ツクシミノボロスゲ Carex nubigena  D.Don ex Tilloch et Taylor
  subsp. albata  T.Koyama var. franchetiana  Ohwi
カヤツリグサ科 スゲ属 ミノボロスゲ節
湿生植物
Fig.1 (神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)

山地や高原の草地、湿地に生育する多年草。
根茎は短く叢生し、大株となる。基部の鞘は黄緑色。葉は幅1.5〜2.5mm、有花茎より短い。有花茎は高さ15〜40cm、平滑。
花序は無柄の小穂を円柱状にやや密につけ、長さ1.5〜3cm、苞の葉身は線形。
小穂は雄雌性、長さ5〜8mm。雄鱗片は緑白色。雌鱗片は緑白色で、鈍頭〜鋭頭。
果胞は雌鱗片よりやや長く、卵形、長さ3.5〜5mm、幅1.5〜2mm、多数の脈があり、無毛、縁はざらつき、やや長い嘴となり、口部は2小歯。
痩果は卵円形で長さ約1.2〜1.5mm。柱頭は2岐する。染色体数は2n=112。
近似種 : ミノボロスゲヒメミコシガヤ

■分布:本州(中国地方)、九州。
■生育環境:山地や高原の草地、湿地など。
■果期:5〜8月
■西宮市内での分布:西宮市内には分布していない。
              兵庫県での記録はゴルフ場などの人工的な施設周辺のものが多く、自生かどうか疑わしい。

Fig.2 全草標本。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  根茎は短く叢生する。葉はふつう有花茎より短い。

Fig.3 基部。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  基部の鞘は黄緑色。葉鞘にはヒメミコシガヤのような横しわはない。

Fig.4 葉。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  葉は幅1.5〜2.5mm、有花茎より短く、葉縁はわずかにざらつく

Fig.5 有花茎。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  有花茎は平滑で、茎頂に花序が頂生する。

Fig.6 花序。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  花序は無柄の小穂を上部でやや密に、下部ではややまばらにつけ、長さ1.5〜3cm、苞の葉身は線形で花序より短いか同長、稀に長い。

Fig.7 小穂。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  小穂は雄雌性、長さ5〜6mm。小穂上部の雄花部は数花からなり短く、下方の雌花部は3〜7花からなる。

Fig.8 小穂の一部拡大。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  果胞は雌鱗片よりやや長く、雌鱗片の中肋上部には上向きの小歯が並びざらつく。果胞から出た柱頭は2岐する。

Fig.9 鱗片と果胞。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  雌鱗片は膜質で、中肋近くは褐色部分があり、鋭頭。

Fig.10 果胞。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  果胞は卵形、長さ3.5〜5mm、幅1.5〜2mm、多数の脈があり、無毛、縁はざらつき、やや長い嘴となり、口部は2小歯。
  両側の翼はごく狭く、基部はやや海綿状に肥厚し、上部は嘴となり、口部は2小歯、脈が赤褐色を帯びる。

Fig.11 痩果。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
  痩果は卵円形で長さ約1.2〜1.5mm。

生育環境と生態
Fig.12 道端に生育するツクシミノボロスゲ。(神戸市・ゴルフ場の路傍 2017.6/15)
ゴルフ場の車道脇のやや湿った土壌に十数個体のツクシミノボロスゲが生育していた。用土とともに移入されたものだろう。
同所的に踏みつけに強いクサイ、オオバコや、イグサ、ミゾイチゴツナギ、ヘビイチゴ、ニョイスミレ、ニガナなどの湿った場所を好む草本が見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. ツクシミノボロスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.167. pl.149. 平凡社
勝山輝男, 2005 ミノボロスゲ節. 『日本のスゲ』 52〜58 文一総合出版
星野卓二・正木智美, 2011 スゲ属ミノボロスゲ節. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』 94〜101. 平凡社
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. ハリガネスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:140.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:6th.July.2017

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