3〜1.8mm、赤褐色、一見不稔のように見えるが結実は正常である。 |
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↑Fig.4 標本の頂花序。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 花序はよく分枝し、アブラガヤに似るが、小穂が細長いため、よりスマートに見える。 |
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↑Fig.5 頂花序の一部を拡大。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 小穂は花序枝の各先端部に1〜2個まれに3個つき、狭披針形〜長楕円形、長さ5〜9mm、幅1.3〜1.8mm。 小穂は細いため、一見不稔と感じることもある。 |
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↑Fig.6 小穂。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 小穂は熟すと赤褐色となり、伸びた刺針状花被片が鱗片の間から出る。 |
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↑Fig.7 側花序(最下のもの)。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 側花序の小穂は下方の節につくものほど短くなる。 |
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↑Fig.8 痩果。(兵庫県三田市・湿地 2010.9/16) 痩果は扁3稜形で、長い縮れた刺針状花被片があり、それらの特徴はアブラガヤとほとんど変わらない。 画像の痩果の上縁には上向きの刺状突起が見える。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 痩果。(兵庫県三田市・湿地 2012.9/21) 溜池直下の野生動物による撹乱の多い湿地に、アブラガヤ、アイバソウと混生していた。 個体数はわずか1個体のみで、小穂が細いので、アブラガヤとアイバソウの種間雑種かと思われたが、痩果は正常に結実していた。 湿地自体の自然度は比較的高く、ヌマガヤ、イトイヌノハナヒゲ、ノハナショウブ、シロイヌノヒゲ、ミズギボウシなどが生育していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.176〜179. pls.160〜162. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科クロアブラガヤ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.219〜222. pl.143. 保育社 堀内洋. 2001. カヤツリグサ科クロアブラガヤ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 431〜434. 神奈川県立生命の星・地球博物館 星野卓二・正木智美, 2003 アブラガヤ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 112,113. 山陽新聞社 谷城勝弘, 2007 クロアブラガヤ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 168〜170. 全国農村教育協会 村田源. 2004. アイバソウ. 『近畿地方植物誌』 167. 大阪自然史センター 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. シデアブラガヤ. 『六甲山地の植物誌』 253. (財)神戸市公園緑化協会 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. シデアブラガヤ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:179. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:4th.Oct.2010 |