タニタデ Circaea erubescens  Franch. et Sav. アカバナ科 ミズタマソウ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)

山地の湿った林床、山地の半日陰の湿地に生育する多年草。細長い根茎がある。
茎は高さ20〜50cm、ふつう紅色を帯る。葉は対生し、長卵形〜卵形、長さ3〜8cm、鋭尖頭、縁に低い鋸歯がある。
花序は長さ6〜10cm、無毛。萼裂片は赤色。花弁は白色で、縁はやや鋸歯状となる。果実は長卵形で、径2〜2.5mm、溝はない。

ミズタマソウC. mollis)は茎に下向きの細毛があり、花柄に毛があり、果実には溝がある。
同属の種との推定種間雑種に以下のものがある。
オオタニタデC. x dubia)はウシタキソウとの種間雑種。
ミズタマタニタデC. erubescens x C. mollis)はミズタマソウとの種間雑種。
タニタデモドキC. x decipiens)はエゾミズタマソウとの種間雑種。
マルヤマタニタデC. x mentiens)はミヤマタニタデとの種間雑種。
近似種 : ミズタマソウ、 ウシタキソウ、 エゾミズタマソウ、 ミヤマタニタデ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 中国、台湾
■生育環境:山地の湿った林床、山地の半日陰の湿地など。
■花期:7〜9月
■西宮市内での分布:市内北部の河川に面した林床にわずかに見られる。

Fig.2 茎。(兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)
  茎は直立して細く、紅色を帯びることが多く、ほぼ無毛。

Fig.3 葉。(兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)
  葉は対生し、長卵形〜卵形、長さ3〜8cm、鋭尖頭、縁に低い鋸歯がある。

Fig.4 茎上部で枝を分け、茎頂と枝先に花序をつける。(兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)

Fig.5 花序。(兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)
  総状花序で、長さ6〜10cm、無毛。

Fig.6 花。(兵庫県香美町・湿地 2016.8/16)
  花は全て2数性。萼裂片は赤色で2個。花弁は2個で、白色〜淡紅色。雄蕊2個。雌蕊の花柱は2個が合着して柱頭は2岐する。
  花弁の切れ込みは浅く、やや鋸歯状となる。

Fig.7 未熟な果実。(兵庫県香美町・湿地 2016.8/16)
  果実は長卵形で、径2〜2.5mm、溝はない。表面には先が鉤状になった刺毛を密生する。

西宮市内での生育環境と生態
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他地域での生育環境と生態
Fig.8 小湿地に生育するタニタデ。(兵庫県香美町・湿地 2016.8/16)
山間の開けた源頭部近くの小湿地に、タニタデが点在していた。
周囲は高原の草原地帯で、湿地周辺はサワフタギで囲まれ、アズマナルコ、グレーンスゲ、カキラン、チゴユリ、ニョイスミレ、バライチゴ、
ミツモトソウ、ゲンノショウコ、ヤマミゾソバ、サワオトギリ、クロバナヒキオコシ、オタカラコウ、ミゾシダ、サトメシダなどと生育していた。

Fig.9 谷筋に生育するタニタデ。(兵庫県香美町・谷筋林床 2015.8/2)
木漏れ日が差す温帯林の谷筋ではよくタニタデを見かける。
ここではシカの食害はまだ少なく、同所的にミヤマカンスゲ、ハバビロスゲ、ミゾソバ、ヤマアジサイ、ギンバイソウ、サンインネコノメ、
マルバネコノメソウ、ウワバミソウ、コモチイラクサ、ミヤマイラクサ、ミヤマカタバミ、イケマ、ヒナノウスツボ、ミゾホオズキ、ヤマルリソウ、
ミズタビラコ、モミジガサ、オオモミジガサ、タイミンガサ、リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、ナンゴクナライシダ、サカゲイノデ、
ウスゲミヤマシケシダ、ミゾシダ、キヨタキシダ、ヤマイヌワラビなどと生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般図書を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. アカバナ科ミズタマソウ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.268〜269. pls.244〜245. 平凡社
村上司郎. 2001. アカバナ科ミズタマソウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1044〜1045. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. タニタデ. 『六甲山地の植物誌』 162. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. タニタデ. 『近畿地方植物誌』 63. 大阪自然史センター
黒崎史平 2003. タニタデ. 兵庫県産維管束植物5 アカバナ科. 人と自然14:145. 兵庫県立・人と自然の博物館


最終更新日:28th.Aug.2016

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