トウバナ Clinopodium gracile  (Benth.) O. Kuntze シソ科 トウバナ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県篠山市・河川敷 2008.5/16)

Fig.2 (兵庫県丹波市・水田の畦 2011.5/25)

水田の畦や耕作地周辺の湿った場所、湿った道端などに普通な小型の多年草。
茎の細く長さ10〜30cmで方形。葉は長さ5〜15mmの柄があり、葉身は広卵形、長さ1〜3cm、幅8〜20mmで、やや無毛。
花序の花の基部につく小苞は線形〜線状披針形でごく小さく、萼は長さ3〜4mmで少し短毛があり、花冠は長さ5〜6mmで淡紅色。
分果はやや扁平な球形でやや平滑、長さ0.6mm前後。

近似種 : イヌトウバナ、 ヤマクルマバナ、 アオミヤマトウバナ、ミヤマトウバナ、 ヤマトウバナ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、朝鮮半島、中国、マレーシア、ジャワ島、インド
■生育環境:水田の畦、休耕田、溜池畔、耕作地周辺の湿った場所、湿った道端、庭先など。
■花期:5〜8月
■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に分布するが、南部には少ない。

Fig.3 トウバナの花序。(西宮市・湿った草地 2007.5/5)
  日当たりの良い場所の萼は赤紫色をおびることが多いが、日陰では緑色であることもある。

Fig.4 花冠。(西宮市・湿った草地 2007.5/5)
  花冠は唇形で、下唇は3裂し、淡紅色。

Fig.5 初夏に発芽した草体。(西宮市・庭先 2008.6/26)
  5月に結実した親株から当年実生した株は、分枝することなく5cmほど伸びるとすぐに開花、結実する。

Fig.6 仮輪の一部を拡大。下側から写す。(西宮市・庭先 2008.6/26)
  萼筒には短毛が生え、萼裂片の毛は目立つ。
  花柄基部にはごく小さな小苞がつく。


Fig.7,8 分果。(西宮市・庭先 2008.6/26)
  分果は扁平な球形で、茶褐色〜淡褐色。

Fig.9 葉身。(西宮市・庭先 2008.6/26)
  広卵形で毛がごくわずかに生える。

Fig.10 葉裏には腺点はない。(西宮市・庭先 2008.6/26)
  脈上にわずかな毛が見られる。

Fig.11 トウバナの越冬態。(西宮市・休耕田の畦 2009.2/15)
  常緑越冬し、小さくかたまった草体となる。葉面には夏期よりも軟毛が多いのがルーペで観察された。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.12 草地に生育するトウバナ。(西宮市・湿った草地 2007.5/5)
スギナ、ヘビイチゴ、ヒメジョオン、タチイヌノフグリ、ネザサなどとともに生育。里山でよく見かける光景だ。

Fig.13 庭先に生えたトウバナ。(西宮市・庭先 2008.4/25)
庭先や湿った道端などでもよく見かける。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
村田源, 1981. シソ科トウバナ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 pp.85〜86. pls.73〜74. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 シソ科トウバナ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 離弁花編』 pp.175〜177. pls.54. 保育社
牧野富太郎, 1961 トウバナ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 534. 北隆館
支倉千賀子. 2001. シソ科トウバナ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1212〜1214. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. トウバナ. 『六甲山地の植物誌』 184. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. トウバナ. 『近畿地方植物誌』 181. 大阪自然史センター
黒崎史平 2005. トウバナ. 兵庫県産維管束植物6 シソ科. 人と自然15:132. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:25th.Jun.2011

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