ドロイ Juncus gracillimus  (Buchen.) V. Krecz. et Gontsch. イグサ科 イグサ属
湿生植物  兵庫県RDB Bランク種

Fig.1 (兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)

Fig.2 (兵庫県播磨・海崖の湧水溜まり 2011.6/15)

海岸近くの日当たり良い湿地などに生育する多年草。
根茎は横にはい、節間は短く叢生する。全草クサイに似るが、クサイよりも大きく粉白を帯びる。
茎は高さ60〜70cm、円筒状、葉は線形でイネ科状、上面は凹み、鞘部は短く、葉耳は膜質で小型。
花序は頂生し、凹状集散で、大きいものでは長さ15cmになり、最下の苞葉は花序よりも長い。
花被片は卵形で鈍頭、長さ2〜3mm、背部は暗紫褐色、その両側は赤褐色。
雄蕊は6個で、花被片の約2/3、葯は花糸とほぼ同長。
刮ハは褐色または赤褐色で楕円形〜倒卵形、やや光沢があり、花被片より長い。
種子は倒卵状楕円形で長さ0.5mm前後。
近似種 : クサイヒメコウガイゼキショウ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、樺太、シベリア東部
■生育環境:海岸近くの日当たり良い湿地など。
■花期:5〜7月
■西宮市内での分布:市内では見られない。

Fig.3 全草標本。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  全草クサイに似るが、クサイよりも大きい。

Fig.4 基部。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  根茎は横にはい、節間は短く叢生する。基部の鞘は淡色〜淡褐色。

Fig.5 葉鞘と葉耳。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  葉鞘は短く、葉耳は膜質で小型。

Fig.6 花序。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  花序は頂生し、凹状集散形、最下の苞葉は花序よりも長い。

Fig.7 花序。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  見つけたのが夕刻であったため、花は閉じた後で、3岐する柱頭が残っていた。

Fig.8 花序の一部拡大(分花序)。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  花には苞が2個つき、花序枝の分岐部にも苞がある。

Fig.9 小花。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  花被片は卵形で鈍頭、長さ2〜3mm、背部は暗紫褐色、その両側は赤褐色。開花期生時の中肋は緑色。

Fig.10 花被片と雄蕊。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
  外花被片(左)は内花被片(右)よりも長い。
  雄蕊は6個で、花被片の約2/3、葯は花糸とほぼ同長。

Fig.11 果実形成期の分花序。(兵庫県播磨・海浜の湿地 2011.6/15)
  刮ハは楕円形〜倒卵形、やや光沢があり、花被片より長い。花被片は卵形で鈍頭。

生育環境と生態
Fig.12 海岸岩場の湿地に群生するドロイ。(兵庫県播磨・湿地 2011.6/5)
漁港脇の高潮域岩棚上に泥が溜まっており、そこにドロイがかたまって密生している。
泥はやや湿っているが、湧水ではなく、高潮によって供給される海水と雨水によっていると思われる。
周囲には他に湿生植物は見られず、ハマボッスやハマナデシコなどの海浜植物が生育している。

Fig.13 海岸岩場の湧水の溜まりに生育するドロイ。(兵庫県播磨・海浜岩礁 2011.6/15)
海浜背後の海崖からの湧水によって岩棚に水溜りができており、その周囲にドロイが生育している。
同所的には湿地的環境とはあまり関係のないホコガタアカザのほか、オオオナモミ、タガラシ、コセンダングサが見られた。

Fig.14 高潮域岩礁にハマゴウとともに生育するドロイ。(兵庫県播磨・海浜岩礁 2011.6/15)
海崖の発達した岩礁地帯の岩溝に湧水が見られる場所にハマゴウ、ママコノシリヌグイ、ハマボッスなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
佐竹義輔, 1982 イグサ科イグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.67〜71. pls.60〜64. 平凡社
村田源, 2004 ドロイ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.163. 保育社
村田源. 2004. ドロイ. 『近畿地方植物誌』 147. 大阪自然史センター
千川慶史・黒崎史平・高橋晃 2007. ドロイ. 兵庫県産維管束植物9 イグサ科. 人と自然18:110. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:16th.Jun.2011

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