アイバソウ | Scirpus wichurae Boecklr. form. wichurae |
カヤツリグサ科 クロアブラガヤ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (兵庫県三田市・湿地 2007.8/23) 湿地、溜池畔などの日当たりのよい湿った場所に生育する大型の夏緑性の多年草。やや山地性のように思われる。 安定した湿原などよりも、攪乱を受ける湿地や、沼などが湿地化する初期段階などによく見られる。 根茎は短く叢生し、茎は高さ1〜1.5mになり、緑色、平滑で質は硬い。 葉は根生および茎に互生し、長さ20〜40cm、幅5〜15mm、質は強剛で、表面は平滑がだ縁はざらつく。 茎上には3〜4個の葉がつき、その下部は長い葉鞘となって茎を包む。 花序は3〜5個、頂生または側生し、数回分枝し、多数の小穂を密につける。 小穂は花序枝先端に1個づつつき、長楕円形、アブラガヤよりもわずかに細長く、赤褐色。 痩果は広楕円形で前後に圧せられ平滑。雌蕊柱頭は3岐する。 近似種に関してはアブラガヤの項を参照。 近似種 : シデアブラガヤ、 アブラガヤ、 エゾアブラガヤ(ヒゲアブラガヤ) ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:湿地、溜池畔など。 ■果実期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では中・北部の山間の湿地で見られる。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(西宮市・溜池畔 2010.8/13) 葉は根生するものと、茎につくものとがある。花序は茎頂に大きなものがつき、上部の節からは小型の側花序が出る。 |
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↑Fig.3 アイバソウの花序。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2007.8/5) 花序はよく分枝し、小穂は花序枝の各先端部に単生する。 |
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↑Fig.4 小穂。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2007.8/5) |
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↑Fig.5 浅瀬で生育する成長期のアイバソウ。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2008.6/24) 前年度の花茎が立ち枯れたまま残っている。花序は翌春まで残っていることも多い。 |
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↑Fig.6 コマツカサススキとアイバソウの混生地に見られた草体。(兵庫県篠山市・管理放棄された溜池 2009.9/1) 小穂は痩せて長く不稔で、両種の種間雑種であると思われる。産地名を冠してコンダアブラガヤとでも仮称しておくことにする。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.7 群生するアイバソウ。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2007.9/13) 砂防ダム内にできた砂質の湿地にヒメガマやツルヨシ、アシに囲まれて群生していた。 アイバソウ群落内にはヘラオモダカ、タマコウガイゼキショウ、ホタルイなどが見られる。 |
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Fig.8 溜池畔に生育するアイバソウ。(西宮市・溜池畔 2010.8/13) 低山の山間にある溜池畔の減水した裸地に多数の個体が生育していた。 溜池畔には多数のハリイ、イヌノハナヒゲ、少数のエゾアブラガヤ、イヌノヒゲsp.、ヌマトラノオ、サワヒヨドリ、陸生形のフトヒルムシロが生育する。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 コマツカサススキと混生するアイバソウ。(兵庫県篠山市・溜池跡湿地 2012.10/11) 画像手前がコマツカサススキ、後方がアイバソウで、ここでは両種の種間雑種と思われる個体(Fig.6)も見られる。 溜池跡地はいくつかの水溜りと、緩やかな湿地となっており、ヤマテキリスゲが優占している。 アイバソウは湿地内の水路沿いや水溜りの脇にコマツカサススキと混生している。 湿地には谷からの細流のほか、周囲から湧水がにじみ出しており、チダケサシ、ヌマトラノオ、ムカゴニンジン、ホザキノミミカキグサ、 モウセンゴケ、シロイヌノヒゲ、イトイヌノヒゲ、マツバスゲ、クサスゲ、サトヤマハリスゲ、イトイヌノハナヒゲ、イヌノハナヒゲ、 ヒメシダが見られ、周辺にはキガンピ、ウメモドキ、イヌツゲなどの低木が生育している。 水溜りにはフトヒルムシロのほか、2010年まではヒツジグサが見られたが、水量の減少とともに消失した。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.176〜179. pls.160〜162. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科クロアブラガヤ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.219〜222. pl.56. 保育社 牧野富太郎, 1961 アイバソウ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 766. 北隆館 堀内洋. 2001. カヤツリグサ科クロアブラガヤ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 431〜434. 神奈川県立生命の星・地球博物館 谷城勝弘, 2007 クロアブラガヤ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 168〜170. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アイバソウ. 『六甲山地の植物誌』 253. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. アイバソウ. 『近畿地方植物誌』 167. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. アイバソウ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:179. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:3rd.Mar.2014 |